美しい彼女
掲載日:2025/10/29
彼女は実に美しい。庭園に咲く大和撫子など、足元にも及ばないだろう。
第一、私は女の好みにうるさい方だ。
顔が可愛いだの、背は高いだの、胸は小さいだの。勿論性格の好みもあるが、そこは割愛しておこう。そんな私がここまで彼女を尊ぶ理由、それは、彼女を愛おしく思う気持ち、つまり、恋心があるからだろう。彼女のふとした仕草を追うたび、そう実感する。黒く長い髪を耳にかける。切れ長の瞳で本の文字をなぞる。美しい以外の何者でもないだろう。
第二、私は女に恋をしたことがなかった。
これが、いわゆる初恋というものだった。初めてここまでに心を惹かれる女に出会った。きっと、ここまでに触れてみたいと思ったのはテレビに出ていたハムスター以来だろう。凄い事だ。
私はそんな彼女に、花束を渡した。
日頃の感謝、この前のお礼なんて下手な理由で愛を隠しながら。彼女は怪しがりもせず、微笑んでそれを受け取った。花の香りを嗅ぐ彼女の方が、いい香りがした。
「美しい」
それは私の今までの人生の中で最も大きな失態だった。彼女は目を見開いてから、少し慌てた小さな声で私に感謝を伝えてくれた。早足で私を置いていった彼女は、耳の先が赤かった。
「…可愛い」
私が彼女を愛する理由が変わった。女とは、なんとも難儀なものだろうか。




