嫉妬
薫も海も中学でのクラスは別々だった為、それぞれ新たな友達も出来ていた。
"中学生の女子"という生き物は群れていないと生きてはいけない。それぞれがどんなグループに属するのかが大切だ。海も薫も顔面から目立つタイプだ。その為一軍女子になりたい女達が自然と群れてくるのだ。
薫はクラスでは真子と主に2人でいることが多かった。そして第二形態の態勢に入る時はもう一つの二人組女子とくっつき、4人グループになる。
一方海は6人グループのリーダーのような存在だった。海があっちに行こうと行ったらみんなが付いてくる。そんな海はクラスで少し調子に乗っていた。
そして海は薫がいる5組の前の廊下を通る時、必ず大きな声で薫に手を振る。薫はそれを「ハイハイ」と受け流しながら手を振りかえす。それは2人の日課でもあった。
そして海は薫に手を振っているのだがいつも真子が我先にと声をかける。
「あ!!!海ちゃんやっほーーー!!おっはよーーー♪」真子の声は大きい。真子は年子の姉の咲希が同じ中学に通っている。その為、よく一つ上の先輩達から「咲希の妹かわいいーーー」なんて声をかけられていた。その為、先輩に敵はいない。
今日の休み時間は1組の海がいる女子軍団が5組の薫と真子のところにお喋りしにきた。女子の話題はもちろん恋バナだ。
海が真子に声をかけた。
「咲希先輩が真子ちゃんのお姉ちゃんなんだね♪いいなーお姉ちゃん!私はお兄ちゃんしかいないから羨ましいよ」
「海ちゃんのお兄ちゃんの晃先輩って超かっこいいよね!私のお姉ちゃんの友達はみんな狙ってるって聞いたよ!」
「アイツのどこがかっこいいのか私にはさっぱりわかんないよwww」
すると1組の1人の女子が口を開いた。
「咲希先輩は晃先輩の事、狙っていないんだね。咲希先輩は彼氏とかいるの?」
「うちのお姉ちゃんはね。克樹先輩一筋らしいwww」
・・・・・
その一言を聞いて、海は背筋を凍らせた。1組の女子集団も海からよく克樹先輩の話を聞いていたので同じく固まってしまった。1人の女子は"ヤバいことを聞いてしまった"と顔が真っ青になっていた。
空気が変わったことを察した真子は
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不思議な空気に戸惑った。
「あっ!!授業始まるかも。クラス戻るねー」海が精一杯口を開いた。「私も・・・・」と一斉に1組女子集団は帰っていった。
「やばい・・・・」と薫は海を追いかけて廊下に走った。
「海?大丈夫?」
「薫って咲希先輩の事もしかして知ってたの?」
「いや・・・今日初めて聞いたよ・・・」すると海の目は涙目になっていた。
「まだ振られたわけじゃないんだしさ?」1組の女子が必死で海を励ます。海は中々周りの声が入ってこなかった。そして泣き出した。
「毎日のメッセージのやりとりはなんだったのー?彼女いるなんて聞いてないよ・・・・」
「付き合っていないのかもよ?咲希先輩の片想いかもよ?」
「だって彼氏いるの?って質問してたじゃん・・・」こんなに弱気な海は見たことがなかった。海は薫に抱きついて泣いた。
傷ついている海の背中をさすり、薫は海を抱きしめた。そんな海を見ていたら薫は克樹先輩のことがなんだか憎らしい気持ちになっていた。
そしてその日に薫は優先輩にメッセージを送った。
"克樹先輩と咲希先輩って付き合っているんですか?"
メッセージはすぐに返ってきた。
"きっと今は別れていると思うよ。付き合ったり別れたり、あの2人は忙しいから。俺は彼女いないからね"
薫はなんだかイラついていた。こんな時に俺の情報なんていらねぇよと心の中で少し思っていたが、すぐに切り替えた。
"教えてくれてありがとうございます。海を傷つけたら私許せないかも。"
"克樹に忠告しておくよ。薫が傷つくのも見たくないからね"
優先輩は優しいのか?私のこと好きなのか?
薫は少し戸惑った。
そして "ありがとう♪" とだけメッセージを返した。
一方優は思い切って送ったメッセージなのに何も触れてこない薫に振り回されていた。
次の日の朝、いつものように薫と海は一緒に登校しているが海は少し元気がなかった。
「海。おはよう。大丈夫??克樹先輩に聞いた?」
「聞けなかった。メッセージも返すのやめた。」
「そうなんだ・・・。」
「実は私、昨日優先輩に聞いちゃった。」薫はありのまま昨日のメッセージのやりとりを海に話した。
「そっか・・・たまたま付き合っていない時に一緒に下校したのかな。たまたま付き合っていない時に連絡先渡してきたのかな」海はさらに下を向いた。
「なんなん克樹って男わ。ムカつくわ。女ったらしって奴?」薫は苛立ちが抑えきれなかった。
「初めて好きになった人なの。薫だけは悪く言わないで・・・」弱気な海。
「ごめん・・・・」薫まで泣きたくなった。
そしてその日の下校する時、いつものように薫と海は一緒に帰ろうとすると・・・門に克樹先輩と優先輩が立っていた。まるで誰かと待ち合わせでもしているかのようだった。
そして海は少し立ち止まった。
「違う門から帰らない?」薫に提案した。薫も克樹先輩の姿を確認し頷き、歩く方向を変えた。
すると
「海〜〜??」克樹の呼ぶ声だった。克樹は走って海に駆け寄った。
「なんで避ける?昨日メッセージも返ってこないし!」
・・・・・海は黙った。
「優から聞いたし。咲希のこと?俺確かに付き合ってたのは事実だけど。もう別れたし。海とメッセージやりとりしてる時には一回も付き合ってないし」
すると優先輩が強引に薫の手を引いた。
「俺らは邪魔になっちゃうかもしれないから行こ・・・」続きが気になる薫は少し戸惑いながらも優についていく事にした。
「あの2人なんで付き合わないのかな?」優の声は優しかった。
「さあ・・・。克樹先輩が告白しないから。それに咲希先輩と二股してたんじゃないの?あ。すみません。敬語が苦手で・・・」
「いいよ。別に先輩ヅラとかしたくないし。名前も優先輩じゃなくて優って呼んでほしい」
「ありがとう。」薫はどんどんと馴れ馴れしくなり、少しずつ優と会話が続くようになっていった。そしてしばらく海と克樹の話をしながら歩いていると、後ろから女の叫び声が聞こえてきた。
「優ーーーー」
「薫ーーーー」
そこにいたのは咲希、真子姉妹だった。真子はニヤニヤしながら言った。
「薫♪優先輩と付き合ってるの?言ってよーーー!」
「優!そんな事どうでもいい!克樹と海って子!付き合ってるの?」真子の話を遮るように慌てて咲希は優に確認していた。
「付き合ってないよ。あ!私と優のことね!」遮ってくる会話に咲希は苛立ちが抑えきれていなかった。
「咲希。克樹とは別れたんじゃないの?」優は優しく咲希に聞いた。
「そうだけどさ・・・・」咲希は今にも泣き出しそうだった。優は自分が女の子を泣かせたみたいになってしまって慌てていた。そして咲希を励まし、そっと咲希の背中に手を当てた。
何が起こっているのか戸惑った薫は「真子。帰ろ?」と誘った。そうして泣いている咲希と励ます優を置いて、薫と真子は歩き出した。
「私、海ちゃんにとってマズイ事を言ってしまったのかな?でも私はお姉ちゃんを応援したくなっちゃうんだよね・・・」
「そうだよね。間に挟まれて、真子には申し訳なかったよ」
「きっと海ちゃんに嫌われたわー私。」
「海はそんな子じゃないよ♪」
「本当に海ちゃんと薫は仲良しだよね。嫉妬するわ」
「なんで嫉妬?私達も仲良しでしょ?www」
「それ信じるよwww離れないでよ?www」
薫は真子との距離がまた少し、縮まった事が嬉しかった。まだまだ友情関係が難しい年頃の2人は言葉で確かめ合って、ようやく繋がっていくのかもしれない。そして女心の難しさを少しずつ学んでいく途中の段階でもあったのだった。
真子と薫は笑い合いながら夕焼けで赤く染まった空を見た。




