表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/32

第6話 強面騎士は騒動を治める


「というわけで、イザベラ嬢が虐めをする動機がなくなったわけですが、どうしますか?」


 男に問いかける。

 彼の言い分はイザベラ嬢が嫉妬に駆られて虐めをしたということだが、彼女からの好意がなければ前提から崩れてしまう。

 つまり、彼女が無罪の可能性が高くなる。


「いや、動機がまったくないわけじゃない」

「どういうことですか?」


 だが、男はまだ反論してくる。

 まったく往生際が悪い。


「たしかにイザベラは俺に愛情がなかったのかもしれない」

「あなたからも愛情がなかったけどね」


 イザベラ嬢がこそっと口にする。

 的確なツッコミに思わず笑ってしまいそうになる。

 あたかも自分は愛していたように話しているが、浮気をしているのは男側である。


「だが、婚約関係にあるのは事実だ。政略結婚による利益を損なわないため、ベティを排除しようとしたのだろう」

「ふむ」


 意外としっかりした理由である。

 たしかに政略結婚は愛情はなくとも、家同士の利益のために結ばれるものである。

 つまり、利益を守るという理由ができるわけだ。


「こう言ってますが、どうでしょうか?」

「なんでこんな男が婚約者だったのかしら」


 イザベラ嬢は痛そうに頭を押さえていた。

 相当苦労している様子である。

 まあ、この男が婚約者だったのなら仕方がないことだろう。


「正直、婚約を解消しても侯爵家に損はないわ」

「なにっ⁉」


 イザベラ嬢の言葉に男が反応する。

 その通りであれば、先程の前提が崩れてしまう。

 しかし、どういうことなのだろうか?

 疑問に思う俺に気づき、イザベラ嬢は説明を始める。


「元々、この婚約の話は公爵家側から持ち込まれたものよ。派閥をより強固にするため、侯爵家との縁を結ぼうとしたの」

「それが政略結婚、と。婚約が解消されたのなら、その話はなくなるのでは?」

「その心配はないわ。私の妹とその男の弟の仲が良いから、二人に婚約を結ばせればいいわ」

「・・・・・・大丈夫なんですか?」


 説明を聞き、心配になってしまう。

 この男の弟ということは同じような性格の可能性がある。

 彼女の妹さんが不幸になるのでは?


「安心して。弟は彼と違って優秀で誠実な人間よ。しかも、妹と仲が良いの」

「それなら良かった」

「ある意味でこの男が立派な教師になったのよ」

「ああ、なるほど」


 彼女の皮肉に納得する。

 だが、男はまったく意味が分かっていない様子だった。

 本当にどうしようもない男である。

 だが、これでいろいろと解決した。


「というわけで、イザベラ嬢が虐めをする動機がなくなりました」

「うぐ・・・・・・」


 男は悔しげに顔をしかめる。

 先程まで自分たちが追い詰めていたはずなのに、今では逆に追い詰められている。

 こうなるとは思っていなかったのだろう。

 だが、ここで俺は油断してしまっていた。

 追い詰められた人間は時にとんでもない行動に出るのだ。


「うるさいっ!」

(ガンッ)


「「「っ⁉」」」


 男がいきなり殴りかかってきた。

 俺が顔面を殴られた姿を見て、周囲は驚愕していた。


「大丈夫ですかっ⁉」


 イザベラ嬢が心配そうにこちらに寄ろうとする。

 だが、俺は片手で制する。

 足を怪我した彼女を立ち上がらせるわけにはいかない。

 それにこの程度ではなんともないのだ。


「傷害罪だな」


 ニヤリと笑みを浮かべる。

 周囲から悲鳴が上がるが、気にしないようにする。

 男の腕を取るとそのまま捻り上げる。

 床に押さえつけ、動けないようにした。


「おい、貴様。俺は次期公爵だぞ。不敬だ」


 押さえつけられた男はわめくが、まったく気にしない。

 たしかに彼の立場は俺よりもよっぽど高い。

 本来なら、こんなことは許されないはずだ。


「立場がそのままだったら良いですね」

「何を言って──(グキッ)ぎゃあっ⁉」

「あっ」


 やらかしてしまった。

 そこまでやるつもりはなかったのだが、俺の言葉に男が反応して動いたせいで関節を外してしまった。

 あまりの痛みに男は気絶してしまった。


「まあ、いいか。で、もう一人は──」

「あの・・・・・・逃げましたよ?」


 もう一人の女性を捕まえようとしたが、イザベラ嬢が申し訳なさそうに教えてくれた。

 どうやら全員の意識が男に集中している間に姿を消していた。

 ただの令嬢かと思っていたが、意外とやるようだ。







作者のやる気につながるので、読んでくださった方は是非とも評価やブックマークをお願いします。

★5でも★1でもつけていただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ