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第5話 強面騎士は騒動の原因を調査する


「おい、適当なことを言うのは止めろっ!」


 男は文句を言ってくる。

 自分の惚れた女性を悪く言われるのが嫌なのだろう。

 だが、こいつ自身も婚約者を裏切っている。

 ある意味、お似合いのカップルなのかもしれない。


「では、どういう嫌がらせがあったのか説明してください」

「何?」

「適当かどうかはそれから判断しましょう」


 現状では、俺の主観で判断しているのも事実である。

 実際に起きたことを聞いて、判断すべきだろう。


「では、こいつの悪事を全部言ってやる」

「はい、どうぞ」


 チャンスだと思ったのか、男は自信満々に話し始める。


「この女は俺とベティが話しているのをいつも邪魔してくるんだ」

「婚約者のいる男性と別の女性が話していることが問題では?」


 多少の会話なら問題ないだろうが、婚約者が別の異性と仲良く話していれば邪魔をしたくもなるだろう。

 別におかしなことではない。


「常に上から目線でベティを馬鹿にしている。マナーがなっていないとか、成績が悪いとかな」

「実際にそうなのでは? 今までのやりとりを見た感じ、彼女は頭が足りない感じがしますが・・・・・・」

「なんだとっ!」


 俺の言葉に男が怒り出す。

 思ったことを口に出してしまった。

 だが、間違ったことは言っていないだろう。

 婚約者のいる男性を奪うなど、普通の考えを持っていればしない。


「これで最後ですか?」

「・・・・・・いや、まだある。この女は俺を取られた腹いせにベティの私物を壊したり、隠したりしたんだ」

「それが事実であれば、たしかに問題ですね」

「そうだろう。この女は陰険で、ここで罰されないといけないんだ」


 俺が同じ考えだと思ったのか、男は勢いづいて話をする。

 こういう勘違いをするから、間違った行動をするのだろうか?

 とりあえず、否定はしておく。


「あくまで事実だったら、の話ですよ」

「何?」


 話に水を差され、こちらを睨み付けてくる。

 怖くもなんともないので、気にせずに話を進める。


「彼女の壊された私物を見ましたか?」

「当たり前だろ。明らかに人の手で破壊されていた」

「では、こちらの令嬢が壊した瞬間を見たのですか?」

「いや、見ていない。おそらく誰もいない時を見計らって破壊したのだろう」


 男は悔しげな表情を浮かべる。

 悔しがるのは自由だが、気づいていないのだろうか?


「では、彼女が壊した証拠にはなりませんね」

「だが、この女には動機があるぞ」

「動機ですか?」


 一体、どういうことだろうか?

 疑問に思う俺に対し、男は自信満々に説明する。


「この女にとってベティは最愛の婚約者を奪った敵だ。その報復として私物を破壊するのは立派な動機ではないだろうか」

「ああ、そういうことですか」


 ようやく彼の言いたいことがわかった。

 イザベラ嬢が男への好意があるという前提で、動機があると判断したのだろう。

 たしかに、婚約関係ならば可能性もあるだろう。


「では、ご本人に聞いてみますか」

「何?」


 予想外だったのか、男は怪訝そうな表情になる。

 片方の意見だけを聞くわけがないだろう。

 平等に判断するのなら、両者の意見を聞く必要がある。


「イザベラ嬢」

「何でしょうか?」


 俺が話しかけると、彼女は凜とした佇まいで反応する。

 怪我をして座っているはずなのに、そこには弱々しさが欠片もない。

 令嬢らしい立派な雰囲気である。


「貴女は彼のことが好きですか?」


 質問は至ってシンプルである。

 おそらくこの場にいるほとんどの人間が質問の意図に気づいていないだろう。


「その女が俺に好意を抱いているのは当たり前のことだろう。先程も俺にすがって──」

「まったく好きではありません」

「なっ⁉」


 自分が好かれていると思っていたのに、あっさりと否定されて男は驚く。

 どれだけ自信過剰なのだろうか。

 見ているだけでものすごく恥ずかしい。


「ですが、婚約関係なのでしょう?」

「ただの政略結婚ですよ。貴族の家同士の繋がりを作るために仕方がないことです。そこに愛はありません」

「なるほど」


 簡潔な説明に否定のしようがなかった。

 おそらく、すでに彼女からの好意はなくなってしまっているのだろう。

 いや、最初からあったかすら怪しい気がする。







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