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第3話 強面騎士はパーティーに参加する

ヒロイン登場です。


「おぉ、豪華だな」


 パーティーの会場に入ると思わずそんな感想を漏らしてしまう。

 いくら貴族といえども、弱小貴族の三男にこんな豪勢な場所は縁がない。

 そもそも寮と訓練場の往復しかしていないので、余計に縁遠い場所なのだ。


(((ヒソヒソ)))


「・・・・・・」


 周囲からの視線に気づく。

 いや、入った時点から気づいていた。

 まるで猛獣を見るような視線である。


「これは無理かもな」


 頭を掻いて、諦めの言葉が口から出る。

 この状況では将来の嫁を探すどころか、参加者と話すことすら難しいだろう。

 予想以上に悪い状況である。

 一応、騎士団第二部隊の副団長という優良物件のはずが、それが霞む──どころか、まったく機能していない。


「はぁ、ロリコンのレッテルが近づいたな」


 大きくため息をついてしまう。

 別にエリスちゃんのことは好きだが、異性として好意を持っているわけではない。

 たとえ向こうから好意を抱かれても、俺は大人として拒否するつもりだ。

 彼女なら少なくとも俺なんかよりよっぽど優良物件を手に入れられるはずだ。

 俺なんかのためにその道を閉ざすのは申し訳ない。

 次からどうにか頑張らないと──


(((ザワザワ)))


「ん?」


 少し離れたところで人だかりができていた。

 俺の存在がざわめかせたのかと思ったが、視線はこちらを向いていない。

 この会場にいる多くの人たちが集まっている。

 一体、どうしたのだろうか?

 気になった俺は人だかりの上から中心を覗く。

 こういうときには騎士の大きな体はありがたい。


 中心には三人いた。

 性格が悪そうな男と少しきつい目つきの女性が向き合っていた。

 男の側にも女性がおり、怖がっているような振りをしていた。


「お前のような性格の悪い女は次期公爵夫人にふさわしくない。婚約破棄だ」


 男は嫌悪感むき出しの表情で宣言する。

 その言葉に周囲はざわめき始める。


「まさか侯爵家のイザベラ様が虐めをしているなんて」

「でも、浮気をしたのはルーク様でしょう?」

「そもそも婚約者として当然の注意をしたのでは?」

「ですが、虐めはやりすぎでしょう」

「階段から突き落としたそうですし」


 集団の話している情報から状況を把握する。

 向き合っている男女が婚約しており、男の方が浮気をしている。

 女性は浮気相手に対して嫌がらせをした、といったところか?

 まあ、ありえない話ではないか。


「私は何も悪いことはしていません。次期公爵夫人として、当然の行動をしただけです」


 女性は真っ向から否定する。

 自分の意志を持ち、真っ直ぐ行動しているのだろう。

 だからこそ、自分は何も間違っていないと思っているようだ。

 だが、それは相手にまったく響いていなかった。


「うるさいっ!とっととこの場から去れ」

(ドンッ)

「きゃっ」


 男は怒った様子で女性を突き飛ばした。

 いくら鍛えていないとはいえ、大の男の力に女性が太刀打ちできるわけがない。

 短く悲鳴を上げ、彼女は倒れ──


(グッ)

「大丈夫ですか?」


──そうなところをギリギリで俺が受け止めた。。

 流石に女性が怪我するのを見てられず、思わず飛び出してしまった。

 間に合って良かった。


(((ザワザワ)))


 俺の登場に周囲がざわめいている。

 まあ、こんな熊みたいな大男がいきなり現れたのだから、当然の反応である。

 正直、あまり気分は良くない。

 助けない選択肢はなかったが、奇異な目にさらされるのは嫌だった。


「あ、あの・・・・・・」

「ん?」


 不意に下から声をかけられる。

 助けた女性がこちらをじっと見つめている。

 うまく言葉が出ない様子だが、それは恐怖からではないようだ。


「あ、ありがとうございます」

「いえ、当然のことをしたまでです」


 感謝を告げられたので、俺は気にしないように伝えた。

 だが、俺の心はなんとも言えない温かい気持ちで一杯になった。

 こんな風に感謝の言葉を伝えられたのは初めてである。

 それだけで助けた甲斐があっただろう。







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