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エピローグ 強面騎士は婚約者と共に歩む

エピローグです。


 誘拐事件から数日が経った。

 俺は以前と同じ場所に立っていた。

 周囲からの視線は相変わらずである。

 だが、もうそんな視線を気にすることはなかった。


「お待たせしました」

「いえ、待ってないですよ」


 イザベラ嬢が到着した。

 笑顔で彼女を出迎える。


「では、約束通り洋服を買いに行きましょうか」

「そうですね。でも、本当に必要なんですか?」

「どういうことですか?」


 俺の質問にイザベラ嬢は首を傾げる。

 なぜこんなことを言ったのかわからないのだろう。


「もう婚約者になったのですから、デートで交流を深める必要はない気がして・・・・・・」

「何を言っているんですか? 婚約者に──いえ、夫婦になってもデートは必要です。一緒に出かけることで仲を深めるんです」

「そういうものなんですか?」


 女性付き合いのなかった俺にはその理屈はわからなかった。

 だが、彼女が言うのならそうなのだろう。


「そういうものです。そして、デートにはそれなりの格好が必要なんです。駄目な格好だと周囲から馬鹿にされてしまいます」

「俺が変な格好をしていれば、イザベラ嬢も馬鹿にされるわけですね」

「それはどうでもいいですが、ウルス様が馬鹿にされるのが我慢ならないんです」

「なるほど」


 彼女の言い分に納得する。

 そういう考えであれば、変な格好などできない。

 デートのための洋服が必要になってくる。


「まあ、かっこよすぎるのも問題なんですけどね」

「なんでですか?」


 今度は逆の言い分で再び首を傾げてしまう。

 一体、どういうことだろうか?


「だって、ウルス様のかっこよさが周りに知られたら、他の女性から好意を向けられるじゃないですか。もし、その中にウルス様の好みの女性がいたら・・・・・・」


 彼女の心配事が理解できた。

 俺の心変わりが怖いのだろう。

 今まで恋愛経験の一つも無かった俺だから、好意を向けてくれる女性に弱いと思ったのだろう。

 格好良くなれば、俺に寄ってくる女性が増える可能性がある。

 だが、彼女は一つ勘違いをしている。


「大丈夫ですよ。俺が好意を向けるのはイザベラ嬢だけです。たとえ、他の綺麗な女性に好かれたとしてもね」


 自分の気持ちをはっきりと告げる。

 もちろん、本心からの言葉である。

 以前より自分のことを好きになれた。

 これはイザベラ嬢のおかげである。

 そんな風に俺を変えてくれた彼女以外を好きになることなんてありえない。


「ひぇっ」


 イザベラ嬢は顔を真っ赤にした。

 クールな雰囲気の彼女には珍しい反応である。

 だが、そのギャップがかわいらしい。

 彼女の新しい一面を見られて、嬉しい気持ちになる。


「おい」

「ん?」


 そんな俺達に女性騎士が声をかけてきた。

 相変わらず敵視されているようで、鋭い目つきが突き刺さる。


「こんな街中でお嬢様を口説くな」

「どうしてだ?」

「見ていてこっちが恥ずかしい。あと、お嬢様を好奇な目にさらされたくない」


 彼女は文句を言ってくる。

 だが、それだけではない気がする。


「君も恋人や婚約者が出来たら気持ちが分かると思うぞ」

「は?」

「俺の相手はこんなに素晴らしいんだぞ、って周囲に見せたくなる。まあ、同時に他の誰にも見せたくない気持ちもあるがな」


 イザベラ嬢と婚約してから初めてこの気持ちに気づいた。

 優越感に浸ることがとても気持ちよい。

 だが、彼女が他の男の目にさらされることが嫌だという気持ちもある。


「うぅ」


 なぜか女性騎士が涙目になった。

 どうしてなのだろうか?


「申し訳ありません、ウルス様」

「もしかして、何かしましたか?」


 メイドさんに謝罪され、俺は自分が何かしてしまったことに気がついた。

 だが、具体的なことはわからない。


「彼女はこの年まで恋人がいないので、あなたの気持ちがわからないのです」

「・・・・・・それはすまない」


 どうやら彼女は以前の俺と同じ状況だ。

 だが、彼女は俺の目から見ても綺麗だと思うので、恋人の一人ぐらいできそうなものだが・・・・・・


「うるさい。私には剣があるから、恋人など必要が無い」


 女性騎士は反論してくる。

 だが、それが強がりであることは明らかである。


「ウルス様、一つよろしいですか?」

「なんでしょうか?」

「私もそろそろ身を固めたいので、同僚の方をご紹介いただけませんか?」

「はい?」


 メイドさんからの予想外の提案に驚いてしまう。

 何故そんな話になったのだろうか?


「お二人の姿を見て、私も相手が欲しいなと思いまして」

「どうして俺の同僚を?」

「男性に守られる、というのも良いかな、と」

「なるほど。そういうことであれば、ご紹介しますよ。独身の男が多い職場なのでね」


 俺はあっさりと提案を受け入れる。

 彼女にはお世話になったので、要望には応えてあげたい。

 イザベラ嬢と婚約した以上、彼女と会う機会も増えてくるだろう。


「私はいらないからな」

「はいはい、わかりましたよ」

「ふんっ」


 女性騎士は強がったまま立ち去ってしまった。

 メイドさんは申し訳なさそうに謝罪する。


「申し訳ありません。彼女には私から言って聞かせます」

「別に良いですよ。ああいうところも彼女の良いところでしょう」

「その結果が男性を遠ざけることになっていますけどね」


 それは事実だろう。

 普通の男性なら、ああいう態度の女性に近づきたいとは思わない。


「まあ、いずれ彼女に運命の相手が見つかるでしょう。俺にだって見つかったんですから」

「そうだと良いですね」


 俺の言葉にメイドさんはなんとも言えない表情になる。

 その可能性は低いと思っているのだろう。

 だが、可能性がないわけじゃない。

 俺ですらイザベラ嬢と出会えたのだから、ルックスの整っている彼女の方がまだ可能性はあるだろう。


「では、私はこれで失礼します。お嬢様のことをよろしくお願いします」

「わかりました」


 頭を下げ、メイドさんは立ち去った。


「むぅ」

「どうされました?」


 イザベラ嬢がなぜか頬を膨らませ、怒っていた。

 その姿が可愛らしいと思ったのは秘密である。


「あの二人と仲良く話していました」

「一人は喧嘩みたいな感じですよ」

「ですが、気心が知れた感じでした。私とはまだ距離があるのに」

「距離?」


 どういうことだろうか?

 だが、少し考えて気づいた。

 俺は息を整え、手を差し出した。


「では、行きましょうか。イザベラ(・・・・)

「っ⁉ はいっ!」


 俺の言葉に彼女は機嫌を直してくれた。

 手を繋いだ俺達は一緒に歩き始める。

 少し恥ずかしいが、こういうのも徐々に慣れていくのだろうか。







一旦、本編は終了です。

一応、他の登場人物のいろいろを考えているので、まだ少し話を加える可能性があります。

シスト、メイドさん、女性騎士さんあたりですね。

あと、アリスちゃん?


もっと人気が出るか、続きが読みたいと言ってくだされば、書くかもしれません。

そのときはどんな展開になるかわかりませんが・・・・・・


ここまで読んでいただきありがとうございました。

他の作品もよろしくお願い致します。


作者のやる気につながるので、読んでくださった方は是非とも評価やブックマークをお願いします。

★5でも★1でもつけていただけると幸いです。

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