第27話 強面騎士は令嬢に伝える
「俺のせいで危険な目にあわせてしまいました。申し訳ありません、イザベラ嬢」
頭を下げて謝罪する。
公爵令息が関わっているということは俺が婚約破棄を邪魔したことが原因だろう。
結果として婚約破棄がなされたとはいえ、公爵令息の思惑通りではなかったのだ。
だからこそ、今回の誘拐事件が起こってしまったのだ。
「いえ、ウルス様が謝罪することではないですよ。そもそもこの馬鹿が悪いので」
「ですが、誘拐されたのは事実ですし」
「では、私との婚約を受け入れてくれますか?」
「っ⁉」
婚約の話をされ、驚いてしまう。
祭りの時に断られたのに、まだ諦めていないようだ。
それほどまでに思ってくれているのだろう。
「やっぱり無理で──」
「イザベラ嬢」
「はい?」
何か話そうとしていたが、俺が中断させてしまう。
いきなり呼びかけられ、彼女は驚いている様子だった。
「俺は辺境の出身で、田舎貴族の三男で大した身分じゃないです」
「そうですね」
「たまたま才能があったから、第二騎士団で副団長になれました。ですが、所詮はそれだけの人間です」
「そんなことはないですよ。ウルス様は真面目に努力したからこそ、才能と合わさって結果が出たんです」
俺のことを評価してくれるイザベラ嬢。
今まで自分のことは大したことないと思っていたが、彼女が肯定してくれるのでそんな考えも薄れてきた。
「正直、今まで女性と交流したことがない──というか、そもそも人付き合いも少ないのです」
「もちろん、わかっていますよ。これから私と一緒に交流していけば良いんですよ」
「できますかね?」
「まだ出会って間もないのに、私と普通に話せているじゃないですか。だから、出来るはずですよ」
たしかに彼女の言う通りかもしれない。
なぜか彼女とは普通に話すことができた。
最初から怖がられていなかったからだろうか?
「まあ、色々と問題はありますが、それでも俺と一緒に過ごしていただけますか?」
「それって──」
「はい、婚約の話を受けさせてください」
「っ⁉」
俺の言葉に彼女は驚きの表情を浮かべる。
そして、彼女の目には涙が浮かぶ。
「い、イザベラ嬢っ⁉」
泣き始めた彼女を見て、俺は慌ててしまう。
なぜ泣いたのだろうか?
「だ、大丈夫です。ちょっと感極まっちゃって」
「えっと、ハンカチをどうぞ」
「ありがとうございます」
俺からハンカチを受け取り、イザベラ嬢は涙を拭く。
そして、呼吸を整える。
「では、これからよろしくお願いします。幸せにしてくださいね」
「善処します」
なんとも言えない返答になってしまう。
婚約をするので幸せにしたいと思っているが、俺でできるのかと不安になる。
彼女がいろいろ肯定してくれたが、それでもまだネガティブな気持ちが多い。
まあ、できることをやっていこう。
「あ~、ちょっといいか?」
「団長?」
気まずそうな表情で団長が話しかけてきた。
一体、どうしたのだろうか?
「二人が結ばれるのは嬉しいことなんだが、その前にちょっとやることがあるんだ」
「やることですか?」
事情がわからず、俺は首を傾げる。
一体、何をするのだろうか?
「とりあえず、ついてきてくれ」
「わかりました」
やらないといけないのなら、断るわけにもいかない。
団長に促され、俺達は小屋から外に出た。
ようやく結ばれましたが、少しやることがあるみたいです。
一体、何をしないといけないのでしょう?
作者のやる気につながるので、読んでくださった方は是非とも評価やブックマークをお願いします。
★5でも★1でもつけていただけると幸いです。