第23話 強面騎士は戦力外になる
(コンコン)
「入れ」
ドアがノックされ、団長が反応する。
団員に連れられ、イザベラ嬢のメイドが入室してきた。
女性騎士とは違い、落ち着いた様子である。
「お嬢様の居場所がわかりました」
「本当かっ!」
メイドの言葉に女性騎士が反応する。
居場所が分かったことで、部屋の中も安心した空気になる。
「予想通り、あの馬鹿──元婚約者が恨みで今回の事件を起こしたみたいです」
「まあ、予想通りだな。だが、その男に誘拐をするような仲間を集める伝手があるのか?」
団長が気になることを質問する。
たしかに今回の事件をあの男が起こせるとは思えなかった。
計画的に行われていることから、おそらくあの騒動も俺をおびき寄せるために仕組まれたものだろう。
だからこそ、パーティーの会場で婚約破棄するような男にできるだろうか?
「それについては例の男爵令嬢が関与しているのでしょう。元々、下町の平民出身であり、そこそこ治安が悪かったらしいので」
「男爵令嬢というと、婚約破棄のときのか。しかし、それだけで関与していると言えるのか?」
「難しいでしょうね。婚約破棄の時の失敗を学習したせいか、誘拐した場所に姿は見られないようです」
「そこにいない自分は関係ない、と言い張るためか」
メイドと団長が状況を整理する。
二人の言うとおり、その令嬢が絡んでいる可能性が高いだろう。
だが、彼女を捕まえるための証拠が足りない。
公爵令息よりは悪知恵が働くようで、自分の保身はしっかりしているようだ。
「まあ、今は令嬢の身の安全の方が大事だな。すぐに現場に行こう」
「私も行くぞ」
団長が立ち上がると、女性騎士もついていこうとする。
その後に俺も続いていこうとするが──
「ウルス。お前はここにいろ」
「はい?」
団長から予想外の命令を下される。
呆けた声が口から漏れた。
だが、すぐに反論する。
「どうしてですか? 俺も参加させてください」
「・・・・・・自分の都合で振った相手を助けるためにか?」
「っ⁉」
団長の指摘に言葉を詰まらせる。
どうして知っているのだろうか?
誘拐された話はしたが、その前の話はしていない。
「別に婚約の提案を断ったのはお前の自由だ。だが、振った相手に再度好意を抱かせるような行動をするのはどうなんだ?」
「・・・・・・」
団長の言うことはもっともだった。
婚約の話は俺がイザベラ嬢を助けたことで出てきた話である。
その行動で彼女が俺に惚れてくれたのだ。
だが、俺は彼女の好意を拒絶した。
そんな俺が再び彼女を助ける権利はあるのだろうか?
「まあ、お前がいなくともイザベラちゃんは助けられるさ。だが、そうなると──いや、これ以上は言うまい」
団長は何かしようとしたが、途中で切り上げた。
そして、そのまま部屋から出て行った。
「ふん、情けない」
女性騎士が罵倒の言葉を吐き捨て、そのまま部屋から出て行った。
俺は何も言い返せなかった。
そのまま座り込み、頭をかかえた。
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