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第21話 強面騎士は失態を犯す


「──っ!」

「──っ!」


「ん?」


 少し離れたところから大きな声が聞こえてきた。

 賑やかな祭りなので、大きな音がするのはおかしなことではない。

 だが、聞こえてきたのは怒鳴り声なので、穏やかな状況ではないだろう。


「見回りはこのあたりにいないか」


 周囲を見てみるが、見回りをしている者はいなかった。

 流石に祭りが行われている全域をすべて同時に見回ることは難しい。

 このように抜けが出ることもある。


「行っていただいて大丈夫ですよ」

「え?」


 イザベラ嬢から提案される。

 思わず驚きの声を漏らしてしまう。


「何か問題が起きているんですよね?」

「そうですが、貴女を置いていくわけにはいきません」


 デートの最中に相手を置いていくのはマナー違反だろう。

 もちろん、争いの現場に連れて行くわけにもいかない。

 万が一にも、彼女に危害が及ばないためである。


「でも、気になるんでしょう? 私はここで休んでますから」

「ですが──」

「私は仕事熱心なウルス様が好きですよ。その代わり、早く戻ってきてくださいね」

「・・・・・・わかりました。この場で待っていてください」

「わかりました」


 そこまで言われれば、従わざるを得なかった。

 俺はその場から急いで駆け出した。



◇ ◆  ◇  ◆  ◇


「まったく・・・・・・しょうもないことで文句を言いやがって」


 十分後、俺は騒動を解決した。

 事の発端は屋台で具材たっぷりのスープを購入した客が食べる際に衣服に飛ばして汚したことである。

 もちろん、これはよくある話である。

 悪いとすれば、スープを食べようとした本人である。

 だが、あろうことに客が店の主人に文句を言い出したのだ。

 衣服に飛ぶような料理を提供した店の主人が悪い、と。

 高価な服を汚したのだから弁償しろ、と。

 まったくとんでもない話である。


 俺が現れたことで店の主人は安堵の表情を浮かべた。

 すぐに解決すると思ったのだろう。

 だが、客は俺が現れたことで怖がっていたが、なぜか文句を言うのを止めなかった。

 様々な理由をつけて文句を言い続けていた。

 そのせいでだいぶ時間を食ってしまったのだ。

 最終的に客が悪態をつきながら立ち去っていった。

 騒動を解決した感謝の気持ちとして、店主からスープをいただいた。

 俺がデートしていることは知られており、イザベラ嬢の分までしっかりあった。


「あれ?」


 先程の場所まで戻ったのだが、なぜかイザベラ嬢の姿がなかった。

 違う場所に来てしまったと思ったが、周囲を見て間違いはないと確信する。

 もしかすると、たまたま離れていたのかもしれない。

 待たせた俺が悪い、そう思ったのだが──


「あの・・・・・・」

「ん?」


 いきなり下から話しかけられた。

 そこには数人の少年がいた。

 どうしたのだろうか?

 少し怯えているのは俺の顔を見たからだろう。


「この手紙を渡すように言われました」


 少年の一人が俺に手紙を渡してきた。

 何の変哲も無いただの封筒だった。

 差出人も書かれていない。


「誰にだ?」

「知らない男の人です。怖い男の人に渡すように言われました」

「・・・・・・それで俺に渡したのか」


 子供に怖いと言われ、ショックを受ける。

 だが、今はこの手紙の方が気になる。

 端を破り、中の手紙を取り出す。


「っ⁉」

(グシャッ)


 その手紙を見た瞬間、全身の筋肉が強ばった。

 思わず手紙を握りつぶしてしまう。


「「「ひいっ⁉」」」


 そんな俺の様子を見て、少年達が悲鳴を上げる。

 周囲がざわざわとし始める。

 だが、今の俺にそんなことを気にする余裕はなかった。


『女は預かった』


 手紙には一言、そう書かれていた。

 イザベラ嬢は誘拐されてしまった。







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