第1話 強面騎士は団長に呼び出される
2話連続投稿です。
顔が怖いのは損である──幼い頃にそう学んだ。
人と関わる際、まず見られるのがその人の容姿である。
顔が怖い時点で他者から敬遠されてしまう。
初めて同年代の集まりに参加したとき、誰も俺に近づいてこなかった。
俺から近づこうとすれば、距離を取られる。
その時点で俺は察してしまった。
そんな俺は仲間を求め、騎士団に入隊した。
この国で顔の怖い連中が多いのは武闘派の騎士団だろうと思ったからである。
貴族だが三男の俺が家を継ぐことはないので、騎士団に入隊することを許可された。
剣の才能があったおかげで俺はめきめきと実力をつけていき、入隊してから5年──20歳には第二騎士団の副団長にまで成り上がった。
だが、そこで新たな問題が出てきた。
「ウルス、今度のパーティーに参加してこい」
ある日、団長室に呼び出され、いきなり命令された。
冗談で言っているわけではなさそうだ。
真剣な表情から重要な案件であることは理解できた。
「護衛としてですね」
「参加者としてだよ、馬鹿野郎」
いきなり罵られてしまった。
俺としては真面目に答えたつもりだったのだが、どうやら間違えてしまったようだ。
しかし、客として参加すると言うことは──
「なるほど。参加者として貴人の護衛をするんですね」
「どこまで仕事脳なんだ、お前は」
「違うんですか?」
団長が頭を抱えている。
そんなに間違ったことを言っただろうか?
彼は大きく息を吐き、気持ちを落ち着かせる。
「次のパーティーでお前の婚約者を見つけるんだよ」
「はい?」
思わず呆けた声を漏らしてしまう。
まったく意味が分からない。
どうしてそんな話になったのだろうか?
「お前の実力は騎士団の中でもトップクラスだ。このままいけば、いずれは団長になるだろう」
「ありがとうございます。ですが、まだ団長には勝てていません」
評価されるのはありがたいが、俺の実力はまだまだである。
現に隊長格には誰一人勝てていないし、他の隊の副団長と比較しても下から数えた方が早い。
「20歳のガキに負けてやるほど、まだ耄碌はしてねえよ。だが、それも時間の問題だ。そうなると、残る問題は一つだけだ」
「問題?」
「お前の嫁さんだ」
「意味が分からないんですが・・・・・・」
団長の話の意図が分からない。
俺を評価してくれるのは嬉しいが、どうして結婚の話になるのだろうか?
理解できていないのがバレたのか、団長はさらに説明を続ける。
「結婚ってのは一種のステータスだ。若い頃はいいが、同じ40代の男で未婚と既婚だったら、どちらの方が信頼できる?」
「既婚の方でしょうか?」
言われた条件を想像して答える。
どうやら正解だったようで、団長は頷く。
「そうだ。その年齢で結婚していない男なら何か問題があると判断される。そうなったら、周囲から信頼を勝ち取るのは難しい」
「たしかに」
「そんな奴に団長を任せられると思うか?」
「それは・・・・・・」
団長の質問に言葉を詰まらせる。
言っている内容はもっともであり、反論の余地もない。
しかし、だからといって素直に従うのは難しい。
「ですが、俺は女性と話したことはないんですが──」
「昔、強面で誰にも近づいてもらえなかったからだろ? そろそろそのトラウマからも解放されるべきだ」
「うっ」
断る理由を話そうとしたが、即座に退路を断たれてしまう。
たしかに団長の言う通り改善すべきだろう。
だが、昔のトラウマが恐怖を呼び起こす。
思わず体が震えてしまう。
「はぁ」
そんな俺を見て、団長が大きくため息をつく。
彼にそんな反応をさせたことに申し訳ない気持ちが芽生える。
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