第18話 強面騎士はありがたい提案をされる
「毎年のことですが、やっぱり賑やかですね」
通りを歩きながらイザベラ嬢が話す。
賑やかな祭りに参加できていることが嬉しそうだ。
「たしかにそうですね。というか、毎年参加しているのですか?」
「もちろんですよ。こんなに楽しそうな催し、参加しない方がおかしいでしょう」
俺の質問に当たり前とばかりに答える。
祭りに参加するのは当然のことなのだろうか?
「きちんと護衛はつけていますよね」
「ええ。私としても一緒に楽しめる人が欲しいので、あの二人と来ていました」
「それなら良かったです。ですが、一緒に楽しめる人が欲しいのなら、友人の方が良いのでは?」
あの二人はあくまで職務でイザベラ嬢についているはずだ。
もちろん、仕事だけというドライな関係ではないだろうが、一緒に祭りを楽しむのは違う気がする。
「・・・・・・」
だが、なぜかイザベラ嬢は黙り込んでしまった。
その表情はどこか暗い。
何か失言をしてしまったのだろうか?
先ほどは友人の話をしたが──
「もしかして、友人がいらっしゃらない?」
「そう思っても、言わないのが優しさですよ」
「・・・・・・すみません」
当然のことを指摘され、謝罪をする。
たしかに俺が悪い。
「安心してください。私にも友人はいますよ」
「それなら良かったです」
「ただ私と一緒に祭りに行ってくれる友人はいないですね。この祭りはあくまで庶民の祭りですから」
「たしかにそうですね」
祭りに参加している者の多くは庶民である。
一部の貴族も参加しているが、多くの貴族は馬鹿にして参加しない。
こんな祭りに参加するより、貴族同士の交流を大事にするのだ。
俺はこういう祭りの方が好きだが──
「友人と言えば、ウルス様は少なそうですね」
「いない、とは言わないんですね」
正直、いないと思われてもおかしくない。
強面で近づく人がほとんどいないのだから。
「その服、ウルス様のものではないですよね?」
「わかりますか?」
「ええ、少しサイズが合ってない気がしたので、ご友人からお借りしたのかと」
「その通りです」
たしかに少しサイズが違うが、まさか見抜かれるとは思わなかった。
鋭い観察眼である。
「でも、似合っていますよ」
「ありがとうございます。友人に感謝ですね」
自分のものではないが、褒められるのは嬉しかった。
女性に褒められるのがこんなに嬉しいとは──いや、イザベラ嬢のような女性だからこそ嬉しいのだろう。
幼い頃から英才教育を受けていた才女に認められたのだ。
それだけで光栄なことである。
「ですが、やはりご自分で持っていた方が良いと思いますよ」
「やっぱりそうですよね」
今回はたまたまシストに出会えたから良かったものの、今後も彼に借り続けるのも駄目だろう。
自分で持っておくべきだ。
「では、次のデートはウルス様の服を選びに行きましょうか」
イザベラ嬢が提案してくれる。
もう次のデートの話は早すぎるのではないだろうか?
「ありがたい話ですが、大丈夫ですか?」
「何がでしょうか?」
「流石に侯爵令嬢が行くようなレベルの店だと支払いが厳しいので」
「安心してください。一緒に出かけたりするための服なので、そんな高級な店にはいきませんよ」
「それなら良かった」
イザベラ嬢の優しさに感謝する。
だが、すでに何度も出かけることになっているのは気のせいだろうか?
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