第17話 強面騎士は待ち合わせをする
デート当日になった。
集合場所に到着し、イザベラ嬢を待っていた。
周囲には家族連れや友人同士、恋人同士など様々な集団がいた。
その中で一人だけ強面騎士がいるものだから、違和感がかなりある。
ある意味視線を独り占めしてしまっている。
「お待たせしました」
イザベラ嬢が到着した。
その姿は以前のような貴族令嬢らしくなく、町娘のような装いだった。
おそらく祭りを楽しむためだろう。
だが、それだけで彼女の高貴さが隠しきれるわけではない。
その原因の一つが護衛としてついてきた女性騎士である。
「・・・・・・なんだ?」
「少しは周囲に気遣ってくれ」
怪訝そうな反応をする女性騎士に文句を言う。
彼女が睨みをきかせているせいで、周囲の緊迫感が凄い。
「お嬢様を守るために必要なことだ。群衆に不埒者が潜んでいる可能性もある」
「わからないでもないですが、一般人を怖がらせるようなマネはやめてくれ」
「それはお互い様だろう。まあ、お前の場合は素だろうがな」
「うぐっ」
真正面から馬鹿にされた。
彼女は自分の意志で周囲を怖がらせているが、俺は何もしていないのに怖がらせている。
どちらが悪いのだろうか?
「やめなさい」
イザベラ嬢が女性騎士を諫める。
何か言いたげだったが、主人の真剣な表情に女性騎士は口を噤む。
「ウルス様、申し訳ありません」
「いえ、大丈夫ですよ。事実ですから」
「事実だからといって、相手を傷つけてはいけませんよ」
「まあ、そうなんですが・・・・・・」
彼女の言っていることは正しい。
だが、今までにこんなことを言ってくれた人はいないので、なんだかむず痒い。
「そろそろ祭りに参加しましょうか。時間は有限ですもの」
「そうですね」
イザベラ嬢が歩き始めたので、彼女の後をついていく。
さらにその後を女性騎士がついてきて──
「護衛はいらないわ」
「えっ⁉」
──イザベラ嬢に拒否されていた。
女性騎士は驚きの表情を浮かべる。
「どうしてですか、お嬢様?」
「せっかくのウルス様とのデートですよ? 二人きりになりたいじゃないですか」
「危険ですっ! 男は狼なんですよ。いつイザベラ様に牙をむくか」
女性騎士の男に対する偏見が酷い。
まあ、女性に対して下心しかない男もいないわけではないが、全員がそんなことをするわけじゃない。
むしろそうじゃない男の方が多いはずだ。
「ウルス様が相手だったら受け入れるわ」
「・・・・・・受け入れないでください。そんなことをするつもりはないですけど」
思わずツッコんでしまった。
まだ出会って間もないのに、どうしてそこまで信頼してくれているのだろうか?
「してくれないんですか?」
「当たり前です。付き合ってもない男女がそんなことするなんて」
「では、付き合います?」
「出会って間もないのに、早いです」
「むぅ」
イザベラ嬢は頬を膨らませる。
綺麗な彼女の可愛らしい反応に思わずドキッとしてしまう。
「では、お嬢様をよろしくお願いします」
「え、ああ」
近くにいたメイドに話しかけられ、思わず頷いてしまった。
いつの間に近づかれたのだろうか?
「帰りますよ」
「ちょ、待て。お嬢様の側を離れるわけには──」
メイドに首根っこを掴まれ、女性騎士は引きずられていく。
女性騎士の方が体格が大きいのに、どうして動かせるのだろうか。
かなり気になってしまう。
だが、今はそれよりも大事なことがある。
「では、行きましょうか」
「はい」
イザベラ嬢に促され、俺達は歩き始めた。
祭りの喧噪が大きくなり、その盛り上がりに期待が高まっていく。
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