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第16話 強面騎士は苦手な同僚と遭遇する


 あっという間に一週間が経った。

 日が近づくにつれ、どんどん緊張が大きくなった。

 相手は侯爵令嬢である。

 下手なことができないからだ。

 色々と考えているうちに時間が過ぎてしまっていた。


 デートの前日の夜にあることに気がついた。

 そもそもデートに着ていく服を持っていなかった。

 もちろん、私服がないわけではない。

 だが、その服がデートにふさわしいかどうかは分からなかった。

 しかも、気づいたのが夜だったため、買いに行くことが難しかった。

 万が一のことがあるので、とりあえず街に出ることにした。


「お、ウルスじゃないか」

「・・・・・・シストか」


 寮の玄関から出る直前、嫌な奴に出会った。

 同期で別の隊の副隊長をしているシストだ。

 相変わらず女遊びをしているのか、夜遅くに寮に帰ってきた。

 真面目な俺とは対極的な存在であるが、実力は同レベルであった。

 勝率は俺の方が少し高いが、あくまで少しだけである。

 かなり負けることがある。


「相変わらず俺のことが嫌いなんだな」

「騎士団の評判を下げるような不真面目な行動をしているからな」

「強面で遠巻きにされているから、少しでも親しみやすいようにしているだけだぜ」

「配偶者や彼女に手を出された、とクレームが来ているぞ」

「・・・・・・」


 流石にまずいと思ったのか、シストは視線を逸らす。

 俺は大きくため息をつく。

 こいつは別に相手がいる女性を狙っているわけじゃない。

 こいつの美形な姿が女性を引き寄せるのだ。

 だからこそ、相手がいてもいないと嘘ついてシストに寄ってくる。

 それほど女性から魅力に思われるのは羨ましいことだが、こういう面倒ごとに巻き込まれるのはある意味不幸なことだろうか?


「いい加減、一人に絞ったらどうだ?」

「そういう相手には出会えなくてね。というか、それはウルスも同じだろう?」

「ぐっ⁉」


 苦言を呈すると予想外の反論をされた。

 正反対の俺達ではあるが、実は同じ問題を抱えていた。

 特定の相手がいない、ということだ。

 まあ、過程は違うのだが、結果が同じになっている。

 不思議なことである。


「いや、もう同じではないのかな」

「どういうことだ?」


 なぜか悲しげな表情を浮かべるシスト。

 何を言っているのだろうか?


「噂になっているよ。「ウルス副団長がもうすぐ結婚する」って」

「んなっ⁉」


 予想外の内容に驚きの声を漏らす。

 そんな俺の反応にシストは笑う。


「相手は侯爵令嬢みたいだね。パーティー会場で冤罪で婚約破棄された彼女を助けた──君はまさにヒーローだ」

「あくまで偶然だ。騎士団の人間だったら、誰でもそうする」


 その場にいたのが俺だったからこんな状況になったのだ。

 他の奴だったとしても、そいつがこうなるはずだ。


「いや、そんなことはないと思うな」

「何?」


 だが、シストは首を横に振る。

 どういうことだろうか?


「彼女の元婚約者は公爵令息だろ? いくら騎士団が場慣れしているとはいえ、真正面から出てはいけないよ」

「そうなのか?」

「ウルスはそういうのはあまり気にしないからね。自分の正義を信じているからこそ、臆せずに行動できるわけだ」

「・・・・・・」


 意外と評価してくれていることに驚いた。

 不真面目なのにしっかりと相手を見ている。

 俺自身も見直した方がいいのかもしれない。


「で、そんな君がこんな夜更けに外に出るのか? 規則に厳しい君らしくない」

「別に門限までは時間がある。少し街に出るだけだ」

「どういう用で?」


 わからないといった表情でシストは質問してくる。

 たしかに説明しないとわからないだろう。


「明日の服を買いに行く」

「今から? もう服屋は確実に閉まっているぞ」

「そうなのか?」


 まさかの情報に驚いてしまう。

 普段はほとんどいかないから知らなかった。

 てっきり領の門限内だから、他の店も開いているものだと思っていた。


「はぁ・・・・・・俺の服を貸してやるよ」

「え?」

「体格は近いから、着れないことはないだろ」

「良いのか?」


 予想外の提案に驚いてしまう。

 まさかシストから服を貸して貰えるとは思わなかった。



「お前にはうまくいってもらいたいんだよ」

「それはまだわからんが、シストがどうして気にするんだ?」


 シストの思惑がわからない。

 どうして俺とイザベラ嬢のことをきにするのだろうか?


「ウルスと一緒だよ」

「一緒?」

「団長からいろいろと言われてるんだよ。とっとと相手を探せ、って」

「なるほど」


 彼の意図は理解できた。

 そういうことなら、素直に彼の厚意を受け取ろう。







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