第9話 強面騎士は団長にからかわれる
「しばらくはパーティーの参加は控えようと思います」
とりあえず、自分の考えを告げる。
団長は少し驚いた様子だった。
「どうしてだ?」
「流石にあれだけのことをやらかしたので、ちょっとパーティーには参加しづらいです」
「まあ、それもそうか」
俺の説明を聞き、団長も納得してくれる。
勧善懲悪をしたつもりではあるが、騒動になったのは事実である。
この強面も相まって、今の俺の評判はあまり良いものではないだろう。
次のパーティーに参加したら確実に噂の的である。
悪い意味で・・・・・・
「お前の好きにしろ」
「え? 良いんですか?」
予想外の反応にこちらが驚いてしまう。
その反応に団長は不満そうだった。
「俺が受け入れたのがおかしいか?」
「いや、団長は俺に結婚させたいのだから、数をこなせとか言われると思っていました」
団長は頭は悪くないが、考え方が根性論なのだ。
だからこそ、どんどん数をこなして、力業で目的を達成させるのだ。
今回もそうなると思っていたのだが──
「流石の俺もそんなことはさせねえよ。お前自身も居心地が悪いだろうし、パーティーの参加者もどうしたらいいかわからないだろう」
「まあ、そうですよね」
おそらく部下の俺だけの被害なら行かせていただろう。
だが、流石に他の参加者の迷惑になることはさせない。
そういう常識はあるようだ。
「まあ、俺の予想ならお前はもう参加する必要は無いと思うぞ」
「はい?」
予想外の言葉に首を傾げる。
一体、何を言っているのだろうか?
パーティーに参加しなければ、結婚相手を探せないではないか。
「おそらく1週間だな」
「何がですか?」
「まあ、楽しみに待っておけ」
「?」
団長が何を考えているのかわからない。
俺が結婚相手を探さなくてよくなる──つまり、結婚相手が見つかるというわけだ。
「団長」
「なんだ?」
真剣な表情で声をかけると、怪訝そうに反応される。
はっきりと宣言させてもらう。
「流石に10歳の少女と結婚はしませんよ」
「エリスじゃねえよ」
俺の言葉の意味に気づき、団長は反論してくる。
「違うんですか?」
「いや、どうしてここでエリスの話になるんだ」
「だって、団長がもうパーティーに参加する必要がないと言ったので、結婚相手を探す必要がないと判断しました」
「まあ、そこは正解だな」
俺の予想を告げると、団長は頷く。
どうやらここまでは合っていたようだ。
「団長がどうにかできるのはエリスちゃんだけかな、と」
「それは俺を舐めすぎじゃないか? これでも団長として、いろいろと顔が広いんだぞ」
「その中で紹介できる女性はいるんですか? 俺の顔を見て怖がらないという条件の女性です」
「・・・・・・いないな」
団長は申し訳なさそうに視線を逸らす。
論破したが、こちらにもダメージが来てしまった。
団長の伝手ですら、俺を怖がらない女性は見つからないのか。
結構、ショックである。
「というわけで、エリスちゃんだけが条件に残ったんですが──」
「お前はエリスと結婚したいのか?」
「いえ、そういうわけじゃないです」
「エリスが駄目だって言うのか?」
拒否すると、団長がキレ始める。
まあ、娘を拒否された父親としては当然の反応である。
「まだ10歳の少女でしょ。それなのに結婚したら、いろいろと悪評が立ちますよ」
「まあ、それもそうか」
理由を告げると団長も納得する。
流石に年齢はどうにもならない。
いくら彼女が俺に対して好意を抱いても、そこは変わらない。
「しかし、エリスちゃんじゃないとすると・・・・・・」
「今のお前には理解できないだろう。素直に1週間程度待て」
「答えは教えてくれないんですか?」
「悩むお前を見るのが楽しいからな。知りたければ、自分で答えを見つけろ」
「むぅ」
団長がニヤニヤしているのを見て、思わず睨んでしまう。
面倒見の良い上司ではあるが、時折部下をからかうところもある。
厳しすぎるよりはマシだが、からかわれる身としてはあまり気分の良いものではない。
だが、彼が素直に吐くことはないので、言われたとおり1週間は待たないといけない。
1週間後に何が起こるのだろうか?
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