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 第八章 山井さんごめんなさい 毎晩ママにベッドで食べられてね

 夏休みになるとあたしの補習は別の先生がやってくれた。島は本土からの客でごったがえした。ママは東京からきた男とねんごろになった。いつものようにママは男と東京にもどった。青桐洋二が死んで島にとどまる理由がなかったせいだ。

 あたしは今度の男の名前を憶えなかった。あたしの予想どおり東京でママは男とうまくいかなくなった。ママは三十二歳で見た目が可愛いだけが取り柄の女だ。すぐ飽きられても無理はない。酒場ではしゃぎあうにはいい女だがいっしょに暮らして楽しい女ではない。

 あたしはあきれつつこの夏のママを腹にすえかねた。また洋二のような男とくっついて犯されかけてはたまらない。かねて考えていた計画を実行に移すことにした。あたしは山井浩太郎のマンションをたずねた。たどり着く途中で山井を見つけた。山井は駐車場でスケートボードに乗っていた。夢中でターンやダッシュをくり返していた。あたしはいけるかもと思った。きょうは休日だ。天気もいい。そのまっ昼間にひとりでスケートボードに興じる青年だ。恋人や奥さんはいないのではないか? あたしは金網ごしに声をかけた。

「山井さん。山井浩太郎さん」

 すぐに山井がスケボーをとめた。器用なものだった。山井はカケエをさらにひよわにしたみたいな男だ。優柔不断としか思えない。そのため女に縁がなかった。ママと知り合ったのは同僚に連れられてはいったキャバクラにママがいたせいだ。酔って街角でもどしていたママを山井が介抱した。偶然とおりかかったと本人は言ったがそれは嘘だろう。ママが店をでてくるのを待っていたにちがいない。そのくせストーカーになる執念深さはない男だった。店からでてくるママに会えたらいいなとただ店を見ていただけだと思う。要するに気の弱いだけが長所の善良な男だった。

「あれ? イチズちゃん? 月乃さんが結婚して引っ越したって聞いたけど?」

「実はね。ママの旦那が死んだの。それでもどって来ちゃった。ねえ山井さんいま恋人か奥さんがいる?」

 山井がはははと笑った。自嘲気味な笑いだった。

「ぼくが結婚? そんな甲斐性がないのはきみも知ってるじゃないか。恋人もなしさ」

「よかった。じゃママをもらってくれない? まだ好きなんでしょ?」

 山井が顔を曇らせた。

「でもぼく月乃さんにはふられてるんだよ? あんたほど退屈な男はいないって」

「そんなの気にしないでいいわ。あの女は男なら誰でもいいのよ。だから山井さんでも大丈夫。いまならお買い得なの。あたしが浮気しないように洗脳したげるからさ。買ってよ」

「ほんとにぼくでいいの?」

「ええ。山井さんほど善良で嘘のつけない男っていないもの。山井さんはあたしやママを殴らないでしょ? ほかの男だとあたし殴られたり蹴られたりするもの」

 あたしは心の中でつけくわえた。犯されたりもするのよ。未遂だったけどと。あたしはあたしとママがこれまでの男からうけた仕打ちを脚色をまじえて語った。山井の頬に血が射した。

「なんてことだ! 月乃さんはそんな目にあってたのか! わかったイチズちゃん! ぼくが月乃さんを守ってみせる!」

 やったねとあたしは喜んだ。あとはママを丸めこむだけだ。あたしはアパートにもどるとママを焚きつけた。

「ねえママ。日本海にトロピカルアイランドは浮かんでないって今回の一件でよくわかったでしょう? 山井さんと結婚するのがママの幸せなのよ。男は堅実が一番」

「そうかもねえ。あんたもリョースケのことは早く忘れなよ。あいつ六十人の女を囲ってたって聞いたわ。あんた六十一人目の女だったのよ」

「えっ? ああそうね。リョースケはひどい男だったわね」

 あたしは心の中で舌を出した。いーだと。リョースケはあたしの恩人よ。一番たいせつな人なの。ママみたいに節操のない人じゃないんだから。

 さっそくあたしとママは山井のマンションに転がりこんだ。山井はママに手をだそうとしなかった。あたしはママを強制的に山井のベッドに叩きこんだ。そうしないとあたしが山井に襲われる。そんなふうに思ったせいだ。ママは節操がないからそのまま山井をひと飲みにした。うわばみに飲まれる旅人。そんな光景をあたしは連想して手を合わせた。安らかに成仏してください山井さんと。

 そっと戸のすきまからのぞくと全裸のママが山井の上でお尻をふっていた。山井は戸のあく気配に顔を戸に向けた。あたしは山井と目が合った。がんばれとあたしはVサインを山井に送った。山井が恥ずかしそうに顔をそらせた。そのあと山井は全身をのた打たせて顔をしかめた。イッちゃったらしい。ママが上からお尻の筋肉をキュッキュッと緊めていた。

 他人の性交を生で見たのははじめてだ。実の母のそういう部分を見たのもはじめてだった。あたしもあんなふうにリュースケとヤるのかなと思ったら妖しい気分になって来た。リュースケに馬乗りになったのを思い出したら指が下着の中にもぐりこんだ。あたしもベッドでのけぞりながらリュースケの名を呼んだ。

 あたしは山井からひと部屋をもらっていた。その勉強机で祈る毎夜だった。いつかリュースケと再会をはたして処女膜を突きやぶらせてください神さまと。

 山井はママとあたしを同居させたのにママにえんりょして手すらにぎらなかった。あたしが山井に襲われないためにはママを提供しておくしかない。あたしはそう思ってママを山井の寝室に送りだしつづけた。ママは気が進まない顔ながら毎夜あたしの指示どおりに山井の寝室をおとずれた。山井がママを組み伏せている気配はなかった。ママが山井を飲む一方みたいだ。娘がとなりの部屋にいるってのによくやるよとあたしはあきれた。

 こんなにママの性生活を観察したことはなかった。ママはド助平のようだ。エッチが好きでたまらないらしい。山井はママが大好きなのでママがせがむたびにがんばっているようだった。あんがい似合いのカップルみたいだ。

 山井は安らかに成仏する毎日だった。当人が幸せそうだったのであたしも安心した。日々あたしは山井に感謝された。リョースケと関係を持った翌日の玲ちんの幸せを山井は毎朝感じたのだろう。あたしはすこしうらやましかった。リョースケに馬乗りになって熱烈にキスをしただけであんなに胸がポカポカした。リョースケとひとつになっていればもっと幸福だったにちがいない。でも処女をささげたあとで別れが来たらあたしはいま以上に不幸に感じたかもしれない。処女のままリョースケにこがれるのと非処女になってリョースケを想うのとどちらが胸のうずきがすくないのだろう?

 あたしは山井にスケートボードを習った。あたしに父親はいなかった。いたのはママの男だ。だからあたしは父親とする遊びをしたことがない。釣りや野球といった男の遊びはまるでだった。あたしはリョースケにカンパチ釣りの楽しさを教えられた。スケートボードも楽しいのではないかと思ったわけだ。

 やってみると本当に楽しかった。ママも引っ張りだして三人でスケボーに乗った。まるで本物の親子みたいな気がした。あたしは山井とママが結婚すればいいと思った。山井は真面目で地味だ。ママの趣味にはほど遠い。しかし人間としてまともだと感じた唯一のママの男だった。

 ただし山井浩太郎にはひとつだけ問題点があった。あたしの名前だ。もしママが山井と結婚したらあたしは山井一千鶴になる。ヤマイイチズなんて病気に苦しめられそうな名前ではないか? もっとも青桐なんて姓よりはるかにましなのはまちがいない。未遂とはいえあたしは襲われかけた。青桐と聞くとあたしは背中に寒けが走る。

 あたしは男が近くにくるとビクンと飛びのくようになった。青桐洋二に犯されかけた時にはそうならなかった。世良のせいだと思う。あたしは世良を善人だと信じていた。あたしは世良のうわっつらにだまされていた。そのため男性不信になったようだ。にこやかに笑う男がとても気持ち悪い。善良な仮面の裏でいやらしいことを画策している。そう思うと吐き気がした。笑顔の仮面をかぶってあたしの警戒区域に踏みこんでくる男があたしは苦手になっていた。誰が善人で誰が悪人かの区別があたしにはつかなくなったわけだ。カケエやリョースケのようにすでに中身の見きわめられた男以外にあたしは近づけなかった。服装もズボンをはくようになった。簡単に下着をぬがされないようにだ。山井もいい人だけどつい距離を取るあたしがいた。男にとっては不快な態度だろう。痛くもない腹をさぐられる気がしたはずだ。痴漢や強姦魔だとうしろ指さしている女としか思えない。

 ともあれ山井は善人だった。あたしに『大学に行け』と言ってくれた。あたしは将来を考えたことがなかった。あたしってなにがしたいんだろう? そう考えたときあたしはリョースケを思い浮かべた。小学生のような男だった。あたしはひらめいた。道に迷っている子どもに進む方向を教えてやりたい。そんなふうにだ。リョースケも道に迷っている子どもだったのではないか? リョースケみたいな小学生に道を示してやりたい。あたしはそう思った。小学校の先生になりたいと。山井は賛成してくれた。でもあたしの成績は悪かった。山井が予備校の入学手つづきを取ってくれた。

 あたしは予備校にかよいはじめた。そこであたしはカケエと再会した。カケエは医学部を目ざしていた。どうせなら日本一の医学部に入学したいと東京にでてきたそうだ。

「本当はさ。リョースケもイチズもいなくなって島にいたくなかったんだ」

 そんなふうにカケエは打ち明けてくれた。

 予備校では合コンもさかんにおこなわれていた。あたしも誘われて何回か参加した。しかしそのたびにかげ口を叩かれた。男が来るとビクッとおびえるせいだ。

「自意識過剰じゃねえの?」

「お高くとまってんだよ」

「どれだけ自分が美人だと思ってるんだろうねえ」

「やだやだ。まるでおれたち痴漢か強姦魔だよ」

 そんなかげ口ばかりだった。リョースケがいなくなってあたしは涙もろくなった。ささいなかげ口でもあたしは泣いた。泣くあたしをカケエがなぐさめてくれた。あたしの肩を抱いてカケエがかばってくれた。あたしの身体はカケエにはおびえなかった。カケエはあたしの勉強も見てくれた。あたしはカケエにたよりっきりになった。しかしキスすらしなかった。あたしはリョースケが好きだった。

 受験がすぎてカケエはぶじに目ざす医学部に合格した。あたしは四年制大学の教職課にすべりこめた。そのころにはスケボーもかなり上達していた。

 カケエはあたしをよく映画や遊園地に誘ってくれた。あたしはカケエがきらいではなかった。でも愛してもなかった。カケエにつき合うのは恩返しのつもりだった。カケエはあたしを大学に合格させてくれた。男たちからかばってもくれた。カケエがいなければあたしはもっと以前で挫折していただろう。

 あたしはいつの間にか二十歳になっていた。リョースケは行方不明のままだった。スミレちゃんは島の高校を卒業して本土の看護師学校に入学していた。リョースケの子を妊娠しなかったようだ。

 大学生のあたしは教員試験を目ざしていた。カケエは医師国家試験だ。

 あたしたちはカケエのマンションで勉強をしていた。カケエがあたしをちらちらと見ては落ち着かなかった。あたしはカケエがなにを言いたいかうすうす察していた。かつてカケエはこう言っていた。『この一件をぶじに収められたらさ。きみの脱ぎたての使用済み下着をちょうだいとおねがいするつもりだ』と。あたしはその要求には応えたくなかった。代わりにキスでもしてやるか。そう思った。

 あたしはそっとカケエに寄った。カケエの口に口をつけた。優しくカケエの舌をうながした。あたしはカケエの舌を舌先で舐めてあげた。

 そのときだ。誰かが玄関からはいってきた。

「まあ! なんてふしだらな!」

 声の主はカケエの母の典江さんだった。

 あちゃあとあたしはカケエから顔を離した。なんてタイミングでくるのよ典江さんと。

「あなたたちそんな関係なの!」

 典江さんがあたしに指を突きつけた。

「いいえ! 誤解です! あたしカケエとはいまのが初めてのキスなんです!」

 典江さんがあたしをにらんだ。

「うちの息子とは初めて? じゃほかの誰かとはいっぱいしたのね?」

 ありゃりゃとあたしは首をかしげた。あたしとリョースケのキスは若菜島でなかば伝説と化していた。監視カメラの録画下でえんえんとつづく濃厚なキスだ。DVD化もされていた。なのに典江さんはそれを知らないの?

「いえ。まあ。それはそれ。これはこれということで」

「なにがこれはこれよ! そんなふしだらな女をわたくしは認めませんわ!」

 あたしがたじろいだときカケエがすっくと立った。

「母さん! 帰ってよ! 帰ってくれ!」

 カケエはそのまま典江さんを玄関から押しだした。あたしはカケエがこんな毅然とした態度を取るのを初めて見た。カケエも男の子なのねえ。

 もどったカケエは憤然とした顔のままあたしを見た。

「さあイチズ。勉強をつづけよう」

「キスをつづけたいんじゃないの?」

 あたしはカケエをからかいつつ立ちあがった。玄関に歩いて戸をあけた。廊下に典江さんが和服でしゃがみこんでいた。ショックを受けてぼうぜんとした顔だった。

「はいってカケエと話し合ってください。あたしカケエとエッチな関係じゃありません」

 あたしは典江さんの手を引いてカケエの前にすわらせた。カケエも典江さんもしゃべらない。無言のままあたしたち三人はチラチラとお互いの顔をうかがい合った。最初に折れたのは典江さんだった。

「花兄。イチズさんとつき合うなら節度のあるおつき合いをなさい。あなたももう二十歳をすぎました。責任を取れるおつき合いをすべきですよ。以上です」

 典江さんが立って部屋をあとにした。あたしは見た。典江さんが口もとをかみしめていたのをだ。清水の舞台から飛びおりる心境だったにちがいない。

 典江さんが出て行ってしばらくあとだった。カケエがあたしに真剣な目をすえた。

「イチズ。ぼくとつき合ってほしい」

 あたしは返答に窮した。さっきカケエにキスをした。だが恩返しのつもりだった。脱ぎたての使用済み下着をあげられないおわびだった。カケエとつき合うなんて考えたこともなかった。

「ごめん。カケエ。あたし」

「わかってる。イチズはリョースケが好きなんだろ? でもそろそろ忘れてもいいんじゃないか?」

「忘れる?」

 あたしは右手のブレスレットを見た。ブレスレットはかつての光をうしなっていた。肌身離さずつけているせいで七色の玉は輝きをなくした。ステンレスはくすんでにぶいアルミのようだ。歳月がキラキラしたものを根こそぎ奪っていた。あたしの大切なものはもう光らないのだろうか? あたしの中でリョースケは二度と輝かないのだろうか?

 あたしが考えこんだのでカケエは言いすぎたと思ったらしい。

「いや。忘れろってんじゃないな。リョースケを好きなままでいいからぼくとつき合ってよ。ぼくだってリョースケを忘れてない。イチズにリョースケを忘れろとは二度と言わないからさ。ぼくとつき合って」

「でもカケエ。桜子は?」

 桜子の祖父は国会議員で国会の会期中は東京だ。桜子はおじいさん子だった。そのため桜子も東京によくきていた。桜子の祖父もまじえてカケエはしばしば会食をしていた。リョースケがいなくなったいま桜子はカケエと結婚するのではないだろうか? 桜子の父親もカケエを気に入っていた。国会議員の祖父もカケエびいきだと聞いていた。ちなみに犬のロクは桜子の家で飼われていた。本土まで泳いだリョースケとロクはその足で正徳院家に桜子をたずねたそうだ。桜子がロクを気に入っていたせいだ。リョースケはロクをあずけて姿を消したという。カケエが苦い顔になった。

「桜子もリョースケが好きなままだよ。ぼくは桜子より桜子のお父さんやおじいさんにモテてるんだ。イチズ。ぼくに同情すると思ってぼくとつき合ってよ」

 たしかにあたしはカケエに同情した。中年親父やジーサンにもててうれしい二十歳青年がいるわけがない。一方であたしは桜子に親近感をおぼえた。あたしのほかにもリョースケを忘れられない女がいるという安堵感だった。

 かつてリョースケの女だった者たちはそれぞれの道を歩みはじめていた。あたしは玲ちんと頻繁に連絡を取っていた。玲ちんは高卒後に本土の印刷会社に就職した。そこの三歳上の同僚とつき合い始めた。いま結婚を考えているそうだ。結婚式には来てねと玲ちんは言っていた。仁木板蓮夢は島の漁師と十九歳で結婚した。七瀬夏美は大阪で大学生と同棲中だそうだ。そのほかの女たちもみんなリョースケを青春の思い出として消化していた。リョースケが忘れられないのはあたしと桜子くらいだ。スミレちゃんとは連絡を取ってないので現況がわからない。

     ☆

 四月だった。マンションのインターホンを鳴らす者がいた。あたしがでると源馬刑事が立っていた。源馬刑事はあたしを見るなり口にした。

「リョースケを新宿で見た者がいるんだ。おまえずっと東京だろ? なにか知らないか?」

 あたしはそんな話は初耳だった。

「さあ? 源馬さんはわざわざリョースケを捜しに?」

「いいや。ついでだ。東京で手配された男が若菜島でつかまってな。俺が東京まで移送したんだ。俺なんかを東京に派遣する幹部はいねえよ。いまは帰る道すがらだ」

 リョースケが明日にも逮捕されるかとおびえたあたしはちょっと安心した。

「それでリョースケは見つかったの?」

 源馬刑事がぎらつく目であたしを見た。

「見つかったらこんなとこに来るかよ。おまえのところに現われたかと思ったんだ。だが残念だな。おまえはリョースケと会ってねえ」

「な? なんでわかるのよ?」

「おまえがリョースケと会ってりゃ顔を見てひと目だ。ポワワンとした顔になるからな」

 あたしは顔をしかめた。表情が読めないようにだ。源馬刑事がニヤッと口の端を吊りあげた。

「いまさらそんな顔をしてもむだだ。まあリョースケがきたら俺に知らせろ。と言っても知らせちゃくれねえだろうがな」

「わかってるなら言わないでよ」

「そうはいかねえ。逃げる犯人に『待てーっ!』って叫ぶのと同じだ」

「なるほど」

「ふふふ。青桐洋二殺しは行き詰まってるよ。俺は捜査一課の連中にリョースケが犯人だと納得させた。リョースケは全国指名手配中だ。だがよ。リョースケの情報はすくねえ。一度四国の漁港でリョースケらしい男を見たって報告がきただけよ。捜査一課はいそがしくてリョースケひとりにかまってられねえ。だから俺がリョースケをとっつかまえて本土に返り咲くんだ。なにせ強盗殺人犯だからな」

「えっ? 泥棒はつかまったんでしょ?」

「平岡染也はつかまったさ。あのなお嬢ちゃん。殺された青桐洋二は午後八時十分に小料理屋で勘定をはらってるんだ。そのとき財布に十枚ほど一万円札がはいってたのを小料理屋の親父が見てる。つまり午後七時に島を離れた平岡はその十万円を盗めねえ。洋二を殺したやつがその十万円を盗んだわけだ。だから強盗殺人よ。強盗殺人は無期懲役か死刑だ。リョースケは当時少年だった。だがそのあとに残虐な傷害事件を起こしてる。世良って先生の顔を釘でX字にきざんだのよ。凶悪犯だと事件当時が少年だろうと死刑判決もありうるね。なにせ遊ぶカネ欲しさになんの罪もない男をひと刺しで殺したんだからな」

 あたしは歯をかみしめた。リョースケはあたしを助けようとしたのよ。そう叫びたかった。しかし証拠がない。あたしがなにを言ってもこのいやらしい刑事が信じてくれるとは思えなかった。あたしはぐっとがまんしてリョースケの悪評を受けとめた。

 源馬刑事が去った。あたしはマンションの手すりから夜空を見あげた。星が流れた。

「好きっ! 好き好き好きっ! 好き好き好き好き好きぃっ! ふう。やっと九十九回目だわ。ちぇっ。あと一回だったのにな」

 あたしはうらめしげに星の消えた方向をながめた。あたしはインターネットのサイトで流れ星の見えそうな場所や時間をチェックしては夜空に流れ星を探した。あたしが『好き』とねがいをかけた中には本物の流れ星ではないものも混じっていた。人工衛星やロケットの破片が流れ星に見えるそうだ。しかしあたしに本物かまがいものかの区別はつかなかった。とにかく夜空を流れる光を見ればあたしは『好き』と唱えた。早口で流れ星が消えるまで口にしつづけた。人工衛星でもいいじゃないの。きっと神さまはあたしのねがいをかなえてくれるわと。

 あたしは東京にもどってからもずっとリョースケを捜した。街角でも駅でもバス内でもだ。とにかくいたるところでリョースケがいないかと見回した。でも世の中はそんなに甘くない。あたしはリョースケに会えなかった。しかしだ。あと一回で流れ星に百回『好き』と言える。その時きっとあたしはリョースケに会える。

 あたしはそう考えてハッとした。源馬刑事はこう言ってなかったか? リョースケを新宿で見た者がいると。これはひょっとすると神さまがあたしのねがいをかなえてくれようとしているのでは? 九十九回好きと言った努力が認められたんじゃ?

 あたしはとたんにうきうきとした。新宿に行こう! 新宿よ!

 あたしは浮かれて新宿へと急いだ。もうリョースケに会える気になっていた。神さまがあたしの努力を見捨てるはずがないわとだ。

 源馬刑事はリョースケが全国指名手配だと言っていた。するとリョースケが本名で働いているはずがない。アパートやマンションも借りられないだろう。となるとネットカフェなどに泊まっているのではないだろうか? そして仕事はいかがわしい深夜産業では?

 あたしはそう推理して歌舞伎町に向かった。あそこは日本一の不夜城だ。身元の怪しい人間がわんさかいる。

 しかしあたしが見つけたのはリョースケではなかった。世良だった。あたしはうげーと思った。どうして神さまはあたしとあんなやつを会わせようとするのかしら?

 世良を見かけたのは東新宿に近い駐車場の前だった。あたしは駐車場でスケートボードの練習をする小学生を見つけた。小学生はうまくターンができないで何度もくり返していた。あたしも最初ああだったなあ。そう思いながら見ていた。そのあたしのうしろを聞き憶えのある声がとおりすぎた。

「リョースケ。ついに見つけたぞ。おれの顔をこんなにした恨みを思い知らせてやるぜ」

 たしかにそう聞こえた。あたしはハッとふり返った。それが世良だった。うしろ姿しか見えなかったがまちがえるはずはなかった。あたしは顔をスカーフで隠して世良のあとを追い始めた。バッグからメガネと野球帽をだして身につけた。変装道具はリョースケを見つけたときリョースケが女といれば使おうと用意したものだ。リョースケが女なしでいるとは考えにくかった。そのときはリョースケに気づかれないよう遠くから見つめるだけにしよう。そうたくらんでいた。その変装セットが思わぬところで役に立ちそうだった。

 世良が喫茶店にはいった。あたしも変装したままうつむいて入店した。世良のうしろの席にあたしはひっそりと腰をおろした。世良もあたしと同じようにサングラスをしていた。それでも鼻から頬にリョースケがつけたX字の傷が隠しきれずに生々しく走っていた。世良のすわった席は先に二十歳くらいの女がすわっていた。待ち合わせをしていたようだ。

 化粧の濃い女はすぐ世良にしゃべり始めた。得意げな口調だった。

「あんたの言うとおりリョースケをたらしこんだよ。カネくれカネ」

「言われた仕事をこなしてからだ」

「ちっ! しけてやんの。まあいいか。リョースケにはヤクの運び人をあたいの元カレだとふきこんどいたさ。あいつバカだねえ。あたいの言うことをなんでも信じやがんの。ちょっと泣き真似をしたらコロリだ。あんなちょろいやつがよく歌舞伎町で生きてけるね」

「田舎者だからな。それよりおめえ。リョースケに運び人の特徴を教えただろうな?」

「ああ。ちゃんと伝えたよ。あたいの全財産を元カレが持ち逃げしようとしてるってね。あたいをぶん殴って奪ったのはヴィトンのバッグだって写真を見せたよ。スキンヘッドの元カレはずっしりふくらんだヴィトンのバッグをかかえてるはずだってね。そのバッグが持ちこみ屋から受け取る一億円相当のヤクなんだろ? それよりさ。なんでそこまでわかってて現ナマかヤクを奪って逃げないのさ? 末端価格で一億円のヤクだよ? それを盗めば遊んで暮らせるじゃないか?」

「バカだなおめえは。そんなもの盗んだら殺されるに決まってるじゃねえか。それにヤクは売りさばいてなんぼだ。おれたちじゃさばけねえんだよ。欲をかくと死ぬ羽目になるぜ」

「そっか。麻薬組織にリョースケを殺させようって計画だもんね。あたいたちがヤクや現ナマを盗めばあたいたちが殺されるってか。えへ。そうなんだ」

 世良が深いため息を吐いた。この女はバカだ。そんなため息だった。

「とにかくおめえはリョースケにそのヤクの詰まったバッグがおめえのものだと信じこませりゃいいんだ。リョースケは正義漢だからな。かならずおめえのバッグを取り返してくれるさ。相手が麻薬組織だとも知らずにな」

「そのあとバッグを盗ったリョースケが麻薬組織に追いつめられる。そんな寸法だね?」

「ああ。一億円相当のヤクを盗んで逃げたリョースケは確実に殺されるだろうさ。麻薬組織はそんなにあまくねえからな。ひひひ。おれはリョースケの死にざまが見られねえのが残念だ。東京湾にコンクリートの重しをつけて沈められるに決まってるからな」

「あんた悪いやつだねえ。悪人だ」

「おいおい。その悪人からカネを絞り取ろうってのはどこのどいつだよ? ところでな。バッグを盗ませたリョースケとの待ち合わせ場所も伝えてあるんだろうな?」

「もちさ。稲荷神社だろ?」

「そうだ。おれは稲荷神社の前でリョースケがつかまるのを見物してっからな。おめえまちがえても本当に稲荷神社でリョースケを待つんじゃねえぞ」

「ほよ? なんで? あたいのバッグを取り返してくれたリョースケと稲荷神社で待ち合わせてバッグを受け取るんじゃないの?」

「バカ。それをすりゃおめえまで殺されるぞ。まあおれが殺されるんじゃねえからいいけどよ。おめえ死にたきゃそうしろ」

「ああそうか。そうだったね。じゃあたいはどこで待てば?」

「アホ。待つ必要なんかねえ。おめえはリョースケがバッグを奪うのを見たらおれにメールするだけだ。あとは遊びに行きゃいい。約束のカネはあしたくれてやる」

「なんだそうなんだ。じゃカラオケでも行こっと」

「そうしな。とにかくおめえはリョースケにバッグを盗らせりゃいいんだ。わかったな?」

「わかった。あたいはそこまでバカじゃないよ。カネのためならおりこうになれるんだ」

 女はそこで店をでた。世良はすわったままだ。

 あたしはどうしようかと迷った。しかし女を尾行することにした。いまの話を整理するとリョースケに麻薬組織のバッグを盗ませる計画のようだ。リョースケは女にだまされて女のバッグだと思って組織の麻薬入りバッグを強奪する。女との待ち合わせ場所は稲荷神社だ。だが女は来ない。リョースケはバッグを手に待ちぼうけだ。そこへリョースケを追って麻薬組織がやってくる。リョースケはつかまって殺される。世良はつかまるリョースケを神社の外で見る。きっと世良はほくそ笑みながらながめるのだろう。

 そんなことさせるものか! あたしは必死で考えた。どうやったらリョースケを助けることができるだろうかと。同時にリョースケを胸の奥でののしった。女に弱いのもほどほどにしろとだ。ホントにあのバカ男は。

 あたしが女を追っていると途中でななめに道が走っていた。ななめの道は左右にわかれていた。あたしは女が右に行ったのか左に行ったのかつかめなかった。その界隈はホテルが多かった。女はホテルのひとつにはいったらしい。麻薬の取り引きはホテルの中でおこなわれているのではないか?

 あたしは眉を寄せた。どうすればいい? ホテルを一軒ずつ調べる? いいえ。あれを借りに行くべきだわ。あたしはそうひらめいた。あたしは小学生がスケボーを練習していた駐車場に走った。小学生はまだスケボーの練習中だった。

 駐車場にはいったあたしは小学生に手を合わせた。

「おねがい。そのスケボーを貸して。あとでキスしたげるからさ」

 小学生があたしを見た。

「ホント? ホントにキスしてくれる?」

「ええ。本当よ。これ前払いね」

 あたしは小学生のおでこにキスをした。小学生があたしにスケボーをさしだした。あたしはスケボーをうばい取るとスケボーに飛び乗った。

 あたしはスケボーを駆ってさっき女を見失ったホテル街へと急いだ。ホテルのひとつから三人の男が出てきた。ひとりはスキンヘッドでヴィトンのバッグを大切そうに抱きしめていた。そこへやはりホテルからリョースケが出てきた。服装から見るとリョースケはキャバクラの客引きだ。やはりまともな職にはつけないらしい。十六歳だったリョースケは二十歳の青年になっていた。面影は充分すぎるほど残っていた。あたしはなつかしさに思わず泣きそうになった。でも泣いているひまはない。リョースケをとめなければ。

 しかしあたしは間に合わなかった。リョースケがいきなりスキンヘッドを殴りつけた。残りのふたりを蹴り倒した。リョースケは倒れたスキンヘッドの手からバッグをもぎ取った。次にリョースケは稲荷神社に向けて走りはじめた。

 リーダーらしい小柄な男が道にすわったまま倒れたふたりに叫んだ。

「バカ野郎! 仲間をかき集めるんだ! ありゃ末端価格で一億円をこえるブツだぞ! あいつをとっつかまえてぶち殺せ!」

 ひとりがリョースケを追った。リーダーらしい男は追いながらスマホで会話した。スキンヘッドは倒れたままだ。あたしはスケボーでリョースケと男たちを追った。リーダーの指令でか街角から男たちが飛びだしてきた。

「待てぇ! こらぁ! おれたちのヤクを返せぇ!」

「そのバッグは一億円だぞぉ! 待たねえとぶち殺すぞぉ!」

 あたしは源馬刑事の言葉を思い出して思わず笑った。逃げる犯人に『待てーっ!』って叫ぶのと同じだわと。男たちは全員が逃げるリョースケに『待てーっ!』と声をふり絞っていた。待つはずないのにだ。あたしはスケボーを加速させた。まずリョースケを追いかける男たちを追い抜いた。次にあたしはリョースケに突進した。リョースケの持つバッグをうしろから力まかせにぶん取った。リョースケとすれちがいざまあたしは口にした。

「東京を離れなさい! あんたは女にだまされたの! こいつら麻薬組織だわ!」

 それだけ告げるのが精一杯だった。流れ星に好きと告げる早口の修練をつんでおいてよかった。そうあたしは安堵した。あたしはそのかどを右に折れた。

 リョースケは一瞬ぼうぜんとした。しかしすぐ追ってくる男たちの顔を見た。あたしの言葉が正しいと気づいたようだ。リョースケがあたしと反対方向の左へ逃げはじめた。

「おかしら! あの野郎が左に逃げますぜ!」

「バカ野郎! あんなやつはどうでもいい! バッグが先だ! バッグを取りもどすんだ! バッグを持った右の泥棒を全員で追え!」

 ふうとあたしはスケボーの上でため息を吐いた。ズボンにしといてよかったと。

 あたしの右手はリョースケからバッグをひったくった時かすかに引っ張られる感覚があった。ほんのわずかな引っかかりだった。でもあたしはすぐに忘れた。それどころではなかったからだ。男たちの全員があたしを追っていた。いまつかまればあたしが殺される。あたしが抱くバッグにつまっているのは末端価格が一億円の麻薬だ。

 あたしは心の中でとなえた。『早く逃げてリョースケ。誰の手も届かないところに。あんたを傷つける者がいないところに』と。

 ちらりとあたしは背後を見た。追ってくる男たちと反対方向にリョースケが逃げるのが見えた。ふり返りふり返りリョースケは逃げた。まるであたしが誰か気づいたみたいだった。あたしはそのリョースケに抱きつきたかった。呼びとめてひと晩中この手の中にリョースケを感じたかった。でもあたしはかたく歯をかみしめた。あたしを追う連中につかまればリョースケは殺される。あたしがいますべきはリョースケを遠くに逃がすことだ。あたしはリョースケと反対側に逃げる。逃げるリョースケを引きとめてはならない。流れ星に百回好きって言えたらきっと願いはかなう。そのときあたしはリョースケに会える。ふたたびふたりはめぐりあう。そう信じてる。

 あたしはスケボーを駆った。稲荷神社に向けて一目散にだ。稲荷神社の前では世良が横を向いてタバコに火をつけていた。軽く休憩というポーズに見えた。

 あたしは世良の前にスケボーを走らせた。

「おーいあにきぃ! 約束のお荷物っ! たしかにお届けしやしたぜっ!」

 大声でそう叫びながらあたしは麻薬入りヴィトンをポンと世良に投げつけた。世良はとっさにそのバッグを両手で受け止めた。ナイスキャッチ!

 あとはあの麻薬組織の男たちの解釈にゆだねよう。きっと世良がすべての黒幕だと信じてくれるはずだ。事実世良が黒幕なのだから。

 あたしはスケボーを走らせながらチラッとうしろを見た。男たちがバッグを抱いた世良を取り囲んでいた。あわを食う世良の声が聞こえた。

「ち! ちがう! おれじゃねえ! おれが盗んだんじゃねえ! おれは一億円相当のヤクなんか盗んじゃいねえ!」

 あたしは顔をしかめた。あーあ。やっちゃったよ。あのひとことはまずいわよねえ。

 案の定リーダー格がせせら笑った。

「おいおい。どうしてそのバッグの中身を知ってるんだい? おれに教えてくれねえか? そうだな。おれたちの事務所でじっくりと説明してくれよ。おい」

 リーダーがパチンと指を鳴らしたのが聞こえた。

「うわあ! 助けてくれぇ!」

 前を見てスケボーを駆るあたしにはそこまでしか聞こえなかった。そのあと車のドアがバタンとしまる振動が背後から伝わってきた。世良が車に押しこまれたらしい。あたしの脳裏に高校のとき勉強した四文字熟語が浮かんだ。自業自得とだ。

 せいぜい苦しんで成仏してね世良先生。まちがってもあたしやリョースケのところに化けて出ないでよ。あんたがすべて悪いんだからさ。

 あたしは駐車場にもどった。小学生が手持ちぶさたですわっていた。

 あたしは小学生にスケートボードを返した。

「ありがとう。本当に感謝してるわ。これ約束のお礼ね」

 あたしは頬にキスをしようとした。しかし小学生はその瞬間あたしにくちびるを向けた。

「もぉ。おませさんねえ」

 あたしは小学生の期待どおり濃厚に舌をからめるキスをした。感謝の気持ちをエロくエッチにこめてだ。終わると小学生が顔をポーッとさせてあたしを見た。

「お姉ちゃん彼氏いる? いなきゃぼくとつき合ってよ」

「残念。ちゃんといるわよ。でもきみいい線いってるわ。高校生になれば相当なハンサムさんになってるわよ。きっと美人の彼女ができるわね」

「お姉ちゃんみたいな?」

「あたしなんかよりずっと可愛い女の子が恋人になってくれるわよ。でもね。それまでにもっとキスの練習をしときなさい。キスのへたな男は好感度がぐっと落ちるわよ」

「うん。わかった。練習する。でもどうやって?」

「インターネットで調べてね。じゃバイバイ」

 あたしは足早に駐車場をでた。変装を解きながら駅へと向かった。幸い麻薬組織は世良を確保してバッグを取りもどしたことで満足したようだ。あたしをつかまえようとする者はいなかった。あたしは夜空を見あげた。リョースケはぶじに逃げのびたかしら? おしかったなあ。せっかく見つけたのに。

 リョースケが東京を離れたらあたしはもうリョースケを見つけられないだろう。あたしは東京と若菜島しか知らない。リョースケが名古屋や大阪にいても見つけられないはずだ。

 あたしは空に流れ星を探した。くすんだ東京の空に流れ星はなかった。あたしは夜空に思いを投げた。

 ねえリョースケ。もうあたしたち二度と会うことはないの?

 とうぜん答えは返らなかった。でもとあたしは思い直した。流れ星に好きと言えたのは九十九回だ。まだ百回目を言ってない。だから願いがかなわないのかもしれない。百回言えたらきっとあたしの願いはかなう。そう信じて生きて行こう。

 電車の切符を買うときだ。あたしは右手首にブレスレットがないと気づいた。いつどこで落としたのかわからなかった。マンションを出るときにはたしかにあった。新宿に着いたときにはチェックしなかった。途中の電車の中で落としたのかもしれない。

 今夜はせっかくリョースケを見つけたのに話もできなかった。おまけにリョースケからもらったブレスレットをなくした。きょうはいい日なのか最悪な日なのか? そうあたしは悩んだ。しかしとあたしは思い直した。リョースケは元気そうだった。あたしはリョースケに会えた。リョースケはこの東京にいた。リョースケがどこに逃げようと日本のどこかにいるだろう。あたしは絶対にリョースケに会える。きっとまた会える。そう信じてあしたをむかえよう。


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