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 第十一章 やーん あんたら変態よぉ なんであたしがそんな恥ずいまねをぉ

 あたしとリョースケが結婚して三ヶ月がすぎた。新婚生活になれたころだ。義妹のスミレがカケエを連れて家庭訪問にやってきた。スミレとカケエはまだ結婚をしていない。桜子を交えた三角関係は継続中らしい。あたしの新婚家庭はあたしとリョースケには広すぎる一軒家だった。子どもが四人生まれればちょうどいい広さになるかと思える。犬を飼うのもいいかもしれない。リョースケはロクを引き取るつもりだった。しかし桜子に拒否された。桜子はロクに情が移ったらしい。またはロクがいるとリョースケを脅迫して関係を持てるかもと考えたのかもしれない。とにかく桜子がロクを手放さなかった。リョースケはロク以外の犬を飼うのが気が進まないようだ。そんなわけであたしとリョースケは広い家にふたり暮らしだった。

 夕食はリョースケが釣ったクエを鍋にして出した。スミレとカケエはよろこんでくれた。あたしはひとつたずねてみた。

「ところでさ。桜子は?」

 スミレが缶ビールを手にあたしを見た。頬がほんのり赤い。

「桜子は東京で党の幹部に顔を売ってるわ。政治家になるってのは本気みたい。おじいさんが生きてるうちに地盤と看板をもらうんだってさ。いま積極的に行動中よ」

「なるほど。でもさスミレ。あんたたち結局どうするの?」

「どうするって?」

「あなたカケエと結婚するの?」

 スミレが首をかしげた。

「さあ? わたしはなんとも言えないわ。桜子しだいね。桜子がカケエの婚約者だもの。桜子がカケエと結婚するって言い出せばわたしは身を引くつもりよ」

 あたしはカケエに顔を向けた。

「カケエあんたはどうなのよ? スミレと結婚する気があるの?」

 カケエがうなずいた。

「ぼくはそのつもりだよ。でもねイチズ。スミレちゃんが結婚話をさけるんだ」

 あたしはまたスミレを見た。

「どうしてなのスミレ? カケエはその気なのに?」

 スミレが眉を曇らせた。

「カケエがよくてもねえ。カケエのお母さんの典江さんがさあ」

「あなたとの結婚に反対なの?」

「ううん。そうでもないんだけどさ。でも明らかにわたしは典江さんにきらわれてるからね。なにせふしだらな男の妹だから」

 リョースケが口をはさんできた。

「おいおい。おれのせいかスミレ?」

 スミレがリョースケにとろんとした目を向けた。

「いいえ。お兄ちゃんのせいじゃないわ。わたしがさ。典江さんとうまくやっていく自信がないだけよ。桜子は誰が相手でも気にしない女だからさ。典江さんも平気なの。でもわたしはああいうオバサンが苦手なのよねえ。看護師と院長夫人って立場なら大丈夫なんだけどさ。義母と義理の娘となるとねえ。桜子がずっとついててくれるといいんだけどさ。そういうわけにも行かないから」

 リョースケが困った顔でスミレとカケエを見た。リョースケは両親がともにいない。あたしはママしかいなかった。いまあたしのママは山井さんとのあいだにできた妹で手いっぱいだ。あたしの結婚に口をだす余裕がなかった。あたしもリョースケも姑問題なんて関係ない。たしかにカケエと結婚するとなると立ちはだかるのは典江さん問題だろう。あたしも典江さんは苦手だ。ため口で応戦するリョースケですらゆいいつ苦手な存在が典江さんだった。

 そのときスミレがニコッと笑いを作った。

「まあわたしの結婚は置いといてと。それよりさあ。実はわたしお兄ちゃんとイチズにおねがいがひとつあるの。聞いてくれる?」

 あたしはなんだかいやな予感がした。それでおそるおそる口にした。

「なあにスミレ?」

「あのね。カケエがさ。イチズの裸が見たいって言うの。一度でいいからさイチズ。カケエに全裸を見せてくれない?」

「ええーっ? なにそれ? なんでそんなことをしなきゃいけないわけぇ?」

「だってさ。イチズはカケエに処女をあげたわよね? でもそのとき部屋を暗くして素肌を見せなかったでしょ? カケエが泣くのよ。イチズの裸が見たいってね。ねえイチズおねがい。見せてあげてよ。一度はエッチをしたあいだがらじゃない? カケエのはじめての女がイチズなのよ。ねっ。カケエにイチズの裸を見せてあげて」

 あたしはスミレの顔をまじまじとながめた。

「スミレ。あなたはそれでいいの? カケエがあたしの裸を見たがっても平気なの?」

 スミレが小首をかしげた。

「平気? さあ? 平気なのかしら? ごめん。よくわかんないわ。でもわたしカケエが望むようにしてあげたいの。カケエがわたしを欲しいって言えばわたしをあげるわ。カケエが桜子を望めばわたしはそれでいい」

 あたしはカケエにとがめる目を向けた。

「カケエはどうなのよ? スミレじゃ不満なの?」

 カケエがうろたえた。

「ぼくもよくわかんないんだ。でも気にかかって仕方がないんだよ。イチズとエッチはしたんだけどさ。イチズの全身を見てないんだもの。なんだかもやもやして落ち着かないんだ。できればイチズの裸が見てみたい。ぼくが初めてエッチした女の子がどんな身体をしてたのか知りたいんだよ」

 リョースケがパンと両手を打ち合わせた。

「わかった。イチズちょっこっと脱いでやれよ」

 あたしは悲鳴をあげた。

「ええーっ! そ! そんなあ! いいのリョースケ? あたしあなたの妻なのよ?」

 リョースケがあたしを見た。怖いくらい真面目な顔だった。

「おれだってイチズの裸をほかの男に見せるのは気が進まねえさ。でもな。カケエの気持ちもわかるんだ。女の身体って見てみたいものなんだよ。肉体だけもらっても征服した気にならねえ。身体のすみずみまで見てやっと手に入れたって気になるのさ。特に惚れた女の裸ならよけいだぜ。初恋の女とエッチまでして裸を見てねえんじゃ死んでも死にきれねえよ」

「そんなものなの?」

「ああ。そんなものさ」

 あたしは思い当たる点もあった。リョースケは結婚したいまでもあたしのスカートをめくりたがる。あたしの下着が見たいのではなかった。あたしの『スカートで隠された状態の下着』が見たいようだった。リョースケはあたしの全裸を舐めるようにながめるのも好きだ。もうすっかり見慣れたと思うのだが毎回新鮮に感じるらしい。男ってお医者さんごっこと称して女の子の裸を見るのがたまらなく好きみたいだ。あたしはカケエに裸を見せるのが恥ずかしい。もちろんリョースケにだって恥ずかしい。でもリョースケには見てもらいたい気持ちもあった。だがカケエに見られると恥ずかしいだけだ。カケエに全裸を見て欲しいと思ったことはない。

 あたしはカケエの表情をぬすみ見た。カケエは深刻な顔であたしを凝視していた。死んでも死にきれない。たしかにそんな顔に思えた。『この数瞬の攻防に自国の存亡がかかっている』とさえ思わせるせっぱ詰まった表情であたしとリョースケをうかがっていた。たかが女の裸にその顔はなに? あたしは男って生き物にあきれた。あたしがおカネを要求すればカケエは全財産をなげうってでもあたしの申し出にこたえただろう。

「ねえカケエ。そんなにあたしの裸が見たいの?」

 カケエがうんうんとうなずいた。必死の顔だった。

「うん! すっごーく見たい! とにかく見たい! 見せて!」

 あたしは肩をすくめた。

「男ってやーねえ。カケエのエ・ッ・チ。じゃあたしとふたりっきりで」

 仕方がないとあたしは覚悟を決めた。あたしはカケエの手を取って寝室に行こうとした。そのあたしにスミレが待ったをかけた。

「だめえ。それはだめよぉ」

 あらとあたしはスミレを見た。

「なんで?」

「だってそうするとカケエはイチズとしたがるもの。わたしだってお兄ちゃんとその気になるわ。だからカケエとイチズのふたりっきりはだめ。わたしも立ちあう」

「じゃスミレとカケエだけで」

 三人で行こうとしたあたしにリョースケが声をかけた。

「おいイチズ。おれにも見せてくれよ」

「あんたは見慣れてるでしょ?」

「そんなことあるか。おれだって見たい」

 あたしはがっくりと首をうなだれた。相変わらず小学生のような男だ。あたしは知らなかった。あたしといるとリョースケが小学生にもどるとは。

「はいはい。わかりましたわ旦那さま。おおせのままに」

 あたしたちはぞろぞろと寝室に歩いた。あたしは浮かない顔だった。まるで屠殺場に引かれる牛の心境だった。なんだって夫の前で別の男に裸を見せなきゃならないのかと。

 あたしは寝室にはいるとダブルベッドの前に立った。あたしはTシャツから脱いだ。スカートをおろした。ブラジャーもはずした。あたしは最後の一枚に指をかけた。そのときふと思った。あたしはいま夫の前でほかの男のために脱いでいる。でも本当にいいのかしらと。あたしはリョースケの顔をうかがった。リョースケは脱げとばかりに親指を立てた。あたしはうえーんと心の中で泣きをいれた。愛する夫があたしを見世物にするぅと。リョースケに冗談のつもりはないらしい。笑ってもう終わりと言って欲しかったのにぃ。

 あたしは最後の一枚をぬぐのをためらった。あたしは毛が薄い。毛があたしのものを隠してはくれない。これをぬぐとカケエとスミレに全部見られる。

「あのう。ここでゆるしてくれない?」

 カケエとスミレが同時に声をあげた。

「だーめ!」

 やーん。息のそろったごカップルねえ。

 あたしはカケエとスミレをにらみつけた。

「カケエぇ。スミレぇ。あんたたち。恨むわよぉ」

 カケエの顔にはこう書いてあった。恨まれてもいい。ぼくは見たいんだと。

 あたしは肩を落として下着に指をかけた。股を閉じて下着をずりおろした。足を閉じたまま足首から下着を抜くのは苦労だった。太ももをかたく合わせても薄い毛からあたしのものが透けた。

 カケエが思わずといったいきおいで身を乗り出した。

「おおっ! これがイチズのっ! かっ! 可愛いっ!」

 あーあ。見せちゃった。

 あたしは直立不動のまま問いかけた。

「ねえ。もういいでしょう?」

 ベッドわきに立ったあたしは頬をほてらせてカケエをうかがった。カケエが複雑な表情であたしの下半身からあたしの顔に視線を移した。もっとよく見せてよぉと哀願する表情に見えた。リョースケがニヤニヤ笑いであたしに声をかけた。

「イチズ。そこまでやったんだ。カケエの気がすむまでじっくり見せてやれよ」

 リョースケが手で『背中も見せてやれ』とうながした。

「しょうがないエロ男子ねえ。カケエあたしのうしろ姿も見たい?」

 カケエが無言でうなずいた。うんうんと。あたしはくるりとカケエに背中を向けた。あたしはお尻の筋肉に力をいれた。都合の悪い箇所がのぞかないようにしっかりとヒップを閉じるためだ。

 カケエが息をとめてあたしの背中から臀部に視線を上下させた。あたしからは見えないがその気配を痛いほど感じてお尻がむずむずした。視線が突き刺さると言うか。そんなに穴のあくほど見ないでよぉ。そうあたしはますます顔をほてらせた。リョースケとスミレも真剣にあたしのうしろ姿を見ているみたいだ。

「もういいわよね」

 あたしがカケエに正面を向けるとカケエは不満げな顔だった。

「なに? もっと見ていたいのカケエ?」

 カケエが口ごもって手をふりまわした。言いたいことがあるようだ。

「あ。いや。その。そうじゃなくてさ」

 リョースケがふふふと笑った。

「イチズ。ベッドに寝て足を開いてやれよ」

 あたしは悲鳴をあげた。

「ええーっ! そんなことしたらみんな見えちゃうっ!」

 リョースケがあたしに近づいた。あたしの肩に手を置いてあたしの耳にささやいた。

「カケエはみんな見たいんだとさ。隠さねえで見せてやれよ。イチズのなにもかもが見たいそうだぜ」

 あたしはリョースケの顔をうかがった。

「だって」

「いいから見せてやれよ。おまえの閉じた股のあいだが見たくてたまらない。そうカケエの下半身が主張してるぜ」

 あたしはカケエのズボンに目をやった。たしかにそう言っていた。次にリョースケのその部分を見た。あたしの夫もやはりそんな主張を声高にのべていた。

「しょうがないエロ男どもねえ」

 あたしはベッドに乗った。あおむけに寝て顔を両手でおおった。あたしの頬は熱かった。きっとまっ赤に染まっているはずだ。あたしは覚悟を決めておずおずと足を広げた。ちょうどカケエに処女をあげたときみたいにだ。カケエがあたしの股間をのぞきこむ気配があった。あたしの全身がかたくなった。太腿もこわばってカキンコキンだ。

「両足を曲げてやれよイチズ」

 リョースケの声が聞こえた。でもあたしの足はかたまったまま動かなかった。そのあたしの足に誰かの手がかかった。あたしが顔から両手をどけるとスミレの手だった。スミレがあたしの足を曲げてあたしのお尻を上に持ちあげるところだった。

「ああーん! こらあスミレぇ! あたしのお尻を持ちあげないでよぉ!」

 スミレがうふふと笑みを洩らした。

「だめよイチズ。カケエにイチズのすべてを見せなさい。さあカケエ。これがイチズのなにもかもよ」

 カケエが親指を立てた。

「スミレちゃん! グッジョブ!」

 スミレがあたしの太ももをあたしの胸に押し当てて固定した。

「そんな姿勢をとらせないでよスミレ!」

「ごめんイチズ。でももうすこししんぼうしてね。いま見せなかったらカケエがまた泣くんだもん。イチズイチズって夜泣きするのよ。うっとうしいったらありゃしない。だからがまんして」

 えーんとあたしは胸の奥で泣いた。カケエにみんな見られちゃったよぉ。リョースケのバカぁ! スミレのアホぉ! カケエのどスケベぇ!

 スミレとリョースケも目を皿にしてあたしのその部分をのぞきこんだ。カケエなんか至近距離で見つめた。あたしの薄毛がカケエの荒い息でそよいだほどだ。

「もうそろそろいいでしょ?」

 あたしは股を閉じてベッドに半身を起こした。カケエがほうけた顔であたしを見た。あたしはカケエに訊いた。

「どう? 満足したカケエ?」

「う。うん」

 まだ足りないような声音だった。リョースケがあたしに真面目な顔で声をかけた。

「なあイチズ。しあげにおれの一番好きなかっこうを見せてやれよ」

 あたしはふるえあがった。

「ええーっ? あれはだめよ。あれだけはだめ。あんなの恥ずかしすぎるわ。あれを見せるのはリョースケだけなの」

「おまえの恥ずかしがる顔がおれは好きだ。最近おれの前じゃ恥ずかしがらねえからな。カケエの眼前でやっておまえの照れる顔を見せてくれ」

 あたしは顔をしかめた。カケエとスミレを見るとふたりとも期待に目を輝かせていた。エロい興味というよりエサをねだる犬の目だった。食べ物をおくれぇ。くれないと飢え死にしちゃうよぉ。そんな声があたしには聞こえた。

 あたしはしかたがなくベッドに腹這いに寝た。まっすぐにのばした足をおなかに引きつけた。背すじをそらせて股を開いた。その時点でカケエがおおと声を洩らした。カケエがあたしの足の裏からあたしを見はじめたことにあたしは気づいた。あたしの一番隠したい部分がいまカケエにはすべて見えているだろう。あたしは自分に言い聞かせた。あたしは妻としてリョースケのリクエストに応えているだけなのよと。あたしはその姿勢のまま両手をお尻にかけた。リョースケに毎夜見せる深淵をカケエにも見せてあげた。

「ねえカケエ。こことここを毎晩リョースケに見せてるのよ」

「わーおっ! 感激だよイチズ! 一番恥ずかしいところまで見せてくれるなんて!」

 カケエがのどを鳴らしてあたしのその部分に顔を近づけた。あたしの見せたくない場所だからこそじっくり見たいらしい。あたしはベッドに顔を埋めて目をしっかり閉じた。恥ずかしさに目をあけていられない。あたしは顔中から火を噴きそうだった。頬が熱くて熱くてたまらなかった。

 リョースケがそのあたしの顔を自分に向けさせた。悪趣味にもほどがある。まっ赤にほてったあたしの顔が見たいようだ。リョースケがそっとあたしにキスしてくれた。あたしは泣きそうになった。胸がいっぱいでたまらない。恥ずかしさと屈辱のうずにもまれながらもリョースケの舌は甘美だった。この姿勢でいつもみたいにリョースケを受け入れたかった。いますぐにだ。泣きながらリョースケと交わりたかった。

 そのときカケエがううっと苦しげなうめきをあげた。カケエは前かがみになっていた。スミレがカケエに寄った。スミレがカケエのベルトをゆるめた。スミレの指がカケエのズボンとブリーフを落とした。スミレがカケエの前にひざまずいた。スミレの顔がカケエのおへそを隠した。

「うぐっ! スミレちゃんっ! そこいいっ!」

 リョースケがあたしの顔をまたベッドにつけさせた。もうすこしその姿勢をつづけろ。そういう指示のようだ。スミレはカケエにあたしを見せながらカケエを満足させようという意図らしい。カケエがあたしを見てたかぶる。スミレが口でそのカケエをしずめると。

 リョースケがスミレとは別のたくらみを抱いているとあたしは気づかなかった。リョースケは舌をのばして舐める動作をカケエとスミレに示した。スミレはピンときたようだ。カケエの下半身を離れてカケエとふたりであたしに顔を寄せた。あたしはビクンと跳ねあがった。まさかそんなことをされると思わなかったせいだ。

「あーん! こらあふたりともぉ! 見るだけよぉ! そんなとこ食べちゃだめぇ! 舌を入れてもやだぁ! あたしの味を見ちゃいやよぉ! まだお風呂にはいってないんだからさぁ!」

 スミレとカケエはあたしの抗議に耳を貸さなかった。ふたりは互いの舌をからめながらあたしをしゃぶった。ふたりはあたしを唾液まみれにした。あたしの十本の指もべとべとになるまで舐められた。

 あたしはスミレとカケエがそれで満足したと思った。でもリョースケは右手の親指と人さし指で丸を作った。リョースケは左手の人さし指をその丸の中に刺して出し入れを示した。スミレは問う顔をリョースケに向けた。いいのと。リョースケがうなずいた。カケエは逃げ腰だった。さすがにそれはまずいだろ。そんな顔だった。その逃げ腰のカケエのお尻をスミレが押した。あたしはリョースケをむかえいれるポーズのままだ。そんな破廉恥なかっこうでカケエの眼前にうずくまっていた。だがあたしは安心していた。カケエはあたしを見るだけで処理はスミレにしてもらうと。

 そのあたしにスミレがカケエを押しこんだ。あたしは仰天した。

「あんっ! こっ! こらあっ! いくらなんでもそれはだめぇ! カケエっ! 図に乗りすぎよっ!」

 カケエにうしろからされているあたしにリョースケが顔を寄せた。キスをしながらリョースケがささやいた。

「いいじゃねえかイチズ。カケエに思いを遂げさせてやれよ」

「だ! だって! リョースケの前でこんな!」

 カケエが涙をあたしの背中にポタポタと落としはじめた。カケエは泣きながらあたしとしているらしい。スミレがあたしの顔の前にきた。

「ごめんイチズ。おねがいよ。カケエを受け入れてあげて。わたしじゃだめなの。カケエはイチズが好きなのよ」

 スミレも泣いていた。スミレはカケエが好きみたいだ。

「スミレ。あんたもバカね」

「ええ。わたしもカケエもバカなの」

 スミレがリョースケのズボンに手をかけた。あたしはあせった。

「こらスミレ! それはなしよ!」

「いいじゃないイチズ。イチズもカケエとしてるんだしさ。わたしもお兄ちゃんとさせてよ」

 スミレがリョースケのを引き出した。熱く口をつけはじめたスミレにあたしは嫉妬した。でもリョースケはスミレを見てなかった。リョースケの目はあたしだけを見ていた。スミレに愛されながらリョースケはあたしとカケエを見つめていた。あたしはあきらめた。わが夫が望むなら仕方がないかと。

 全裸になったスミレがリョースケの上になった。そのときだ。カケエがせっぱ詰まった声を洩らした。あたしはおののいた。

「だめよカケエ! そこにはだめぇ!」

 カケエが動きをとめた。カケエが苦しげなうめきを洩らした。

 リョースケがスミレを喜ばせながらあたしとカケエに声をかけた。

「いいじゃねえかイチズ。最後まで楽しませてやれよ。おいカケエ。そこでいいぞ。おまえの思いをイチズにぶつけな」

 あたしはリョースケにかみついた。常識がないにもほどがある。

「リョースケ! あたしが妊娠したらどうすんの!」

 リョースケがふふっと笑った。

「おれが育てるさ。おまえの産む子だろ? 誰が父親でも可愛いに決まってる。それともカケエ。イチズとの子ならカケエが育てるか?」

 カケエがうんとうなずきかけてスミレを見た。スミレはだめよとばかりに首を横にふった。

「スミレちゃんがだめだってさ」

 あたしは首をふり向けてカケエとリョースケをにらんだ。

「リョースケェ。あたしあんたの子を産みたいのよ?」

「もちろんだ。おれの子も産んでくれよ。子だくさんもいいじゃねえか。カケエの子ならおれより頭がいいだろうさ」

 あたしはすこし考えた。

「そうねえ。むちゃしない子もいいかもね。好きな女のために人を殺す息子は持ちたくないかな? あたしはすっごくうれしかったけどさ。母親としてはそんな息子はいやよねえ。息子がよその女のために殺人者になるなんてさ。うー。考えたら腹が立ってきた。文代さんはいい時に天国に行ったわよね。自慢の息子が殺人者だと知る前で」

 スミレがリョースケの上でうふふと笑った。

「でしょう? だからわたしも第一子はカケエの子種で孕みたいの。お兄ちゃんのタネだときっとハチャメチャな子ができるわ。第一子は優等生がいいわよねえイチズ?」

「かもしれないわね。まあカケエのタネでできたらあきらめて育てるとするわ。いいわよカケエ。好きなようにどうぞ。よく考えればリョースケと結婚できたのはあなたのおかげだものね。カケエのお芝居がなければリョースケはおたずね者のままだったわ。せめてもの恩返しにカケエの思いを受けとめてあ・げ・る」

 カケエが歓喜の声をあげた。

「ありがとうイチズとリョースケ! ぼく幸せだ! 愛してる! 愛してるよイチズ!」

 あたしはどう答えていいのかわからなかった。あんたが愛すべきはスミレでしょ? そう思った。そのスミレから声が飛んできた。

「イチズ! カケエに愛してるって言ってあげて! カケエを愛してるって! 嘘でいいからおねがい!」

 スミレの顔にも歓喜が見えた。仕方がないとあたしはカケエに顔をふり向けた。

「愛してるわカケエ。あたしで満足してね。大好きよカケエ」

 あたしはカケエにキスをして舌をからめた。その瞬間カケエの爆発があたしの奥を叩いた。

「アンッ! やだっ! あたしもいいっ! カケエ! カケエっ! 好きよっ! 大好きぃ!」

 カケエに舌と舌をからませながらあたしものぼりつめた。リョースケは見開いた目でキスを交わすあたしとカケエを見ていた。スミレがそのリョースケの顔を自分に向けさせた。

「お兄ちゃん! わたしにも好きと言って! わたしを愛してるって! スミレの一生のおねがい!」

「わかった。スミレ愛してるよ。おまえが大好きだ」

「妹じゃいやよ! 恋人として愛してね!」

「ああ。おまえとエッチがしたいんだスミレ! おれにおまえを抱かせてくれ!」

「ああーんっ! わたし幸せぇ! いますぐ死んでもいいぃ! お兄ちゃんのをちょうだいっ! たったいまわたしにっ!」

 スミレがリョースケの上でのけぞった。リョースケがスミレとキスをした。あたしはベッドにうつぶせに倒れながら胸をこがされた。それはあたしのよ。スミレになんかわたさない。そう歯をかみしめた。

 そのあたしとカケエにベッドをあけろとリョースケが目くばせをした。リョースケはスミレをつなげたまま持ちあげてベッドに運んだ。あたしとカケエはベッドから降りた。リョースケがベッドの上でスミレを組み伏せた。あたしは嫉妬に胸をチクチク刺されながらリョースケとスミレの和合を見つめた。カケエはよかったねと言わんばかりの目でスミレの上気した全身をながめた。カケエの目に嫉妬はなかった。ホッとした色だった。自分だけ思いをとげて申しわけないと感じていたらしい。

 スミレとリョースケの呼吸が速くなった。立ち見をしていたあたしの背後からカケエがいどんできた。あたしは顔だけをふり向けた。

「こらカケエ! 調子に乗るのもいいかげんにしてね!」

「だ。だってぇ。イチズの可愛いお尻が目の前でふりふりとゆれるんだものぉ。ぼくとまらないよぉ」

 カケエがあたしの内部を楽しみはじめた。ついさっき終わったのにまたそうなっていた。カケエがうっと声を洩らした。そのとたんスミレが目を開いた。うっとりと目を閉じてリョースケに蹂躙されていたスミレがだ。

「カケエ! もうイチズに出しちゃだめよ!」

 カケエがけげんな顔をスミレに向けた。

「な? なんで?」

「次はわたしにおねがい! お兄ちゃんとカケエのを混ぜたいの! わたしの大好きなふたりのをわたしの中に感じたい! だからイチズよりわたしにね!」

 なるほどとあたしとカケエは同時にうなずいた。カケエがあたしを駆るペースを落とした。スミレとリョースケの頂上にあわせてあたしにくれるつもりだったらしい。あたしはそっとカケエにお尻を突き出してカケエにあたしをプレゼントした。カケエがあたしのすみからすみまでをじっくりと探索しはじめた。あたしもカケエの形をゆるやかに愉しんだ。

 スミレが下からリョースケに終わりを求めた。

「お兄ちゃんっ! わたしもうだめっ! わたしを愛してっ! 愛してるって言ってっ!」

 リョースケが応えてスミレを押しあげた。

「ああ! 愛してるよスミレ! おまえが大好きだ!」

「ああーん! うれしいよぉ! わたし幸せすぎるぅ! 大好きなの! お兄ちゃん好き! 愛してるぅ!」

 あたしとカケエはおだやかにつながりながらスミレとリョースケがのぼるのをながめた。あたしの胸から嫉妬はもう消えていた。トロトロの笑顔を見せるスミレによかったねとあたしは心の中で声をかけた。

 リョースケがスミレに終止符を打ったあとだ。あたしはふり向いた。一部分をつなげたままカケエとくちづけを交わした。

「カケエ。満足した?」

 カケエがかみしめるようにゆっくりとあたしを味わいながらあたしに甘い息をかけた。

「うん。これ以上ないってほどさ。ありがとうイチズ。ところでさ。イチズはぼくのでちょっとくらいよかった?」

 あたしはうなずいてニッコリとカケエに笑いかけた。

「ええ。リョースケのとはちがうよさがあるわよ。あたしの初めてのものですものね」

 カケエが満足げな笑みを浮かべたのであたしはまたキスをしてあげた。あたしの内でヒクヒクとカケエがうごめいた。あたしはカケエに媚びた誘いを投げてみた。

「あたしに思いをくれてもいいのよカケエ」

「ううん。ぼくがまんするよ。スミレちゃんがぼくのを欲しいって言うから」

 リョースケがスミレを離れてあたしとカケエに寄った。まだ結合を解いてないあたしは立ち姿のまま頬に手をあてて顔を隠した。恥ずかしさに死にそうだった。夫の目の前で別の男とうしろからひとつになっているだなんて。

 リョースケが不思議そうな顔であたしとカケエをながめた。どんな声をかけていいかわからないらしい。それはそうだと思う。自分の妻が親友と結合中なわけだから。

 そのあたしたち三人にスミレがベッドから声を投げてきた。

「お兄ちゃん。今度はわたしとカケエのを見てよ。わたしお兄ちゃんに見て欲しい。どうやってわたしがカケエに可愛がられてるかをね。わたしお兄ちゃんの目の前でカケエを受け入れるわ。カケエとひとつになってるわたしを見てねお兄ちゃん」

 スミレがカケエに『来て』と両手をさしのべた。カケエがあたしとの結合を解いてベッドに乗った。リョースケがうしろからあたしの肩を抱いてカケエの代わりにあたしを埋めた。

 カケエがスミレの上からキスをはじめた。あたしとリョースケはベッドのわきで溶けあいながらスミレとカケエを見つめた。スミレの目はあたしとリョースケにだけ向けられていた。カケエとキスをしながらもあたしたちを見た。そのくせスミレはカケエを全身で感じていた。スミレの手がカケエの背中で組み合わされた。スミレがカケエをギュッと抱き寄せた。

「ああんっ! いいよっカケエっ! お兄ちゃんのとカケエのをわたしの中で混ぜてっ!」

 スミレがあたしたちに目でうながした。イチズたちもそうしなよと。リョースケがあたしの耳に声を吹きこんだ。

「おれたちも混ぜてみるかイチズ?」

「ええ。あたしもカケエとリョースケのが同時に欲しい」

 あたしはリョースケにお尻をゆだねた。リョースケがすぐあたしに命の素をそそいでくれた。カケエもスミレを上から押しつぶすように思いのたけをスミレに吐き出した。

 あたしはリョースケにキスをねだりながら訊いた。

「スミレがカケエに愛されてるのを見てどう思った?」

 リョースケが苦い顔をした。

「娘を嫁にだす父親の気持ちかな?」

「あら。娘とやっちゃった父親の心境じゃないわけ?」

「こら。それだとおれは鬼畜じゃねえか」

 あたしはあきれた。六十人以上の女と関係をつづけてスミレとまでいたした男がなにをいまさらと。

「でも妹とやっちゃったわけだしさ。あたしそれを聞いたときすっごくショックだったわよ」

「ほぉ。妹とやるような男にいやけがさしたか?」

「いいえ。絶対やらないと思ってた女とやっちゃったのがショックだったの。なんでそうなのって感じだったわ。スミレとだけはやらないって安心してたのにさ」

「負けたって思ったのか?」

「ええ。スミレが相手じゃ勝てないってね。スミレが結婚してって言えばリョースケは断れなかったでしょ? ねえスミレ。どうしてスミレはリョースケに結婚してってたのまなかったの? スミレはリョースケが源馬刑事に撃たれるお芝居の直前にも一度抱かれたんでしょ?」

 ベッドでカケエと甘い余韻のキスを交わしていたスミレがあたしを見た。

「お兄ちゃんは泣きそうな顔でしかわたしを抱いてくれなかったからよ。わたしといても楽しそうな顔はしてくれないの。むりやり結婚しても一生笑ってくれないんじゃわたしは泣いちゃうわ。お兄ちゃんはわたしとひとつになるとすっごくつらそうだったの。だからわたしあきらめたのよ」

「でもさっきつながってたじゃない? あれはちがうの?」

「そうよ。ちがうわ。お兄ちゃんはイチズといると楽しいのよ。だからわたしイチズの前でお兄ちゃんに抱いてもらおうと思ったの。それならお兄ちゃんも楽しい顔をしてくれるってね。思ったとおりだったわ。イチズがいるとお兄ちゃんはわたしとひとつになってもいやな顔にならないの。とっても悔しいけどイチズのおかげよ。すっごくすっごく悔しいわ。でも初めてお兄ちゃんがわたしとして楽しそうだったの。イチズの見てる前だとお兄ちゃんはなにをしても幸せみたい。わたしはお兄ちゃんが笑ってるのが好き。イチズのおかげでカケエとも最高だったわ。カケエもイチズとひとつになれて至福のきわみみたいよ。わたしとつながってこんな楽しそうな顔のカケエは初めてなの。ありがとうねイチズ」

「どういたしまして」

 あたしはそれ以外に答えようがなかった。あたしはあなたとカケエを楽しませるための大人のおもちゃかいと。

 熱気が去ったあたしはあらためて腹が立った。あたしはリョースケをにらみつけた。

「でもなんであんなことをさせたわけ? あんたの前でカケエに抱かせるだなんてひどすぎるわ。離婚ものの仕打ちよ」

 リョースケが苦い顔であたしを見た。

「おれが見てねえところでおまえとカケエがつながった。そう思うと胸が痛くてたまらねえ。それよか目の前でしてもらったほうが楽だ。おまえはおれの時よりあえいでなかったものな。安心したぜ」

 あたしも安堵した。

「なんだ。やきもちを焼いてたの。それであたしにカケエとさせたわけね?」

「まあそうだ。おまえとカケエがおれの知らないあいだに楽しんだ。そう思うと眠れなくてよ。目の前でつながってもらってちょっとホッとした。あんなふうにやったのかってな。男と結合中のおまえの部分もよく見えたしよ。可愛かったぞ」

「でもどうだったの? あれでやきもちが収まったわけ? もっとひどくならないの?」

「安心した一方で胸が黒こげだぜ。いまも口の中が苦いぞ」

「でも一部分はそうなった?」

「おまえのだぞ。ならねえほうがおかしいだろ? カケエと三回したんだよな? どんなかっこうでだった?」

「ふふふ。聞きたい? いいわよ。教えたげる。一回目はあたしが下よ。二回目はうしろからなの。三回目はあたしが上ね。三回目はあたしもピクピク来たわ。どう妬ける?」

「むちゃくちゃ胸が苦しいぞ」

「うふふ。あんたの目の前で一回目から再現したげよか? カケエのが三回分あたしにたまるのよ? リョースケは怒らずにがまんできるかなあ?」

「もう怒ってるぜ! イチズ! おまえはおれの妻だぞ!」

 あたしはうれしくなってリョースケに抱きついた。

「そうよ。あたしはリョースケのものなの。ほかの男にやらせちゃだめじゃない。バカね。好きよリョースケ。愛してるわ」

 あたしはリョースケの口に口をつけた。いちゃつき始めたあたしたちにスミレが声をかけてきた。

「ねえイチズ。わたしもうひとつおねがいがあるの」

 あたしはスミレに顔を向けた。

「なあに? ここまでしてあげたのにまだして欲しいことがあるの?」

「うん。わたしお兄ちゃんとイチズのが見たい。いつもどうやってしてるの? 見せてくれない?」

 あたしは眉を寄せた。この変態義妹はぁと。

「ほんのすこし前にやってたわよ。見てなかったの?」

「見てたわよ。しっかりとね。でも軽くだったでしょ? わたし本気のお兄ちゃんが見たいの。イチズも満足してなかったじゃない。ベッドでくり広げるふたりの本気を見せてよ。さっきお兄ちゃんがわたしをベッドで心ゆくまで満足させてくれたみたいにさ」

 あたしはリョースケと顔を見合わせた。この変態カップルはどこまでエロいのよと。

 リョースケが肩をすくめた。仕方がねえなと。どうやらリョースケもスミレに異論がないらしい。たしかにいましがたのはいつもよりあっさりだった。いまのいちゃつきでリョースケのものも復活中だ。

 リョースケがあたしをお姫さまだっこした。あたしをベッドにおろしてリョースケがあたしにおおいかぶさった。リョースケがキスをしながらあたしの股を割った。カケエとスミレはあたしの両足の親指と親指のあいだからあたしとリョースケをのぞきこんだ。すっごく恥ずかしかった。そんな位置から見つめないで。そうあたしは自分の顔を手でおおった。

 でもすぐにあたしはカケエとスミレの存在を忘れた。あたしはリョースケにしがみついた。幸せにむせびながらあたしはリョースケになぶられた。泣きながらあたしはリョースケに舌をからめた。これが欲しかったの! そうあたしは実感してリョースケにむしゃぶりついた。カケエとつながってくすぶった不満をリョースケが一掃してくれた。やっぱりあたしの夫はリョースケひとりよ! そんな思いがあたしにあふれた。胸におさまらなかった気持ちはあたしの目からこぼれた。リョースケが好き。大好き! あたしはそういう涙でシーツを濡らした。燃えあがったあたしは両手と両足でリョースケを抱きとめた。リョースケのすべてを全身で受けとめた。あたしは熱狂のうずに飲まれた。リョースケも汗を流してあたしを楽しんでくれた。あたしとリョースケはお互いの名前を呼びあいながら頂点にたどりついた。

 あたしの荒い息がしずまりはじめたころだ。ふとわれに返るとスミレがあたしの顔を見ていた。そう言えばとあたしはスミレとカケエを思いだした。夢中になりすぎてすっかりふたりを忘れていた。恥ずかしいとあたしは顔をしかめた。でもスミレは興味本位の目ではなかった。スミレはカケエとつながるのも忘れてぼうぜんとあたしの顔を見ていた。

「うわあーっ! すっごーいっ! イチズってあんなに淫らだったのね? わたしとても勝てないわ。エロスの化身みたい。カケエはどう思う?」

「ぼくも同感だよ。ぼくじゃイチズをあんなに乱れさせられない。やっぱりイチズはリョースケのものかぁ」

「そうよねえ。あれを見ちゃったらわたしとカケエの行為なんて小学生のお医者さんごっこだわ。わたしお兄ちゃんがエロスの帝王だと思ってた。でもちがったみたい。イチズがエロエロの女王さまだったのね」

 あたしは苦い顔をスミレに向けた。

「人の行為を間近で見といてその言いぐさはなに? それほめられてるとはとうてい思えないんだけど? スミレあたしに喧嘩を売ってる?」

「いいえぇ。お義姉さまぁ。めっそうもございませんわ。本日はけっこうなものをお見せくださいましてわたし感謝しておりますの。あれを見ちゃったらわたしでお兄ちゃんが満足してくれないのがよーくわかりました。あんなエロエロなのはカケエのAVコレクションでも見たことないわ。イチズとお兄ちゃんがおカネに困ったらふたりでAVに出れば? おカネを払ってでも見る価値のある迫真の行為だったわよ?」

 あたしはムカッときた。

「他人に見せるものじゃなーい! エロエロ言うな!」

「だってぇ。すごかったんですもの。ねえカケエ?」

「うん。ぼく圧倒されたよ。ごめんイチズ。ぼくってリョースケにはとうていおよばない男だったんだ。なのにきみを幸せにできるとかって大口たたいちゃってさ。猛省しました」

「なにそれ? まるであたしがエロエロキングみたいじゃない?」

 スミレがあたしの肩に手を乗せた。

「いえ。そのとおりよイチズ。わたしもうお兄ちゃんをあきらめる。イチズに勝てないってはっきりしたわ。でもさ。お兄ちゃんの精子はちょうだいね」

「あげない! 絶対にあげなーい! あたしをエロエロだなんて言うやつにあげるものですか! あたしはリョースケといつもの行為をしただけよ! あんたたち目がおかしいんじゃないの!」

 スミレがカケエと顔を見合わせた。スミレが首を横にふった。

「ねえお義姉さま。あれがいつもの行為ならあなたはすごいわ。今度録画してAVと見くらべるべきよ。わたしあんなお尻のふり方はできない。お兄ちゃんはすっごく幸せ者だと思う。女は顔より腰なのね。わたしももっと練習してカケエを喜ばせてあげたいわ。きょうは本当に貴重なものを見せてくれてありがとうお義姉さま。本気でやってくれて感謝してるわ。からかってるんじゃないわよ。わたしの本音なの」

 カケエがスミレの肩を抱いた。

「そうだよイチズ。いまのを見せてもらってぼくきっぱり決断がついたよ。ねえスミレちゃん。ぼくがお母さんをおさえるからさ。ぼくと結婚してくれる?」

 スミレが即座に答えた。

「だめ」

「ええーっ? ひとことかい? それはないよぉスミレちゃん」

 あたしもそう思った。せめて二分間は考えてやれよと。

 スミレがカケエの胸を指でつついた。

「だめなのは結婚じゃないわ。『スミレちゃん』って呼ぶのがだめなのよ。スミレって呼び捨てにしてね。わたしお兄ちゃんにふられてからずっとカケエのものよ。いまさらカケエをふるわけがないでしょ? わたしに気をつかわずにわたしをカケエの女にしてよ」

 カケエがスミレに抱きついた。

「スミレちゃん!」

 そこがカケエのだめな点ね。そんな顔でスミレがカケエを抱き返した。案外うまく行きそうねとあたしはリョースケを見た。リョースケは複雑な表情だった。あたしはふふふとリョースケに笑いかけた。

「娘を嫁にやる父親の心境?」

「ああ。そんな感じだ。スミレがカケエと結婚するとなるとさびしいぞ。スミレとカケエがセックスフレンドのときはそう思わなかったのによ」

「スミレが大人になったって思うから?」

「そうかもな。ついこないだ幼稚園児だったスミレが花嫁衣装を着るかと思うとやるせねえ。だがスミレが典江さんにいびられねえかは心配だな。どうすりゃいいんだろう?」

 あたしは首をかしげた。

「典江さん対策ねえ? そればかりはなんとも」

 スミレがカケエとキスを交わしながらあたしとリョースケを見た。

「大丈夫よお義姉さまとお兄ちゃん。わたしなんとかやってみせるわ。それより桜子になんて言おう?」

 あたしは意外だった。

「あら? 桜子はあなたたちが結婚するのに賛成なんでしょ?」

「でも留守中にわたしたちが抜け駆けした。そう怒るかも」

 リョースケが笑った。

「ははは。正徳院がそんなことで怒るかよ。ちゃんとおまえたちの結婚を祝ってくれるさ。自慢じゃねえが正徳院の好きなのはおれだ。カケエじゃねえぞスミレ」

「そういやそうね。カケエはおまけっていつも言ってるわ」

 カケエが情けない顔でスミレを見た。

「スミレちゃーん」

「だーかーらー。スミレちゃんはやめてっての。わたしの夫になるんでしょ? スミレって呼びなさい。これは命令よカケエ!」

「ごめん。スミレ」

 あたしとリョースケは顔を見合わせた。スミレなら典江さんといい勝負ができそうだと。

 その夜あたしたちは四人そろってダブルベッドで寝た。カケエとスミレがあたしとリョースケを求めたせいだ。あたしはスミレから妊娠阻止薬をもらった。これでカケエの子種で妊娠はなくなった。スミレはカケエのこのみだと言って自分とあたしを並ばせた。カケエはふたりの女を交互に愛するのが好きらしい。リョースケまでが調子に乗ってカケエと交代であたしとスミレにいどんだ。あたしとスミレはふたりにいちいちタイミングをあわせて押しあげられた。あたしたちは四人同時に舌をからめ合った。あたしは三人から一度に舌を吸われた。そのあとあたしは三人に全身を舐めまわされた。メロメロになるまで夫と義妹と義弟に舌で可愛がられた。

 あーん。あんたたち。なんでそんな時だけ仲がいいのよぉ?

 カケエとリョースケは尽きることなくあたしとスミレを求めた。男ってつくづくエロい。そうあたしは感心した。もっともあたしとスミレもふたりにわけへだてなくサービスしてあげたけど。

 カケエはあたしにそそいで満足して寝た。スミレはリョースケに愛されて頂上からストンと眠りに落ちた。あたしとリョースケは最後につながってふたりそろって前後不覚におちいった。

 朝になった。気づくとスミレがリョースケの朝一番をもてあそんでいた。あたしはカケエにさまざまな部分をくまなくながめられていた。あたしは断言したい。あたしがエロエロなんじゃない。この変態カップルこそエロエロだと。

 あたしはその朝カケエの望みを訊き出した。この際だ。カケエがあたしになにをして欲しいのかをあたしは知りたかった。あたしはカケエのエロさにあきれた。真面目な顔をしてこんなエッチなことを考えていたのか。そうあたしは顔をしかめた。リョースケもあきれ顔でカケエの説明を聞いていた。カケエにくらべるとスミレの願いはささやかだった。リョースケに『愛してる』と言いつづけてもらいたがった。リョースケはうんざりしそうなほど『愛してる』『好きだ』とささやいてスミレと身体を重ねた。あたしはスミレがうらやましかった。今度あたしもあれをやってもらおう。そう決めた。

 あたしはリョースケの見ている前でカケエの妄想のことごとくを現実に変えてやった。その中にこんなのがあった。あたしはセーラー服でスカートの下に下着をつけてない。照れながらカケエが希望を語った。そのかっこうで逆立ちをして欲しいと。

 なにを考えてるんだこの変態は? あたしはそういぶかった。あたしには理解できないエロさだった。スミレも初耳だったらしい。あきれ顔をしていた。

 カケエはあたしに全裸で逆立ちをさせたいのではなかった。セーラー服でノーパンのあたしに逆立ちをさせたいそうだ。高校を卒業してずいぶんになるあたしはセーラー服を持ってなかった。あたしは全裸からわざわざスカートとTシャツをつけてカケエの前に立った。全裸を見るよりスカート姿を見たほうがうれしそうだった。なんて変態なのだろう。でもリョースケも目を輝かせていた。わくわくしているらしい。男ってやつはまったく。

 あたしは床に手をつけて逆立ちをした。あたしの両足首をカケエが持ってあたしをささえた。スカートがきれいに胸まで裏返って落ちた。あたしの下半身は丸見えだ。隠すものはなにもない。あたしの両足をつかむカケエは真上からあたしのその部位を見た。もちろんと言うべきか。カケエは真剣な顔であたしをながめまわした。リョースケも楽しげにのぞきこんだ。

 あたしは頭に血がのぼるわ恥ずかしいわで朝も早くからさんざんだった。でも男ふたりは満足したみたいだ。スミレは男ふたりのものに交互にキスをして満ち足りた顔をあたしに向けた。

 そのあともあたしはカケエの下半身をうずかせる要望に応えてあげた。リョースケもカケエと同じことをねだる顔だった。あたしはリョースケの目を意識しながらカケエの願いどおりの女を演じた。リョースケにする以上の行為をカケエにしてあげた。最後にあたしはカケエの思いをあたしの女で受けとめた。カケエがとろける瞳で『愛してる』と告白してくれた。カケエは泣きながらあたしに欲望をゆだねた。最後の思いが尽きるまであたしの奥に絞りつづけた。カケエは幸せ泣きでリョースケは悔し泣きといった顔だった。あたしは胸の奥で舌をだした。ざまあみろ。妻を別の男に抱かせるからよと。

 でもさリョースケ。カケエが帰ったらリョースケにもあたしをあげるわ。楽しみに待っててね。あたしはそう思った。しかし楽しみに待つのはあたしかもしれない。リョースケとエロいことをするのがあたしは大好きだ。カケエのエロい妄想はリョースケも好きみたいだった。きっとリョースケも楽しんでくれる。そう思うだけであたしは身体中がジンジンとほてった。

 そんなしだいでカケエとスミレはあたしとリョースケを堪能して帰路についた。

 あたしとリョースケはカケエとスミレを駅に見送った。あたしは家に帰るなりリョースケを押し倒した。あのふたりのエロさが伝染したみたいだった。あたしはリョースケに馬乗りになってリョースケと舌をからめた。リョースケにカケエとひとつになったときの不完全燃焼を一気に解消してもらいたかった。慣れない酒でゆがんだ舌をいつもの酒で正常にもどして欲しかった。あたしはまっ白な燃えかすになりたかった。身も心も燃やしつくして不死鳥のように灰の中から生まれ変わりたかった。だから初めてリョースケにおねだりをした。いつもあたしは受け身だった。この時ばかりはあたしからリョースケを露骨に求めた。リョースケもわだかまっていた思いをひとしずく残らずあたしに吐きだした。あたしはリョースケの思いを受けとめた。同時にリョースケはあたしの不満を胸から完全に消してくれた。リョースケ以外の男に抱かれたモヤモヤ感をだ。

 終わったあとあたしは思った。たしかにあたしとリョースケの行為はカケエとスミレのものより濃厚かもとだ。

 あたしはカケエを思い浮かべた。たまにはカケエとするのもいいかもしれない。カケエとするとあたしは思い知る。リョースケがどれだけ好きかをだ。考えてみればカケエに処女をあげなければあたしは悟らなかっただろう。リョースケをこれほど好きだと。カケエには悪いがカケエに抱かれるたびにあたしは確認できるようだ。リョースケこそがあたしのただひとりの男だと。カケエとではこの一体感は味わえない。カケエともそれなりのよさはあった。だがあたし自身が溶けてなくなる幸福感はリョースケとだけだ。

 あたしはまたリョースケに抱きついた。

「好き。愛してる」

 リョースケがあたしに口を寄せた。いつまでいちゃついていてもきりがない。でもあたしにリョースケのくちづけはこばめなかった。とうぜんと言うべきか。そのままあたしとリョースケは再度溶け合った。カケエとしたことであたしはリョースケとさらに接近できた。リョースケもスミレとつながったためかあたしをより求めるみたいだ。あたしはカケエとスミレに感謝した。嫉妬にこげた胸もふくめてあのふたりはあたしとリョースケに次なる世界を開かせてくれたようだ。

 その夜カケエがお礼の電話をかけてきた。最初カケエは口ごもって途切れ途切れにしかしゃべらなかった。まずいことをしたと恥じているらしい。あたしは思いきってカケエとしてよかったと正直に感想を聞かせた。するとカケエの声が明るくなった。

「ぼくらこそイチズとリョースケのおかげで先に進めたよ。ありがとうイチズ。本当に感謝してる」

 あたしたちがカケエとスミレの結婚式に呼ばれる日も近いようだ。もっともリョースケは表立って出席はできないだろうけど。

 あたしはリョースケの腕の中で未来を想像した。リョースケとふたりで朝から晩まで船に乗る。一日中魚を釣る。そのうち子どもができる。日々が怒ったり泣いたり笑ったり悲しんだりだ。涙と笑顔を交互に月日がすぎる。やがて子どもが結婚して孫が生まれる。海はいつもと変わらない。

 あたしはリョースケとそんな道を歩きたい。きっとあたしは流れ星を見るたび好きと口ずさむ。あたしは死ぬまでに何回好きと言えるだろうか。


                                 〈了〉


 長編が好きだ。読むのも書くのもだ。そのためについ長くなる。書き終わると後悔する。どうしてこんなに長くなったのかと。こんなに長い物語を読んでくれてありがとうと思う。

 せめてもの感謝の気持ちをこめてエロい部分を追加した。みなさんエロが好きなようだ。いかに十八禁ではなくエロくするかに気をつかったが成功したかは不明だ。書き手としてはおもしろい物語になっているように祈るだけだ。


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