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事の発端

 学校というのは憂鬱だ。


 嫌でも他人との関わりが生まれてしまう。


 コミュニケーション能力を育むためにも学校は適解の一つだと誰かが言った。

 だとしたら俺は学校に入学するという選択は間違いだったということになる。

 いや、間違いなんだ。多分、ミスった。

 社会的な立場とか気にするんじゃなかった……。

 就職で苦労しないためにー、とか、中卒って印象悪くね? なんて。そんな今考えたらちっぽけな理由で高校への進学を決めた。


 今からでも退学すればいいじゃないかって?

 そんなことしたら親父に迷惑がかかる。

 俺は社会的には働ける年齢だけども、学費を払っているのは俺ではなく、父子家庭でありながら俺をここまで育ててくれた親父だ。今は単身赴任をしていて最近声も聴いていないが。

 

 今やめたら、きっと親父は悲しむだろう。

 単身赴任が決まった時に、俺に「さびちいよぉ…」とか気持ち悪いこと言いながら半泣きで俺に泣きついてきたあの親父だ。間違いない。

 

 なんにせよ、ここまで俺を育ててくれた親父にこれ以上負担を増やしたくない。

 だから毎日が鬱々でも俺は学校に通い続ける。

 楽しみなんて何一つとしてなくてもだ。



 一つだけ救いがあった。

 それは教室での俺の席が右端の列、一番前と言いうことだ。

 

 俺の相川(あいかわ)という苗字はあの出席番号1番筆頭の「青木」よりも番号が早くなるという数少ない苗字だ。

 故に、新学期が始まったばかりで席順が強制的に出席番号になるこの時期。俺は勝ち組よりの席に座っている。

 何がいいかって? それはな……。


 基本的に誰も寄り付かないのだ!


 一番後ろの席というのは、教師がよく行動する前側から離れてることもあり、よくクラスメイトどもが群がっている。

 つまりぃぃ!! この一番前というのは、人との関わりを極限にまで嫌う俺にとっては最高この上ない席であった。

 ……、教師の死角だから、たまに「いたのか……」みたいな目で見られること以外は……。

 

 鐘がなる。授業が始まる。休み時間が終わる。放課後が訪れる。

 

 いつもと何ら変わらない毎日。

 どっかの「俺TUEEEEE」系の主人公が気だるげに「これが俺の求める日常」とか言ってそうな、誰でも過ごしたことある普通の日常。別に嫌いじゃない。

 

 席を立つ。

 あいにくと、声をかけてくれるような知り合いも、一緒に帰ろう、だなんて約束をする仲がいいやつもいない。

 クラスメイトで俺がいなくなってもきっと気づきはしないんだろうな。

 寂しいと思ったこともないし、これが特別とも思ったことはない。

 勝手に帰ったって、クラスの空気は変わらない。

 そんなちっぽけな存在でも俺は満足だ。


 ふと、帰路の途中で気づいた。冷蔵庫の中が空っぽになっていたはずだ。

 唯一の肉親である親父が単身赴任で家を空けているのだから、家事やもろもろをやっているのは俺だ。

 生活費は毎月親父から銀行に振り込まれる。

 高校生だから自分の好きなことに使いなさい、と余分に振り込まれてはいるが浪費癖のない俺は手を付けず、たまる一方だ。

 

 途中、近くの小さなスーパーで買い物をして家へ向かう。

 このスーパーのいいところはセルフレジが導入されていること。

 店員とのコミュニケーションを避けるという点で俺の評価は鰻上りに急上昇だ。

 チェーンでもないのに何でそんなのが導入されてるかはわからんが、俺は逆にそれがありがたかった。


 家に着く。

 鍵を開けても向かい入れてくれる人は誰もいない。

 暗い玄関を通りリビングに買ったものを置いておく。

 人肌がない家というものはこんなにも哀愁漂うのかと、最初のころは思ったが今はもう慣れっこだ。

 誰もいないことに違和感を覚えなくなったほどには長い事こんな生活が続いている。

 だが、その分この誰もいない家というのは俺にとっては都合のよすぎる場だった。

 人との関わりを極端に嫌う俺の安らぎの場。一番安心できる場所。

 今更親父が帰ってきたとしても追い出してしまうかもしれない。

 そう思ってしまうほどには居心地が良い。まあ追い出すのは冗談だけど。

 

 そろそろ夕飯の支度をしよう。

 買ってきたものを片付けて早速自炊に取り掛かる。

 それほど時間もかからず食卓に並んだ料理を見て一人満足した。

 いただきます、という言葉も俺以外に発するものはいない。

 いたら心霊ものだし、そんなん発狂して家飛び出す自信がある。

 

 食べ始めて数分、静寂を破るように俺が発した音じゃない音が家に響いた。

 テーブルにおいた俺の携帯が着信を知らせていた。

 主を見ると親父だった。

 一瞬、出るのをためらうが仕方なく応答ボタンを押す。


「もしも、」

「よおぉ、元気してたか勇柚(ゆうゆ)! 寂しくて泣いてたんじゃないか? うん?!」


 俺はとっさに耳から携帯を離した。耳がキーンってなってる。

 

 応答してすぐに大声出すもんじゃない。

 だがそんな俺の文句など知る由もない親父はいつにもましてハイテンションでお構いなしに続ける。


「ん、もしかして飯食ってたか? 悪いな、邪魔して。あとで折り返しでもいいぞ」


「急に謙虚さを見せんな、気持ちわりぃ。どうせ俺に今言いたくてうずうずしてたんだろ?」


「まあその通りだ! 折り返しの提案は飲む気なかったしな!」


 ガハハハと豪快に親父は笑った。

 飲む気ねえならなんで提案したんだよ。


「取り敢えず聞いてくれや。父さんなあ、最近BARで飲むようになったんだ」


 心底興味がない話題を話し始めた。

 

 知らねぇよ、BARで飲んだかそうでないかなんて。


「興味ないから本題話せよ」


「聞いてくれって言っただろ? 前置きあるほうがわかりやすいんだよ。 

 その最近通うようになったBARでな、女性と知り合ってな。毎晩話をするようになったんだ。それで」


「じゃあな、親父。切るからな」


 くだらないBARの話とか聞きたくない。

 俺はそのまま通話を終わらせようとしたのだが、耳に入ったその言葉に俺は目を見開いた。

 

 俺は時が止まるとはこのことかと実感した。


「父さん、その人と結婚することになったんだ!」


 意気揚々と告げた親父の言葉。

 

 困惑している。混乱している。


 いま、こいつはなんて言ったのか?


「ケッコンスルコトニナッタ?」


「ああ、そうだ。結婚することになった!」


 ケッコン……、ケッコン、血痕。


「血まみれなのか?」


「は? 急にどうした?」


 え、じゃあ、ケッコンって……。


 ……、………………。


 ……、え? あ。


「結婚!!??」


 最近で一番の大声を出した。


 結婚だって!?


「結婚って、あの結婚か? あの、将来を誓い合うあの……」


「そうそう。その結婚だ。血みどろじゃないぞ」


 俺は数秒フリーズした。

 

 待って理解が追い付かない。


 え、結婚したのか。親父が?

 信じ難い。有り得ない。

 明日は槍でも降るのか。

 な、なら鉄製の傘を持っていかないと……? ……? 何言ってんだ。


 頭が理解を拒む。うまく状況がわからない。

 ケッコン、結婚。親父の結婚相手は。

 そこで俺は気づいた。

 結婚するってことは相手がいるってことで……。

 俺は至って冷静に次の言葉を発した。


「え?」

 

 驚きから来た、え? じゃない。疑心暗鬼からきた、え? だった。

 だってそれってまさに、


「それ騙されてんじゃないの?」


「シンプルに失礼じゃないか?」


 いやだって、現実味なさすぎるし。


 でもおかげで、冷静さを取り戻せた。


 それに、結婚詐欺とか、もしくは、実は店員さんでそんなつもり一切なく、サービスの一環として対応してだけなんじゃないか。

 つまるところ騙されてるんじゃないか。

 ……、また、同じ出来事が引き起こるんじゃないか。


 気がかりなことは多くある。

 だからネガティブな発想がはかどってしまう。

 

 マイナスな思惑が飛び交う。

 それは当然だった。


 俺家庭は父子家庭だ。つまり、一度離婚している。

 俺が父方の息子になっていることを考えれば、母親を見限ったという結論にたどり着く。

 

 親父は俺の母親に捨てられた。あいつは不倫していたのだ。

 

 今でも覚えている。母親が出ていったあの日。

 聞くに堪えない罵詈雑言を親父に言い放ったのち、あの女は家から出ていった。

 身に染みるような静寂の中、親父は何ともないぞ、というかのように当時小学生だった俺の頭をなでてくれた。

 

 あの時の親父の顔は忘れたくても忘れない。

 怒りでもない、悔しさでもない。何とも言えない寂しさと、俺に向けた取り繕った笑みは親父がもう女と関わりを持たないだろう、なんて考えを悟るには十分だった。


「おいおい、何言ってんだ。結婚届は提出済みだし、こっちでもう同棲始めてるんだ!」


 嬉しそうに、いや少し恥ずかしそうにそう言った親父の頬が緩んでいることは想像にたやすかった。


「高額請求とかには気をつけろよ。俺たち金取られたら終わりだぞ」


 どの家庭もそうだろ、と言ってから気づく。


「そんなカツカツのところに詐欺する方が馬鹿だろ」


 確かにそうか。その通りだ。

 だからって油断していいことはないが。

 

 またガハハハと笑いながら、でもいつもの豪快さとは違う。どこか気持ちが高ぶったようなそんな笑い方を俺は初めて聞いた。


「別に親父がどうなろうと構わないけど」


「構えよ、唯一の肉親だぞ?」


「俺に被害は出さないでくれよ? 死ぬときは豪快に一人でやってくれ」


「おい、オレたち家族だろぉぃ?!もっと心配の言葉とかないのか?」


「今までありがとうございました」


「もうそれ事後なのよ。父さんいっちゃった後だからそれ」


「え、生きてんの?」


「死んでほしいの?」


「それもまた一興」


「全然よくねぇよ。お前まだ働いてもないのにどうやって生きていくんだ」


「ふむ、確かに。じゃあ、入金ヨロ」


「財布じゃねぇよ? お前の。……なんだこの頭の悪い会話は。はあ、なんか疲れたわ」


「どうした、何があった」


「お前のせいだ、お前の」


 はてなんのことか。


 俺の親父がこうして連絡を寄越してくるのは珍しいことだ。

 

 それほど今回に事が嬉しかったのだろう。

 

 突然なことには違いないが。


「まあ取りあえずはそういうことで。言いたいことは言えたし、切るからな」


「ああ、じゃあな」


 突然の赴任先での結婚、か。


 現実味が薄いのは変わらないけど、どうやら親父は本当に結婚したらしい。


 ただ、親父が結婚したことで今の俺の生活がどうこうする様子はなさそうだ。


 この様子だと奥さんはしばらく親父の下で暮らすんだろう。

 

 だったら、俺には関係ないところだ。


 強いて言えば、帰ってきた時だが、いつ帰ってくるかもわからないなら、そんなことは今考えなくてもいいこと。

 俺はいつも通りの毎日を過ごしていけばいいわけで……。


「ああ、そうだ。今日はこれが言いたくて連絡したんだった」


「まだなんかあんの?」


 もう切ろうかと思っていたが、結婚したことの報告以外の本題があったらしい。

 一体何だというのか。


「奥さん、神山かみやまさんと言うんだが、一人の娘がいるそうなんだ」


 奥さんの名前、神山さんって言うんだ。何だか神々しい名前だ。


「で、その娘さんがどうした」


「オレは今とは違う場所にまた赴任することになりそうなんだ。この感じだと神山さんたちと一緒に赴任するのは流石に費用が掛かりすぎるんだ。それに娘さんは高2だから何度も転校させるわけにはいかない」


「え? ちょ、ちょっと待ってくれ。その娘さんは俺と同い年なのか?」


「そこ重要? 娘がいるっていう方が重要じゃないか?」


「重要だろ。いつかは対面しなきゃいけないんだぞ。聞いておいたほうが心の準備ができるだろ」


「何の心の準備だ」


「心臓発作が起きるかもしれない」


「別にお前に向かって娘さんがファンサでもしてくれると思ったか? いつからお前はアイドルオタクになった」


「なった覚えはないし、そんな夢想的な思考してねぇよ」


 とは言いつつも、いったん考えてみるか。


 ……………………………………………………。


 ……、突然親父が家に帰ってきて、奥さんと娘さんが挨拶するんだ。


 奥さんの方は普通だ。よろしくお願いします。と、俺のイマジナリー神山さんは言った。


 で、娘さんはどうだ。


 フリッフリのワンピースをきてクルリとその場で一回転。


 俺を見ながらバチコーン、とウインクを決めるのだ。


「どうも~。娘さんっでーす!」


 元気ハツラツと言った声でそういうのだ。


 冷たい風が俺の前を通り過ぎた……。


「……胸焼けしそうだ……」


「急にどうした」


 コッテコテすぎて胃が痛い。


 せっかく飯食ってたのに食欲なくなった。


 イマジナリー娘許さん。


「ダイジョブだ。ちょっとだけ脂っこい可愛いを摂取しただけだ……」


「だいぶこじらせてるな……」


 何やら変な誤解を生んだらしい。

 面倒だから弁解しないけど。


 ただ、てっきり俺よりもと年が離れている妹とかそういうのを想像していた。


 ……さっきのは果たして妹だったっけ?

 

 ひそかに望んでいたわけじゃないが。いや、そんなロリが好みとか、そんな……。


 ふむ、違うな、話が脱線した。


 よりにもよって同い年か。一番望んでない年齢層だ。

 

 別にどの年齢層も望んでいるわけじゃないか。

 

 とは言え、この話の筋を見る限り、とても嫌な予感がしてならない。

 

 背中に冷たい汗が流れた。


「おい、まさかその子と暮らせ、なんて言わないよな、そうだよな!?」


 頼む、この予感は当たらないでくれ。

 冗談じゃ済まされないぞ、マジで。


 だけど、この世の中は理不尽だ。


 いい予感はしょっちゅう外れるくせに、嫌な予感は嫌というほど当たるものだ。


 祈りは虚しい。神頼みしている時点で、もう俺は察しているも同然だった。

 

「お前と同じ学校に転校することになったから、先に家に行ってもらうことにしたんだ。よろしく頼むよ」


 こういうことだ。


 ああ、神よ。俺は今、猛烈にこの世に恨みを抱いている。


「何がよろしく、だ! 急すぎるし、何なら同年代の男女が同じ屋根の下とかマジ倫理観どうなってんだ!」


 最悪だ。


 嫌な予感は見事的中してしまった。

 しかも考えうる最悪の展開で。

 

 俺の悲痛な叫びを聞いて、親父はグッドサインを出すかのような。

 いやきっと、向こうで実際にしているんじゃないかというような、嬉しそうな声色で答えた。


「大丈夫だ! お前はそう簡単に手は出せないヘタレなことは知ってるし、信じてるからな!」


「肉親としてそんなこと信じないでくれ!」


 ふん、そんなことない。俺はやるときはやる男だ。そんなこと……。


 …………………………………………………………。


 ああ、ヘタレだよ。そうだよなんか悪いかよ!

 紳士的で立派だろ! そっちのほうがいいだろぃ!

 

 え? そんな紳士的なこともしたこともないだろって?


 ……、お前は一回黙ってろ。


「おい、本当に待ってくれ。それ今から変えられないのか? せめてその奥さんも一緒にこっちに来ればいいじゃないか」


「変えられないし、冗談でもないぞ。あと、神山さんがそっち行ったらオレ一人でさみしいだろ?」


「知らねぇよ。今までもそうだっただろ」


 いまさら何言ってんだ。


「人の温もりを知ってしまった以上、もう他で寂しさはぬぐえんのだよ……」


「なんじゃそれは……」


 ウソだぁぁぁ、と叫びたい気分だった。


 もしかしなくとも自分で気づかないうちに叫んでいた。


 それくらいのどがカラカラだった。


 叫びながら通話しているからかもしれない……。

 

 何にしろ急すぎるし、無茶苦茶だし。変な汗かいてるし。


 ただそれ以上に、俺自身としての問題が、この事実に強烈な嫌悪感を示していた。


 考えただけでも心が苦しくなる。


 心臓発作よりも苦しいこの感覚。


 俺がなぜ人との関わりを極端に避けてきたのか。


 なぜ、俺は一人で生きようとしているのか。


 駄々をこねたい。受け入れがたい。逃げ出したい。


 ただ、親父と神山さんの夫婦水入らずの生活を邪魔したくはない。


 それが俺が強く否定できない理由だった。


 今までほぼ一人で赴任先で働いてきた親父に不自由はさせたくなかった。

 そんなことを考えているなら、最初から俺がどうこう言ってどうにかなる事案でもなかったのだ。


「それに、お前、アレは完全に治ったわけじゃないんだろ? そのリハビリだと思えばいい」


「簡単に言うなよ……。まあでも、わかったよ……。別に今喚いたって何も変わらないんだろ? 取り乱して悪かったな」


 何とか冷静さを取り戻した俺はそう言った。

 

 俺が今何言ったって何も変わらない。

 そう悟ってしまえば、不思議と諦めがついた。


「ああ、随分と話し込んだが、言ったことを理解してくれて助かる。じゃあ、その子は今日中にはそっちに着くらしいからよろしく頼むよ」


 なんでこういうことを去り際に残していくのか。


 一度冷静になった頭は、今一度着火したかのように混乱した。


 幾分か早すぎるご対面だった。


 さっきの想像から、親父と奥さんが消えた。


 ……気まず。


「は? おいちょっとまて! それは流石に文句を言わせ……。っておい! 切んなよ、まだ言いたいことあるってーの!」


 叫びは虚しく、携帯からはツーツー、と悲しい程に無慈悲な音がこぼれていた。

 

 一瞬怒りに任せて携帯を折りそうになったが、修理だの買い替えだのが面倒くさいと、何とか現実に戻ることで頭を冷やす。


 一度整理しよう。

 

 親父は赴任先の近くのBARで知り合った女性と結婚して、いま同棲している。

 ……、なんで結婚する旨を事後報告で連絡してきたかは、一度隅に置いておく。


 で、なんだって? 相手方の娘さんが俺と同い年で? こっちの高校に転校するから一緒に住めだって?


 来るのが今日? ふむ……。


 ……、まっずい。非常にまっずい。


 え? 言ったよね。


 心の準備ができていないと心臓発作起こすよって。


 あれ冗談じゃないからな。まじ。


 と、取りあえず片付けを……。


 俺は食卓に並べた夕飯をほったらかしのまま散らかったものを取り敢えず物置と化している部屋にぶち込んでおく。


 一通り終わってリビングに戻ろうかというとき、インターホンが鳴った。


 ピーンポーン。


 音に変わりはないけど、確かに俺は地獄の鐘の音を聞いた。


 俺はまたもやフリーズしたが、出るしかないと覚悟を決めて玄関に向かった。

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