5話 散歩
50分ほど歩いただろうか。
移動しても静かなもので、人の気配もほとんどない。
人の気配は。
「なにあれ」
頭は人間。目は血走りつつはみ出そうで、口からはカメレオンのような長い舌。肌は黒めの緑。
手足は獣のそれであり、大きな爪。腰から背骨の後半が飛び出ており、その先は恐竜のような場違いな太い骨が張り付いている。まるで小学生が「こんなのいたらつよそう」と広告の裏に描いたような。
「あれが〈知能獣〉よ。多分あとちょっとで寄ってくるわ」
「倒せるのか?」
「気狂いを倒したアンタならいけるんじゃない?そこまで強くはないわよ」
「というかどういうヤツなんだ?あれは」
「タワーから出てるらしいよ?物好きが調べたんだけど、タワーに近づくにつれて出没数が多いらしいわ」
2ヶ月もあるとそんな物好きも増えるのかな。
「んじゃ、行ってくるっ!」
「終わった!」
〈知能獣〉とともに一発を入れたビルには跡が残り、そこから肌よりやや明るい血のような液体が滴る。ちょっと気持ち悪い。
「けっこー強いじゃんアンタ…」
ちょっと引いてない?
「でも俺より強い人もいるだろ?」
「ん〜まぁね〜…」
そんなに予想外だったの?
「ちなみに見てきた中でどれくらいの強さだと思う?」
「戦わなきゃわからないでしょそんなの知らないわよっ!」
怒られた…話題変えよう。
「〈知能獣〉は人じゃないんだよね?」
「そーよ。中には風船みたいに膨らんでるやつとか手足が異常に長いやつとか、他の動物の特徴を捉えたものまである。…まぁ、大抵やつらの視界に入ったり範囲内に入ったりしたら正面から突っ込んでくるからアンタみたいな純粋パワーゴリラなら倒しやすいでしょうね」
結構な化け物らしい。
ちなみに本には「肌が緑色」とだけ特徴が書かれていた。
「…でもパワーゴリラはないだろ」
「実際そうよ」
なーんて。話してたら。
「クソッ…って!?アンタら、巻き込む気はない!逃げろ!」
刀を持った青年が、此方へ駆けてくる。
その奥には、眼鏡の青年が。自分よりも少し年上か。
無数に散らばっている黒い六角形が、地に落ち道路を削る。
未だ休ませてはくれないらしい。




