4話 女子
「ふわぉ」
大きい欠伸をして起きる。布団の無いところで初めて寝たが、中々に爽快な朝だが…光に温もりなどは感じない。そういう世界だから。
そして、覚えのない部屋の床に揚羽は転がっていた。
外へ出てみると、街の風景が一変していた。
「…これが『仕様』ってやつか?」
場所は全くわからず、看板にもモヤがかかっているためどこなのかもわからない。街の風景やチェーン店の看板はまさしく日本だが、この場所は日本に本当にあるかどうかもわからない。
「ねぇー!そこの人ー!!」
声が聞こえた。やや甲高い声。同世代くらいの…女子!?
「知らない顔だねぇ。もしかしてイモってた?」
「…?イモ…?」
「イモる。隠れてる…みたいな感じらしーよ〜ゲームでよく使われるんだとさ」
「あ〜…あ、いや、昨日ここに来たんだよ」
すると女子は目を点にする。
「昨日!?じゃあ5月1日に!?」
「え、今日5月3日じゃないの!?」
「んなわけ!見なよアタシのスマホ!」
今日の日付…5月2日。
あの糸目ヤローに殺されたのが4月30日の入ってすぐ、地上に降りた(落っこちた)のが5月1日?
罰〈ペナルティ〉の1日が無い…?
「てかアンタ…年近いよね?スマホくらい持ってないの?」
もしかしてあそこは殺されてもすぐ復活するのか!?リスポーン地点か何かか!
とりあえずあそこではルールの罰〈ペナルティ〉が受けていないようなもんなんだ!
「電話とかは無理だけど時間とか見れるし、あと専用のSNSもあるしさぁ…って聞いてる!?」
「ごめんっ!考え事してたっ!」
怒られちゃった。
「別に良いけどさぁ…あ、アタシ梅隅香ね。アンタは?」
「俺は歩浜揚羽って言うんだ、ヨロシク」
そういえば久しぶりに女子と話したなぁ。何年ぶりだろ。
「そういや昨日来たってことは、アンタも呼び出されたってこと?」
「いや、俺は友達のために来たんだ」
腰のポーチから本を取り出す。
「友達にこの世界ぶっ壊してくれって頼まれててさ。もちろん人間じゃなくて悪魔だぜ?」
「すごい友達ね…」
ってか悪魔って何よ、って感じで俺を見てる。大きいため息を吐きながら。
「まぁ来てるんだし事実としか言えないのかもね…てか、アンタ戦えるの?」
「おう!これでも『気狂い』一人倒した…から…」
そういえば、あれ殺したわけじゃない…よな?
「何言い淀んでるのよ…別に死んでないし、明日あたりどっかで復活するわ。アタシも2回くらい死んでるし」
「そうなのか!安心したぁ〜」
痛みは伴うけど復活するのなら『気狂い』のお姉さん的にもまだ良いことだろう。
「ま、戦えるなら一緒にアタシの仲間探してよ…はぐれちゃってさ。紹介もしたいし、どう?」
どうせ行くアテも無いし、顔を広めておくのも良いことだろう。
「わかった、同行するよ!」
「そういえばアンタの能力〈スキル〉、何?」
「筋力増強…的な?パワーアップ系!」
「曖昧だし単純ね…」
「そういう…えっと…梅隅サンは…?」
「香でいいわよ。…そうね、ほら」
手の中で、何やら黒いものが混じり合って飴のような形を成した。
「これ食べると能力が一定時間強化されるんですって。効果はいいわよ」