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1話 遭遇

♦︎4月30日

 昼はザ・春という感じの天気だったくせに、夜には怖いほど冷えていた。住宅街を吹き抜ける風があまりにも寒い。一刻も早く帰らなければ…と思いつつも、近くのコンビニでカップラーメンを啜りたい自分もいる。

「いや…我慢だ、目標金額まで全然なんだから…」

なんて呟きながら欲望に耐えつつ駅に到着する。少し古い駅なので街灯も少なく駅の中の灯りもほんのりと光っているだけである。辺りは暗いため足元は注意しなければ…


ガッ


こんな風にコケそうになるのだ。

「え?」

足元を懐中電灯で照らすと、そこには猫のようなサイズの動く生物がいた。血のようなものを流し蹲っている。轢かれたのか、と思い辺りを照らしていると…何やら古びた大きめの本が転がっていた。

「あの本はボクのだ。取ってくれないかい?」

声?と思い辺りを見渡しても人影はいない。まさか…

「下だよ、しーた」

「ぎゃあっ!!」

猫…じゃなかった。デカい牙。黄金の目。身体に気味の悪い紋様。おまけにツノが2本。まるで悪魔…

「もちろん、ボクは悪魔さ」

「しゃべったぁー!?って、え?あく、ま?」

「そうだよ。別世界から来た人間と同じように星をほぼ支配してる生物さ」

その割にはペラペラ日本語喋るなぁ。普通言葉が通じなくて翻訳機かなにか出てくるところかと…

「全部覚えたよ」

「エスパーなの!?」

さすが悪魔さん。こわい。

「はい、本…だけどこんなところで血だらけ?で寝転がって何してたの?」

「あ〜…ちょっとね…事件の対処を任されたんだけどさぁ…失敗しちゃったんだよねぇ…てへへ」

「事件?」

「そう。2ヶ月ほど前、1000人くらいが行方不明になる事件があったじゃない?あれ悪魔の仕業でさぁ…ボクに、その1000人を救出しろっていう命令が出されたんだよねぇ…」

「どこに閉じ込められてるんだ?」

「異空間だよ。付けられてる〈ルール〉によって変わるからわからないけど、殺されはしていないと思うんだ。ただ…救うにはその異空間を制御してる〈システム〉を壊す必要があるんだけどね、ボクでは無理だったらしい」

結構深刻そうな表情をしている。血だらけになるほどなのだからそれほど難しいミッションなのだろう。

「じゃあさ、俺も行っていいか!?俺みたいな人間ならさ、他の人たちを説得できたりとか…」

「確かにいい案だが…悪いね、ボクは…あの世界に入ることができないのさ」

まじか。小さい人外キャラと一緒に旅する的な感じだと思ったんだけど…

「君だけなら送れるけどね」

「ならいけるじゃねえか!行こう!今すぐ!」

「ちょっと待ちたまえ。君に利益は無いだろうし、危険に晒されるんだぞ?それでも行くと言うのか?」

そういえばそうだな…この悪魔さんも見返りとか期待されてるのか?って心配されるかもしれないしね。かといって「人助けくらい安いもんさ!」とか言っても良く思わないかもだしなぁ…お、そうだ。

「友達になろうぜ!俺は歩浜揚羽(かちはまあげは)!お前は!?」

「…ヌカヅキ、だ。」

「よろしくな!ヌカヅキ!…さて!()()()()()として異空間ぶっ壊してやるぜ!」

「…成程、それが狙いか…では、よろしく頼む。ああ、この本は持って行ってくれ…何かの役には立つはずだ」

「おっ、ありがとな!じゃ、転送頼んだ!」

「ああ、こちらこそよろしく頼む。では…」

魔法陣のようなものが足元に出現し、視界から夜の暗闇が消え…強い光に思わず目を瞑った。


…着いた?辺り一面真っ白なんだけど。

「誰かいませんかー!!」

叫んでも答えは無い。弱ったな、と思いつつ歩いていると空のような水色が見えた。出口だろうか、と思い近づくと…人影が1人分。

「初めまして!!」

返事は無い。聞こえてなかったりして…と思い近づく。

男性。糸目。ブラウンの長いコート。右頬にコンマの模様。年齢は40歳くらいか、かなり老け顔だ。

「お〜い!俺は歩浜揚羽って言うんだけど!」

…結構近づいたはずなのに呼びかけても返事がない。いや、何か呟いてる?右手に持ってるのは…大剣?

「歩浜揚羽の心臓を刺せ」

そう聞こえた刹那。その男の大剣は、俺の身体を貫いていた。


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