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生徒会長との約束

翌日、僕は“新しい”学校に来ていた。そう、僕は所謂転校生と言うやつだ。別に親の都合で転校したと言うわけじゃない。自分自身の都合だ。しかし、僕は今更ながら新しい学校に来る必要はないんじゃないかと思っていた。......学校なんて面倒なだけだし。っとそんな事を考えているうちにクラスで僕を紹介する時間になったようだ。僕は先生に呼ばれ教室に入る。教室に入った瞬間、大量の視線が注がれる。僕は先生に促され自己紹介をしようとしたその時、1人の少女と目があった。その少女は僕と目があった瞬間、

「えっ、嘘」

と声をこぼし、同時に僕も

「えっ?」

と驚愕の声を漏らすのだった...。



俺たちが驚いていると担任が

「おっ、お前ら知り合いか?」

と声を掛けてくる。そんな先生の声に対して僕は、

「あっはい、知り合いというほどでも無いですが」

と答える。すると先生が

「ちょうど良かった。白川、今日の放課後学校を案内してくれ」

とその少女ーー白川さんに言う。

「わわっ、分かりました」

と白川さんが慌てたように言うと先生が

「じゃっまずは自己紹介をしてくれ」

と僕に言ってきたので僕は自己紹介をする。

「僕の名前は黒川怜人です。趣味は読書です。よろしくお願いします。」

僕がそう言うとクラス中から拍手が巻き起こる。

「よしっ!じゃぁ黒川の席はあそこな」

と先生が指した席に向かい、僕は静かに腰を下ろした。教室全体がざわざわと再び活気を取り戻す中、隣の席の男子が小声で話しかけてきた。


「お前、白川さんと知り合いだったのか?すげぇじゃん。あの人、生徒会長だぞ。美人で頭もいいって有名なんだよな。」


「……まぁ、ちょっとね。」

僕は曖昧に笑って返した。白川さんが生徒会長だというのは昨夜の話から分かっていたが、学校内でこんなにも注目されている存在だとは知らなかった。隣の男子は僕の反応に少し不満そうだったが、それ以上は何も聞いてこなかった。


授業が始まると、白川さんの方を気にする余裕もなく、初めての授業についていくのに必死だった。教科書の内容が違う部分もあり、やはり転校というのは面倒なものだと改めて思う。


ーーそして放課後。


「黒川くん、準備できた?」

授業が終わると同時に白川さんが近づいてきた。あの夜の姿とは違い、制服をきちんと着こなした姿は、周りの注目を集めるほど洗練されている。だがその表情には、少しの戸惑いと緊張が混じっているようだった。


「ああ、大丈夫だよ。案内、よろしく。」

僕が立ち上がると、白川さんは頷き、廊下へと歩き出した。


「……あの、昨夜はありがとう。」

周りの人に聞かれないよう、彼女は小声で呟いた。その声にはどこかぎこちなさがあった。


「いや、別に大したことはしてないよ。偶然通りかかっただけだし。」

僕は軽く肩をすくめた。だが彼女は小さく首を振り、少し強い口調で言った。


「でも、あの時の言葉に救われたの。本当にありがとう。」


彼女の真剣な瞳に僕は少し戸惑いながらも、「そうか、それならよかった」とだけ返した。会話はそこで一旦途切れ、少しの沈黙が流れる。


「それにしても、転校生がこんなに早く生徒会長に案内されるなんて、周りから嫉妬されそうだな。」

僕が冗談めかして言うと、彼女は驚いたように目を丸くし、それからふっと笑った。


「確かにそうかもね。でも、生徒会長の仕事って意外と地味だから、そこまで注目されないわよ。」

彼女の言葉は軽やかだったが、その笑顔にはほんの少しの疲れが滲んでいるようにも見えた。


廊下を歩きながら、彼女は学校の施設やルールについて説明してくれる。だが僕は話半分で聞き流していた。彼女の横顔を見ていると、昨夜の孤独な瞳が頭をよぎる。


「……白川さん。」

不意に名前を呼ぶと、彼女は立ち止まり、こちらを見上げた。


「無理してないか?」

僕の問いかけに彼女は一瞬驚いたようだったが、すぐに微笑んだ。


「大丈夫。今日の私は、生徒会長の白川七海だから。」

その言葉には、自分を奮い立たせるような強さが感じられた。それでも、彼女がどれだけ自分を押し殺しているのかを考えると、胸が少しだけ痛んだ。


「そうか。でも、無理しすぎるなよ。昨日も言ったけど、たまには休むのも大事だ。」

僕の言葉に、彼女は一瞬だけ目を伏せ、再び微笑んだ。


「……ありがとう。でも、今は案内をちゃんとするのが私の役目だから。」


その言葉に、僕はそれ以上何も言えなくなった。彼女の背中を追いかけるように歩き出しながら、心のどこかで「また話せる機会があれば」と思っていた。


案内が終わるころ、彼女がふと振り返り言った。


「黒川くん……もしまた辛くなった時、話を聞いてくれる?」

その問いかけに、僕は迷わず頷いた。


「もちろん。俺でよければ。」

彼女の表情が少しだけ柔らかくなったように見えたのは、気のせいではなかっただろう。

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