放課後のベランダで秘密の百合の花を咲かせる
夕日降り注ぐ、放課後。私はベランダの手摺にもたれ掛かりながら、ぼーっとしていた。すると。
「わっ!」
「うふふっ、びっくりした?」
同クラの石川緋色が、後ろから抱きついてきた。そう、私は緋色を待っていたのだ。
「委員会の話し合い、結構長かったね」
「ほんと、無駄話が多いわ長いわでくたびれたわ。ごめんなさいね、長らく待たせちゃって」
ぎゅっと、私のことを抱き寄せながら緋色は言った。鼻腔を擽る、緋色の甘い匂い。私の背にむぎゅっと押しつけられる緋色の大きくて柔らかいもの。ドキドキ、する。
「それより美波、貴女まさかベランダでずっと待ってたの?手冷えてるじゃない」
「ひゃあっ!!」
緋色は後ろから私の頬に顔を寄せて耳元でそう囁きながら、私の手に優しく指を絡めた。絡めた指がまるで心臓のようにドキドキと鼓動する。その鼓動が私のなのか、それとも緋色のものなのかわからない。けど、暖かくて心地よくて、この鼓動が誰のものでもいいやって思った。
すると。
「あっ!」
はむっと、緋色が私の耳を甘噛みした。
「ふふっ、ほんと美波は耳弱いよね~」
「もっ、も~!誰かに見られたらどうするのさ!」
「良いじゃない、誰かに見られても。それとも……美波は私と付き合ってるのを誰かに見られたくない?私と付き合ってるなんて知られたら、恥ずかしい?」
そう言いながら、緋色は私の体から離れた。振り向くと、緋色が悲しげな顔をしながら私を見ていた。
私より少し背の高い緋色。黒髪ロングで綺麗系の緋色。男子にも女子にもモテる緋色。私の自慢の──
「んぅっ……!」
私は緋色を抱き寄せると……唇にキス、した。最初は軽く重ねるように、一度離れると今度は唇の向こうに、深くふかくキスした。
ちゅぱっ……
唇の離れる音が、ベランダに小さく響く。はぁはぁとした緋色の吐息が、私の唇に触れる。
「恥ずかしいわけないじゃん。緋色は私の自慢の彼女だもん。ただ、今の緋色の可愛い顔を誰にも見せたくないだけ」
「……私なんて。美波の方が可愛いわよ」
「いや、緋色の方が可愛いよ。ほら、もっと緋色の可愛いところ、見せて」
そう言いながら、私はまた緋色の唇に吸い付いた。緋色の大きくて柔らかいものと私の小さい膨らみが、ふにふにと重なる。私と緋色の鼓動が、体温が吐息が……重なる。
寒い風吹く12月。
寒さなんて忘れて、私は緋色の唇に吸い付く。
誰にも教えていない……秘密の百合の花を、ベランダで静かに咲かせる。