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第十一話 (武藤サイド)視線




「まだ学校クーラーついてないだろ。だから防具着てると熱がこもるんだ。倒れないためにこまめに体温下げる必要があるんだけど、そのために首に水かけてんだ。高田は?」



「・・・・・・・・・」


自分としては普通にできたつもりだったが、何故か彼女はしばらくフリーズしている。

もしかして俺はなにかとんでもない失敗をしてしまっただろうか。急に不安な気持ちになっていく。


「・・・?・・・高田?」


「あぁごめん。武藤君がこんなにしゃべってるの初めてみたもんだから。」


俺はそんなにしゃべらない男だと思われていたのか。というよりか事実そうだ。

彼女の前だから、知らずに気持ちが高揚して普段よりしゃべりすぎたんだろうか。兎に角恥ずかしい。

彼女が気づかなくても恥ずかしい。

顔が急激に熱くなっていくのを感じる。きっと赤くなっているだろう。

こんなに恥ずかしい思いをしたのは小学四年生の時の剣道の試合で、事前にトイレに行かなかったせいで漏らしかけて変な動きで戦った時以来だ。あの時は早く終わらせたくて変な動きだったが、驚異的なスピードで決着をつけた。勿論勝った。



余計なことも思い出して、思わず顔をおさえながらしゃがみこんでしまった。


「!!!武藤君!大丈夫?どうしたの?」


しゃがみこんだ俺を心配してか、高田が駆け寄ってくる。


「いや、いい。大丈夫だから心配するな。」


なんとか彼女と話すチャンスを得ようと、自然になるように自分の隣をすすめる。


「座れよ。中腰疲れるだろ。」


目で自分の隣を指し示す武藤君の言葉に従い、そろそろと腰をおろす高田の気配に自分の心臓が激しく脈打つのを感じる。

どんなことを話したらいいのか迷っていると、彼女から話しかけてくれた。


「私は部活の休憩中。外で暇つぶしてたら武藤君が水かぶってるのがみえたから・・・。」


「高田は吹奏楽だったよな。トランペットだろ。」


「!!・・・よく知ってるね。」


そりゃよく知ってるよ。ずっと高田ばっかり見ていたんだから。

でもこんなこと言えるわけねぇーよ。死んでも言えない。


「あ、あぁ。まぁな。ほら、あの、最近よく廊下で練習してるだろ。それでだよ。」


「確かに。ここからあそこ見えるもんね。私の所からもこっちよく見えたよ。私、武道とかよくわからないけど、武藤君がすっごく強いのは遠目からでもわかったよ。」


「あ、有難う。俺も、ここまでお前の吹いてる音楽聞こえてきたけどさ、その・・・上手いと思うよ。俺みたいな素人がいうのもあれだけどさ。」


「クスッ、何この褒めあい。なんか恥ずかしいよ。フフッ。」


俺のことを少しでも彼女が知っていたというのがとてつもなく嬉しかった。

そのあとは、お互いの部活の後輩が探しに来るまで話し込んだ。信じられないくらい落ち着いた、安心できる空気の中での会話は、さらに俺を彼女に夢中にさせた。

楽しい時間はすぐに過ぎ去ってしまう。

この機会を逃したら二度と彼女と関われないと思い、背を向け歩き出す彼女を呼び止める。


「高田!!」


「?・・何?」


呼び止めたはいいが、なんと言っていいのか分からない。あたふたしながら言い訳を並べる。


「あ~あの、さ。お前さえよければその、なんだ、これから部活の休み時間いろいろ話さないか?あっ、嫌だったら別に全然かまわないんだ。ただいろいろ相談していければ凄くいいんじゃないかと思って「いいよ。」そうだよな。嫌だよな・・・って、え?」


「だから、いいよって。時間もあるし。・・・私も話たいし。」


「ホントに!?」


「ホントに。こんなことなんかで嘘いわないよ。」


こんな誘い、絶対に断られると思っていたのに意外な返事にまだ実感できず、しばらくは夢かと思っていた。

少しは好意的に見てもらえてると思ってもいいんだろうか。

体格と顔つきのせいで、昔から女子供からは怖がられてたというか一歩引かれていたから、彼女の返事がとても意外だった。






あの日から二人でほぼ毎日決まった時間に道場裏に集まって2、30分話すようになった。

その間、俺は柄にもなくにやけたり、声をたてて笑った。こんな姿、周りが見たらびっくりするだろうな。


それ以外では話さなかったが、目があったりすると自然と頬の筋肉が持ち上がり笑いかけていた。

二人だけの時間が俺にとって貴重な時間となった。







最近、ある女子生徒とよく目があう。すぐに逸らされてしまうから俺の勘違いかと思ったが、どうも回数が多すぎる。

目が合うと恥ずかしそうにすぐ逸らすが、ちらちらとこっちを窺ってくる。

でもそのやり方がわざとらしいというか、手慣れていて嘘くさいのだ。

白い肌に、茶色い髪のなんかふわふわした女だ。たぶん後輩だろう。男がちやほやするタイプだ。


彼女の視線の意味はなんとなくだが察しはついていた。








おひさしぶりです。

私は無事大学合格することができました。その前後の準備でかなり更新遅れちゃったんですけど、まだ見てくれてる人がいたらお待たせしてすみませんでしたm(_ _)m

これからも待たせる可能性大の作者ですが時々生存確認してくだされば有り難いです。

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