エントス大陸13
最下位食屍鬼の戦利品は…無い。”ヌル”さんがマジックアイテムを使って灰も残さず消滅させたからだ。金のスライムに使ったマジックアイテムと同じ物か?ハムは自分の剣を見る。食屍鬼の腐敗臭を放つベトベトするやつがついていない。金のスライムは武器に付着した金は消滅しなかった。…”ヌル”さんは色んなマジックアイテムを持っているんだなぁ。
「”ヌル”さん、強化魔法とマジックアイテムを使ってくれてありがとうございます。ですが…貴重なマジックアイテムを乱用するのは勿体無くて悪い気がするので…弱めの強化魔法と魔法攻撃だけでいいです。素晴らしい魔法ですが強化されすぎて俺にはちょっと無理なので弱めに付与する事は出来ますか?あいつも転んでますし…」
「…いきなりはやくなってこけた。」
『そうですか。ごめんなさい。次は弱めにします。』
『では、進みますか?』
「そうですね。ベコ!ビジャはあっち。」
反対方向に進んでいるベコは引き返した。
ビジャに向かいながら”ヌル”さんと色んな話をした。
「“ヌル”さんが着ている不思議な服は何という服なんですか?」
『ジャージという服です。これ、動きやすいんですよ!しかも、着たり脱いだりがかなり楽です。更に魔法を付与したんですよ。』
「”じゃーじ”ですか?僕はあまり服に詳しくないですが…サラミは知ってる?」
「いや…知らねぇな…」
意外にファッションとかに詳しいサラミも知らない服なのか。
「サラミも知らないの?でも、便利そうな服ですね、どんな魔法を付与したんですか?」
『えーっと…衛生的と体温調整、低位防護です』
《これも嘘だけど。衛生的は洗わなくていいから本当だけど、溶岩の中でも氷の中でも不快に感じない人が体温調節なんて要らないよ。それに低位防護じゃなく絶対防護他にも獄炎耐性とか日焼け防止とか動物好感度上昇とか犬好感度上昇とか猫好感度超上昇とか猫好感度極上昇とか…あるけど変に目立たない方がいいよね。せっかく全ての仕事を”NC”に押し付けて旅をしているんだから。楽にゆっくりしたいや。》
「マジかよ…」
「魔法を3個も付与したんですか!?5サークルある魔法職の人でも2個が限界ですよ!?」
《あ…なんか…やらかしちゃったみたい?本当はこの服は57個…いや58個付与してるんだけど?》
「えーっと…うちは物に魔法付与するのに特化した魔法職なんだよ。ほら、攻撃魔法特化の魔法や回復魔法特化の魔法職、支援魔法特化の魔法職、召喚魔法特化の魔法職、偵察魔法特化の魔法職とかさあるでしょ?」
《付与魔法特化の魔法職なんて存在しないけど、攻撃魔法特化とかは実際に居るから魔法職が居ない冒険者チームなら騙されてくれるよね?》
確かに、得意不得意があり、極端な人だとクラス10の攻撃魔法を使えるけどクラス1の回復魔法を使えない人が居るとかなんとか。”ヌル”さんは付与魔法特化の魔法職なんだろうか?
「なる…ほど?」
《よしっ!騙されてくれた!》
『そうなんですよ!しかも、低位の魔法なので3個も付与できたんです!』
「え?衛生的と体温調節は生活魔法の中でも最上位の筈ですが…?」
ハムの母はクラス1の生活魔法が使えたので聞いた事がある。
「それに、低位防護は支援魔法の上位の方だった記憶が…」
防護は火や回復と治癒、瞬間移動くらい有名な魔法の1つだ。だから魔法に詳しくないハムでも知ってる。クラス12の支援系魔法で、物理防御力や魔法防御力など、全ての防御力をかなり上げる魔法だ。低位防護でもクラス9の魔法だ。それを服に付与出来るなんて…
《どうしよ…記憶除去か記憶改変でも使うか?いや、記憶操作系の魔法は苦手分野だ。なんなら殺す?いや、道が分からないしー、この猫耳ロリ少し厄介そうだしな〜、最終手段とするか。》
『えーっと、低位防護を使える友人に手伝って貰ったんです。友人と一緒に付与したんです。』
“ヌル”さんはえーっとが口癖なのか?
ハムは”ヌル”の言っている事が全く分からないがきっとそういう事が出来るのだろう。
「なる…ほど?」
「そんな事が出来るんっすね…?」
サラミも理解できていないようだ。
《よし!ここで話題を変えとこう!》
『ハムさんの新しい剣、どんな感じですか?』
「前の剣は切るというよりは力で無理矢理敵を断っていた感じですが、この剣はスパッと切ってる感があります!実際最下位食屍鬼を一撃で半分くらい切れたんですよ!すぐに回復されましたけどね…」
《よし!乗ってくれた!このまま違う方向に…》
「もし良ければこの剣に魔法付与してもらう事は可能ですか?報酬は支払います」
《それ以上魔法付与の話を出さないでよ…》
『いいですよ、ですが今は無理です。場所が必要なので。帰ったら貴方の家で付与します。報酬は要らないです。』
「えっ!?そんな、悪いですよ、」
『大丈夫ですよ。サラミさんとベコさんの武器も魔法付与しましょうか?勿論無料で。』
「俺もいいんですか!?」
『はい。そういえば…サラミさんの武器は改造レイピアと聞きましたがどんな改造がされているんですか?』
“ヌル”はもう一度武器の話に逸そうとする
「この突起…見えますか?」
『これですか?』
「そうです!この突起を引くと剣身が飛んで行くんです!仕組みは剣身が飛んでいかないようにしているストッパー?が突起を引くとストッパーが下がって超強力バネが剣身を押し上げて発射という仕組みです!剣身は魔力糸で繋がっていて絡まったりすることなく戻ってくるんです!」
『もし、敵の体に刺さって抜けなくなったらどうするんですか?予備の剣身があるんですか?』
「予備の剣身はありませんが、予備の改造していないレイピアがあります。」
『なるほど、面白いですね。』
「”ヌル”さん、サラミが予備のレイピアを持つ前、スライムに改造レイピアを使った事があるんですよ!それで、スライムを貫通して池に入ってエントス大陸を釣った事があるんですよ!それで…」
「ちょ、言わないでっ!」
『ふふ、ベコさんの槍はどんなのなんですか?』
「…ひみつ」
「ベコの槍は黒と金の…あ、今ベコが着ている服と同じ色、模様です。」
「…む」
『みてもいいですか?』
「…や」
『えぇ…』
「ベコ、ちょっとくらいいいだろ?」
『はは…別にいいですよ。それにしてもどこに槍を…あっ冒険者組合の所で服の中って言ってましたね?』
<魔法完全秘匿化>
<天眼通>
《本当だ、黒と金色の——やっぱりどこかでみたような…っていうか、これは槍…というか銃剣じゃないか…ッ!?》
《威厳への反感》
黒い…なにか禍々しい気配を感じた
《抵抗された!?は?どうやって?天眼通は自分に付与する魔法だから抵抗ではなく何だ!?天眼通でも見抜けない!あれ…秘匿化使ったよね?それでもバレた?》
ハムは”ヌル”の目が金と緑が混ざったような色になった気がした。
《なら…どうしようか…とりあえず。》
<仏眼…>
《ん?もう一度…》
<仏眼…>
《あれ!?発動しない!?そんな事は一度も無かった。なら違うのを…》
<壮麗な魔眼>
《発動した…けど、呪ったりする気はないんだよな〜ただ使えるかどうか試したかっただけでッ!?》
《堕落への反感》
さっきと同じ感覚だ。また抵抗?された
《もう…なんなのこの猫耳ロリ思ったより厄介そ〜》