エントス大陸28
———この世界の中心。
まるで、こちとの戦闘で”ヌル”が作った世界のような…小さな星が無数にある夜空をしている。
違うのは1つ。
その夜空の中心に花が沢山生えた緑いっぱいの浮遊する島がある。
そしてその浮遊島の真ん中に大木がある。
“世界樹”だ。
その世界樹は超極小世界とはいえ20kmくらいの高さがある。
そして429本の枝が上に向かって生えている。
つまりこの世界には宇宙が429個ある。
平均は一つの世界に8000個の宇宙があるからかなり小さい方だ。
この枝一本一本が宇宙の歴史だ。
そして枝の先に現在がある。
色は水色。光り輝く水色の木だ。木目などは一切見れない。
世界樹は色んな種類がある。管理している神族の神話によって違う。
そして小さい物は10cm大きい物は30cmくらいの無数の水色の半透明の物が木の周りを渦巻いている。
魂だ。
この世界の死者の全ての魂が生まれ変わるのだ。
輪廻の歯車は世界樹を中心に回る。
生前の業によって次に与えられる生が決まる。
ちなみに蘇生魔法は元の体に世界樹から元の魂を戻す魔法だ。
次の魂の体が生成され始める死後4年5ヶ月が経つと蘇生の難易度が段違いに上がる。”ヌル”でも簡単には出来ない。
逆にまだ体に魂が残っている死後約18分以内なら蘇生は非常に簡単だ。体を治癒して心臓を動かすだけだから、世界中の人を同時に蘇生する事も可能だ。
そして魂が破壊されてしまうと、生まれ変わることは不可能になる。そして蘇生は神でも出来なくなる。魂を創造なら”ヌル”でも可能だが修復は不可能に近い。
他の人の魂を使って蘇生をすると廃人になるという豆知識もおまけしておこう。
「…ここの管理人は…?」
『さぁ?5兆年前に”NC”やネルと一緒に神族を一掃したからなぁ?多分虚空の底に灰があるんじゃないかな?』
「…”NC”とネルって誰…?」
『”NC”もネルもうちの居る組織レベルに大きいチームだよ。』
「…何する組織」
『神族に対抗する組織』
「…で?具体的に何…するの?」
『神族を殺すのさ。まぁ…10万年前くらいに神族を全て殺したから…今は愉快な仲間達の集まりだよ。』
「…全員?」
『いや?隠れてる神族は何匹かいるかもしれないけど…。探せば探すほど埃のように見つかるんだよ』
「…だから。」
『ん?』
「…魔族と神族と戦いが長い間なかった…」
『そういえば君はどれくらいの強さなの?上位魔神くらい?』
「…魔族って気づいてたんだ…ボクは絶禍殃」
『は?』
絶禍殃は魔族の頂点だ。神族の頂点、絶秩序と並んで絶混沌とも呼ばれる。あ、長くて面倒だから絶神や絶魔とも呼ばれる。
《…あの武器に使っていた王笏はそういうことか…魔族の頂点に継承される物なのかどうかはわからないけど魔族のレガリアのような物だろう。うそー…そんなに強いの?》
強さで序列が決まる魔族の頂点に偶然でなれる筈が無い。
あいつ本気出してないどころが遊んでる程度だ。
今のこの“ヌル”は魔族なら最下位魔神帝1体に、神族なら最下位天帝1体に相当する。
絶魔は十二柱の究極魔神帝全員より強い。だから絶魔は魔族の頂点だ。
要約、ヌルよりかなり強い。
というか一撃で魂ごと破壊される可能性がある。
「…で、…君の部屋に行くはずが…なんで世界樹にきてるの…?」
まぁ、うちは生存能力ランキング…人間という種族にだけ限定したらダントツ1位取れるのは間違いない。
大丈夫かもしれない。うん。
『世界樹から部屋に行けば、万が一…億が一、仕事押し付けた友人にバレても逃げるくらいの時間を稼げるから。』
「…サボるのよくない。」
『ストライキを起こす権利もないのかよ…。君こそどうしてこんなところにいるの?』
「…抜け出してゆっくり休憩旅。」
『ほぼ同じじゃん!?』
「…ふ」
『じゃあ、部屋に行くよ。』
“ヌル”は自分の部屋と繋がる穴を魔法で作り出した。