エントス大陸22
ここの捕まったとかいう領主に売ったのか…。
一般的にそういう物品はノヴェシ王国では国庫行きになる。
ここに来る前に調べておいてよかった。
…お城に忍び込んで盗んだ方が早いか。
<結界破壊>
“ヌル”がお店の外に出る。
「あ!”ヌル”さん!どうでした?」
『いや〜実は他の方に買われてしまってしまっていて…』
「あ…そうなんですか…。残念です。それでせっかく新しいビジャにきたので見て回りますか?」
『…。見て回りたいんですね?』
「え!いや…はい…。」
『いいですよ。』
「ありがとうございます!」
「…血の匂い」
決して親切心ではない。
仲間に連絡を時間が欲しいだけだ。
もちろんサラミやハムには聞こえていない。
こちなら傍受できる可能性があるがしていないようだ。
『イスト。』
「何。」
『金のスライムって知ってるか?』
「知らない。」
『だよな〜…?ねぇ、今うち部下で動かせる人何人居る?』
「私も。含めて。全員。お前の。仕事。してる。」
『アハトとノインに限界まで分身を使わせればいいだろ。』
「可哀想。お前。戻れ。」
『やだ。』
「どこ。居る。」
『とある超極小世界にいるよ〜』
「ツヴァイ。スィーベン。ツェーン。送る」
『お!ありがと〜!』
「後で。3人に。場所。聞く。」
『お前には無理だよ。絶対壊れない絆があるから!ははは…』
「私の。魔法。お前。以上。』
『うちは近接空中魔法電撃戦特化だからね。それ以外はかなり弱いからなぁ…。総合的にはかなり弱いよ…。でも洗脳されても壊れない絆があるからさ。』
「私。尋問。得意。」
『拷問?』
「違う。尋問が。拷問に。なるのは。お前。」
『ふふ!じゃあ、うちの部屋に3人寄越しといてね。』
「代わり。何か。寄越せ。」
『分かった分かった!1年後くらいに何か奢るよ!』
「了解。」
通信が一方的に切れた。
ハムがお店を回っているのが”ヌル”の視界に入った。…魔法を使っていなくても”ヌル”の視野は上下は180度、左右に160度なんだけどね。
「あ、あの…。」
そして…ボロボロの痩せこけている子供がハムの服を掴んだ。
言いたい事は何か大体わかる。恵んでくれ。だろう。
こういう奴ってうざい。うちならかなりの高確率で殺す。財宝を渡すだけで帰ってくれた事が1度も…(そもそも受け取るのを自分から断った人は何人か居たが)無いからだ。1個求めたから1個渡たす。そしたら2個目を求めてくる。だから2個目を渡す。そしたら3個目を求めたから3個目を渡す。そんな感じに永遠に求め続けるからだ。イタチごっこのように。しかも周りの人も集まってくる。だったらそのイタチごっこを始めなければ良い。まぁ、前は娼婦とかがかなり居たらしいからそれらの子供だろう。ならお金をあげるのは可哀想だ。どうせ親に取られる。
…ハムがその子供に黒鉄貨を1枚渡した。
…ほら、もう一枚強請られる。
…ほら、周りの子供も集まる。
こういうのの正解は1人分の食べ物だけを取り出して与える。そして、その場で食べさせる。
…ハムを助けるべきか?
いや、ハムを助ける義理は無い。
…必死になっている子供達を見る。
…哀れだ。
…子供達は助けてあげるべきだろう…。
それ以上食べられない程に与えれば良い。
歪んだ顔から偽りの笑顔を作る。
『みんな〜今からお兄さんが食べ物を配るからおいでー!』
子供達が一斉に”ヌル”に向かう
「おじさん食べ物をくれるの?」
「おにいさん!お願いします!」
「おじさん!僕に、僕に頂戴!」
『おじいさんじゃないよ〜?お兄さんだよ〜?』
…今の姿は50000回目くらいの自分の18歳~20歳くらいの時の姿のままなんだが…。
いや、今の自分は5~6兆歳を超えているからおじさんでも良いか…。
『じゃぁ…いくよ!みんなキャッチしてね!』
<フライパン弾雨>
自作魔法だ。
フライパンというのは、とある3頭身のネズミが健全に作り変えた物語の50作品目に出てくるグリム童話の…塔の上に住んでいる髪の長いお姫様が使う最強武器の事では無い。
飛ぶパンの雨だ。間際らしい…。
【fly bread bullet rain】の方が分かりやすいか?
なんでこんな魔法を作ったかって?
いや〜毎年忘年会でお題に沿って面白剣術や魔法とかのお披露目戦闘大会をするんだけど、それ用に作った攻撃魔法だ。…攻撃魔法だ。
子供達がパンに手を伸ば…したけど、腕や血が飛ぶ事はなかった。
“ヌル”が子供達に防護魔法を付与したのだ。
ギリギリセーフ。
子供達が必死にパンを必死に食べている。
「”ヌル”さん。ありがとうございます。今の魔法凄いですね!」
『早く行きましょう。早くしないとまた強請られますよ。』
「は、はい!」
ハムは息を切らしている。
“ヌル”は平気だ。
サラミはポーションを見ている。
「サラミー」
「ん〜ハム?どうした?息切らしちゃって」
「実は子供達が…。」
『あ、さっきの白い制服を着た騎士団の方にさっきの子供達を保護してもらうように頼んでおきました。』
「あ〜…なんかよく分からないけど分かった。」
『あれ?ベコさんはどこですか?』
「…後ろ。」
『わっ!?いつからいたの!?』
「…ずっと。君から…離れないよ…。」
『あ、そう。』
「…。」
「ハム、ベコ、”ヌル”さんこれ見てください。買ったんです。」
メスフラスコのような形をした5cmくらいの瓶に入った液体だ。
水に赤い絵の具を一滴垂らしたような色をしている。
『下位の回復ポーションですか。』
「はい!黒鉄貨200枚したんです!」
「200枚!?これが回復ポーションなんだ…。」
「下位のポーションだけどね。」
ハムが最低位の魔力ポーションを取り出す。
「魔力ポーションは紫色っぽいけど、回復ポーションは赤色っぽいね〜」
「そうだね。高位、上位、最高位のように上のポーションになるほど色が濃くなるらしいよ。」
「そういえば、ポーションって、最低位、下位、低位、中位、高位、上位、最高位だけどさ…魔法って最下位、下位、低位、中位、高位、上位、最上位…で他にも壮大とか伝説とかあるじゃん?そしてモンスターが最下位、下位、低位、中位、高位、上位、最上位、王、帝だけどさ、この差ってなんだろうね?」
「さぁ…気にした事がないからな…」
『ポーションとかは水で薄めれば薄めるほどどんどん薄くなるから最下位のライン…限界が決まっていないから最低位とされているんです。最高位も同じ理由です。難易度がどんどん上がりますが、限界が無いんです。魔法は個人差があっても同じ魔法陣に込められる魔力…威力の上限、下限がありますから。ちなみに壮大は同じ壮大の中でもグランドやマジェスティック、グランディオスのようにグレードの差があります。伝説というのは人間が神とかが使う魔法を神話的、伝説的と読んでいるのが変化されただけです。そしてモンスターの王や帝は…同じ人間でも両手両足がない人と勇者のようにかなり力の差がある者もいるんです。モンスターや神族、魔族も同じなので、大きく、規格外の者をそう呼んでいます。』
「なるほど…?」
「なら海にこの下位回復ポーションを垂らしたら海全体が最低位の回復ポーションになるんですか?」
『はい。10年間その海に入ってささくれが治る程度…自然治癒より遅いですが。しかも、かなり薄くなっているぶん10秒くらいで消費期限切れになって効果がなくなりますが。』
「海全てが回復ポーションって…インパクトが凄いですね…。」
ハムの感想は『ポーションとかは水で薄めれば薄めるほどどんどん薄くなるから最下位のライン…限界が決まっていないから最低位とされているんです』しか理解出来なかった。
『じゃあ?戻りますか?そして戻ったら武器に魔法を付与しましょう。』
「そうですね!戻りましょう!」
ヴァーテックスはアイアン冒険者チームになってから初めての依頼を達成した。