表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/8

第4話 来客は突然に....

 作業場全焼事件とミラの野望を聞いてから、3日がたった。

 あれほどの大火災を起こしたので、国の役人が僕を捕まえにくるのではないかと心配していたのだが、何事もなく普通の日々を過ごしていた。


 この3日間で1番戸惑ったのは、やはりムースとの接し方だ。ちなみに、ムースさんとさん付けで呼んでいたら、気持ち悪いからやめろとウサギモードのムースに言われて、さん付けで呼ぶのをやめた。

 

 それにしても、ウサギモードとおじ様モードのギャップの差がありすぎる。

 屋敷の家事をしている時は基本おじ様モードなのだが、それ以外はほとんどウサギモード。

 ウサギのムースと廊下ですれ違うたびに、意味もなく毒舌と罵声を浴びせられる毎日。


「悪気があって言ってるわけじゃないから」とミラは言うが毎日すれ違うたびに言われると悪意にしか感じられなくなる。


 そして屋敷に帰ってきた翌日から、ミラの指導のもと、魔人の炎の魔力を制御する特訓も始まった。

 特訓は屋敷の裏庭にあたる場所で行った。屋敷のすぐ裏には広大な山や森が広がっていて、その一部が切り拓かれて、特訓するにはもってこいの場所になっている。

 

 まず僕はミラ特性の腕輪を渡された。この腕輪は魔力の暴走を抑え込むのと同時に魔力コントロールを助ける働きがあるらしい。


「まぁ、嘘だと思って試してみ」

 そうミラに言われて、早速腕輪を付けてみる。付けただけでは、変化もわかるはずもなく僕は首を傾げた。


「ほら、まずは手から炎を出す練習。魔法はイメージが大事。あなたの手の先から炎が出るのをしっかりとイメージするの」


 そう言われても、そんな簡単に炎なんて出るはずもない。何度、手を突き出しても何も起きない。


「ほら、あの時の、あの作業場を焼き尽くした時の事を思い出して」


 ちょっと、ミラさん嫌なとこついてきますね、と内心僕は思った。

「そんな事思い出して、また暴走したらどうするんですか?」


「大丈夫だって!そのための腕輪でしょ。暴走はありえない。万が一暴走したら、私がしっかり止めてあげるから。あの程度のあなたなら、一瞬よ一瞬」

 ミラはふふふと笑って言った。


 そして、特訓開始から3日。僕はとうとう手の先から、炎を出せるようになった。出せたと言っても拳の大きさくらいの小さな火の玉みたいなもんだが、それでも十分な成果と言えるだろう。


「やったねナキ。さっすがー」

 

「ミラさんの教え方が上手いからですよ。それにこんな可愛い子に指導してもらえるから特訓も苦じゃないですし」

 

「そんな私の教え方なんて下手くそよ。ナキに素質があるからであって、それに可愛いだなんて、滅相もございません」

 ミラは顔を真っ赤にして手を振り、照れすぎておかしな口調になる。


「やっぱりミラさん。褒められるのに慣れてなさすぎですよ。うろたえすぎです」

 いつも凛として強気な態度のミラの可愛い一面が見れて得した気分になる。


「ミラ様。お客様がいらっしゃっております」

 おじ様モードのムースが来客を知らせてきた。人前に出る時はおじ様モードになるようだ。


「お客様?誰かしら?」


「ミラ様が送られた書状の件だと申しておりました」


「やっと来たのね」

ミラは嬉しそうな顔をして客人を待たせてある応接室へと向かっていった。


応接室には3人の男性がいた。1人は椅子に座っている。年齢は40歳くらいだろか。気品に満ち溢れていて貴族のような雰囲気がある。

 その後ろに護衛をするように2人が並んで立っている。よく見ると剣を腰に帯刀している。身なりからして上級兵士というか、それなりに良い格好をしている。

 

 ミラが客室に入ってきたのを確認すると、椅子に座っていたすっと男性が立ち上がった。

「お初にお目にかかります。私はシシリア王国近衛隊隊長のビスケットと申します。あなたがミラ様ですか?」

 シシリア王国、大国クルハラの支配に対抗している2カ国のうちのひとつ。


「ええ、まさか近衛隊隊長さん自らお越しになるなんて。ご足労、感謝致します」

 ミラは頭を下げた。


 ミラが着席を勧めたので、ビスケット隊長は椅子に座る。その正面にミラは座った。

 僕とおじ様ムースはミラの後ろに立つ事した。


「さっそく本題に入らせてもらいますが、あなたの送ってきた書状の内容に関して、我々の国王がとても興味を示しております。故に一度会ってその真意を確認せよ、との指示を受けましてね」


「興味を持っていただきとても光栄ですわ。真意もなにもあの書状に書いた通りです」


「ではあなたは我々と手を組んで、あの大国クルハラを倒そうと本気で思ってらっしゃると?」


 大国クルハラを倒す?ミラがこの前言ってた国を統一する野望のことだろうか。


「ええもちろんです。大国クルハラを倒せば東の領土は支配したも同然。それを足がかりに他の領土へと拡大していきます」


「あなたは無意味な争いを無くしたい。無駄に散っていく命を救いたい。そう書状に書いておりましたが、あなたがこれからやろうとしている事は、いわば侵略。つまりは戦争です。その際にはもちろん多くの命が犠牲になる事でしょう。

 あなたはその覚悟がおありですか?」

 ビスケット隊長が厳しい口調で問いかける。


「そんな事はもちろん理解しています。確かに多くの命が犠牲になるかもしれない。しかし、これから先、争いのない、命を奪いあう事のない世の中を築くためには仕方なのない犠牲です」

 ミラは曇りのない眼差しで言った。


「なるほど、あなたの覚悟はわかりました。どうやら本気のようですね。しかし、この場であなたとの同盟を私が決断するわけにはいかない。あなたにも一度、我らの国王に会って頂きたい」


「わかりました。すぐにでも伺わせていただきます」


「それに直接会って確認しておきたかった事もしっかり確認できました。

 どうやら、本物の魔女のようですね。あなたからは強大な魔力を感じる。そして、あなたの後ろにいるお方からも。

 この様子だと、3万の兵力があるという話もまんざら嘘ではなさそうだ」

 ビスケット隊長は関心したように腕を組んで僕の方を見た。


 ビスケット隊長の提案で、僕たちはそのまま彼らに同行し国王に会いに行くことになった。

 彼らは飛空艇で来ているらしく、ここからなら数時間あればシシリア王国まで行けるようだ。


 しばらく屋敷を離れることになるので、それなりの旅の準備をして、数時間後には飛空艇に乗り込み出発した。

 ムースは屋敷にお留守番。僕とミラの2人だけ行くことになった。

 僕は飛空艇に乗るのは初めてだったので少しワクワクしていた。


 飛空艇には乗組員が20名近くいる。この規模の飛空艇を飛ばすにはこれくらいの人数が必要なようだ。


 シシリア王国の人が周りにいないのを確認して僕はミラに声をかけた。


「いつのまにか同盟の手紙なんて送ってたんですか?」


「手紙を出したのは1月前くらいよ」


「しかも3万の兵力ってどういうことですか?まさかミラさんがそんな軍事力を隠し持っていたなんて」


「ふふっ、交渉の場では時にはハッタリも必要なのよ」とミラはくすくす笑っていた。


 ハッタリって、マジですか。ミラさん。


「ミラ様。かなり厄介な事になりました」

 突然、背後からビスケットの声がした。


「ビスケット隊長、何かあったのですか?」


「今しがた、シシリア王国からの緊急の伝言を鳥が運んできたのですが、どうやら国王が誘拐されたようだ」


 これは、かなり、とてつもなく厄介な事になったなと僕は思った。

読んでいただきありがとうございます!


「面白い!続きが気になる」

と思っていただけた方は


下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎マークから作品への応援お願いします。5つ貰えると嬉しいですが、正直に感じた星の数だけで大丈夫です。


ブックマークもしてもらえると嬉しい限りです。


今後もよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ