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第3話 魔女の野望....

 帰りの馬車の中で僕はミラにいくつかの質問をした。そして、ミラについてわかったことがある。


 ミラは本物の魔女の末裔で、両親はすでに亡くなっているということ。あの屋敷も元々両親と家族で住んでいた。年齢は18歳。魔女なのだから何百年も生きるのかと思っていたけど、どうやら違うらしく人間とさほど変わらないらしい。その質問に対したは、「あなたは魔女に対して幻想を抱きすぎ」と軽く怒られてしまった。

 でも例外がたまにいるとも言っていた。

 その例外については詳しくは語らなかった。

 

 そして、ミラは雷と光を扱う魔法が得意だという事もわかった。親方とのタイマンの時に僕にかけた魔法もその応用らしく、雷の加護をあなたに与えて、とか細かな説明をしていたけど、僕にはさっぱり理解できなかった。

 ミラが本気を出せば、あの場にいた全員を一瞬で皆殺しにできた、とムースが横から恐ろしい発言をしていた。

 その発言にミラは否定も肯定もしなかったので、もしかしたら本当の事なのかもしれない。魔女恐るべし。


 そして僕を山の中で見つけたことは偶然ではなくミラは僕のことを探していたらしい。

 どうやら強い魔力反応を感じて、それを辿ってきたところに僕がボコボコにされて倒れていたというわけだ。

 気を失ったことによって魔人の魔力が無意識のうちに漏れ出たのではないかとミラは言った。


 まだまだたくさん聞きたいことはあったのだが屋敷に到着するなり、

「はぁーなんだか疲れちゃった。お風呂入って一旦寝る」と言ってミラはそのまま屋敷の中へと行ってしまった。


 運び込まれて寝ていたあの部屋を自室として自由に使ってよいと言われたので、とりあえず僕も自室に戻ることに。

 自室のクローゼットの中にはたくさんの着替えあった。一体いつ用意したのだろうと不思議に思いつつも、僕はその中から服を選び着替えることにした。


 ベッドに横になり天井を見つめながら、あの時のことを思い出す。

 

 自分の体から溢れ出る炎。その炎から逃げ惑う人々。焼け落ちていく建築途中の建物や作業場。炎の色が目に焼き付いて離れない。

 獄炎の魔人。あんな力が僕の中に眠っていると思うと恐ろしくなった。

 ミラは僕のこの魔人の力をどうするつもりなのだろう。魔女の力と魔人の力を使って戦争でも仕掛けるつもりなのか?はは、まさかね。なんだか今日は疲れた。



 こんっこんっこんっ

 扉をノックする音で僕は目を覚ました。いつの間にか眠ってしまっていたらしい。


 「はい」ノックの相手に対して僕は返事をした。

 カチャと扉を開けて現れたのは、紳士的な見た目で、おじ様という言葉が似合いそうな男性。服装を見る限りこの屋敷の執事なのはわかる。


(ムース以外にも執事の人がいたんだ。この人はなんかとても優しそうな人だな)


「夕食の用意ができましたので食堂の方へ」


 わざわざ呼びに来てくれたことに対しての礼を言って、おじ様執事のあとを追うように食堂へ向かった。

 

 食堂には10人が座れる大きなテーブルと椅子があり、そこには豪華な食事が用意されているのだが、パッと見た感じだと3人分?

 ミラはすでに席についていて、

「もう遅いーお腹すいたーお腹すいたー」

 とただをこねるように言った。

 僕はちょっとだけ不思議に思いながらも席に座る。


「これ全部ムーちゃんが作ったのよー。凄いでしょ?ムーちゃんは料理の腕前も家事のスキルも最高レベルよねー、ねっムーちゃん」

 ミラがさっきのおじ様執事に向かって言った。

 おじ様執事は、滅相もございませんとニコニコしている。


 ん??ムーちゃん?このおじ様が?

 僕の頭からは恐らく無数の???マークが飛び出てたに違いない。

 それを察したミラが、

「あっこの人、ムーちゃん。人間モードの姿。ウサギのまんまじゃ色々とやりづらい事もあるでしょ?だから、私が人間に変化できる魔法をムーちゃんに教えたの」


 はぁーー?えっ?どういうこと?

「いやいや、魔法で人間の姿に変化できるのは何となくわかった。だけど、性格変わりすぎじゃないっすか?この人があんなに口の悪いあのウサギのムースさん?」


「なんでかわかんないけど、この姿になると性格が穏やかーになっちゃうみたい。しかも人間の姿のままだと逆にできなくなっちゃう事もあったりして。例えば治癒魔法とかね。私が教えた変化の魔法がどうやら失敗作だったみたい」

 ミラは笑いながらそう言った。


「いえいえ、失敗作だなんてとんでもない。この姿のおかげでたいぶ仕事がやりやすくなりました。感謝しております」

 とても紳士的なおじ様ムース。僕はずっとこのままの姿の方がいいんじゃないかと思った。


「この屋敷には他に住んでる人はいないんですか?」

 

「屋敷には私とムーちゃんと、そしてナキの3人だけよ」


 3人。つまり僕が来るまでは2人で住んでいたってことか。いや、元々両親と家族で住んでいたと言っていたはいたけど、それがいつまでなのかは聞いていなかった。


「あっそうだ。ナキも一応私の執事って事なんだけど、あなたは私の付き人というかサポート役っていうか、相棒みたいな感じで働いてもらうから」

 ミラは相当お腹がすいてたみたいで、ステーキを口いっぱいに詰め込みながら話し始めた。

 

「それでね、あなたには私の仕事に付き合ってもらうわけだから色々と説明しておかなきゃね」


「仕事の説明?」

 

 ミラは口の中に詰め込んだステーキをゴクンと飲み込んだあと、真剣な表情になった。

「まず、私達のいるこの大陸が元々ひとつの国だったことは知ってる?」

 


「まぁそのくらいは聞いたことはありますけど」


「でも長い長い内乱の末に今は東西南北に大きく4つの領土に分かれてしまった。私達のいるこの東の領土内も決してひとつにまとまってるとは言えない。大小様々な国が今も内乱を繰り返し続けているの」


「はぁ、確かにそうですね」

 僕は話の方向性が読めない。仕事の話じゃなかったっけ?


「東の領土の大半を実質的に支配してるのが "大国 クルハラ" そして、クルハラからの支配に対抗している国が2ヶ所。東の領土の大まかな構図はこんな感じ。今もずっと土地や資源を取り合って争いが続いてる。

 あなたが働いてたあの作業場で作っていたのも、クルハラの軍事拠点だったの。焼き払ってくれて正直ラッキーって思った」


 あれが軍事拠点だとは知らなかった。今思えば国の役人がやたらと口を出してきていたのはそのせいだったのか。


「私はね、そんな無意味な争いを無くしたいの。考えた、争いを無くすにはどうしたらいいのか。

 そして、答えがわかったの。国をひとつにすればいい。みんなが同じ国の仲間になって領土も資源も平等に分け与えれば、争いなんて起こらない。だから、私が国を統一する。この大陸をまたひとつの国にするの」


 あまりに現実離れした発言に僕は返す言葉が見つからない。国を統一?いくら魔女だからといって大国を相手に戦うなんて無謀すぎる。

 ん?あれ?これってもしかして僕の魔人の力もあてにされてる?


「私とあなたの力があればどんな敵が相手でもきっと勝てるわ。ほんといい拾い物をした」


 やっぱりあてにされてる。


 ミラは突然立ち上がり腰に手をあてて言った。


「私は大陸をひとつの国に統一するの。そして、人々が争わなくてもいい世の中にするの。それが私の野望」

 親指を立てて例のダサいポーズをして、ミラはニッと笑った。

読んでいただきありがとうございます!


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