プロローグ〜破滅の始まり
「僕がやったのか?」
目の前には見渡す限りの瓦礫と死体の山。空は赤く染まり、この世の終わりなのかと錯覚するほどの異様な雰囲気がある。
自分の手や体を見てみる。おそらくこの死体の山を築いたときに浴びた返り血だろうか。服も手も真っ赤に染まっていた。
「いたっ!」
頭に激痛が走ると同時に断片的に記憶が蘇る。町の人々を次々と殺していく様子。体中から溢れ出る炎によって家を焼き払う光景。
「そんな、そんな、僕は一体なぜ、こんなことを」
僕は頭を抱えながら、膝をついた。
「うわぁぁ、頭が、いた....い」
「誰か、誰かまだ生きてる人はいないのか?」
僕は激しい痛みが走る頭を抱えながら立ち上がりあてもなく必死に走った。
しかし、とれだけ走り回っても生きている人はおろか、一匹の生き物すら見つからない。
ふと何かに足を引っかけ派手に転んでしまった。
「いたっ!なんだ?」
そこには、小さな子どもを包み込むように覆いかぶさった女性の姿。背中は焼け焦げていて、絶命しているということは一目でわかる。
この小さな子どもと女性は親子だろうか?我が子を必死に守ろうと覆いかぶさったのだろう。
しかし、襲いかかる獄炎を女性の体ひとつで防ぐことができるわけがない。
「これも僕が?何の罪もない親子を、僕が殺した。なぜ、どうして、誰か、誰か教えてくれ」
ガラガラッ!
背後から瓦礫がぶつかる音がした。
僕が振り返ると、剣を持った男が立っている。
「ハァハァ、よくも町を、みんなを、この悪魔め、死ねー魔人」
男は勢いよく剣を振り上げ、僕に向かって走ってきた。寸前のところで僕は剣をかわす。
生き残りがいた?この人は僕を殺そうとしているのか?無理もない。町を地獄に変えた本人が目の前にいるのだから。
僕はこのまま殺されてもいい。
殺されても仕方のないことをしたのだから。
僕はこのままこの男の手によって殺されようと、決意し目を閉じた。
急に目を閉じた僕に対して少し警戒心を抱いたのか、男の動きが一種止まったように感じた。しかしすぐに、
「くそぉ、死ねーー」
男が声を上げて向かってくる。
そうだ。それでいい。このまま僕を殺してくれ。
首のあたりが熱くなる。
ドサッ、ゴロゴロッ
僕はゆっくりと目を開ける。
さっきまで僕の体だった肉体と僕の首と体を切り離した男が目を見開いている。
僕と男の目が合った。
ありがとう。僕を殺してくれて。
本当にありがとう。
そして、ごめんなさい。
だんだんと闇に包まれていく視界と薄れゆく意識の中で、僕ではない別の誰かのような思考が僕の頭に入ってくる。
俺の首を斬った男。お前の顔覚えたぞ。
必ず、殺しにいく。
そして、僕は死んだ。
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