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27   作者: 永瀬 楸
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序章

秋が夏を連れ去る匂いは僕を憂鬱にさせる、自分自身は何も変わらないのに、環境が変わるというものは心境を揺れ動かすことが得意なもなのだと僕はそう思う。僕がそう思い始めたのは2年前の夏の終わりだ、高校2年生の夏、僕は杞憂を持ちながら希望を横目に見ていた。

八月も終わりに近づき蝉の騒々しい鳴き声も鳴きやむ頃、僕は「自分の人生」について考えていた。高校2年生にしては考えるのが早いと思ったが、17歳という年齢はあと一歩で大人という年齢である、しかし、自分にはやりたいことや就きたい職業が見つからず、毎日学校へ行き、バイトで体を疲労させるという日々を繰り返していた。そんな中、僕が唯一興味を持っていたものは「音楽」である。音楽はいつでも僕のそばに居てくれて、まるで自分のことを歌っているかのように寄り添ってくれ、つまらない日々にも彩を与えてくれる。


夏休みも終わり、放課のチャイムがまだ青い空に響いた。学校終わりに渋谷駅のコンビニに寄り、いつも通りチーズ味のじゃがりことルイボスティー、あまりのまどろむような暑さに負けガリガリ君ソーダ味を買い店を後にした。ガリガリ君の袋を捨てようと視線を落とすとコンビニの外から見える黒を基調としパステルカラーで派手な装飾をされている一枚のポスターに目が留まった。「27」というバンドのライブのチケット販売のポスターである。聞いたことはないがロックバンドと言うことは一瞬でわかった。


家に帰ってパソコンを立ち上げた、調べてみると高校2年生のバンドで自分と同じ年齢ということにもの興味を持った。今はギターメンバーが居なくサポートメンバーを加えてライブをしているらしく、ギターメンバーを募集中みたいだ。次のライブは今週の金曜日八月二十七日、どんなバンドなのか僕はライブを訪れることにした。


「ごめーん!お待たせ!」少し声の高い鼻にかかった声がした、待ち合わせ時間に遅れてきたのは高校の友人の秋斗だ。秋斗とは幼馴染で、クラスではムードメーカーでよくふざけたことばかりしている。この前の1時間目の早弁は授業中に笑いをこらえるに必死だった。秋斗とは音楽の趣味がよく合い、休み時間はよくバンドの話ばかりしている。

「お前何遅れてるんだよ」僕は無愛想にそう言うと

「うわ!出たその無愛想な感じ!後でなんか奢ってやるから!」と答えた。これはいつもの事で僕らにとっては普段通りである。

「そう言えば秋斗、最近バンドの方はどうなんだよ」「そこそこかなあ、お客さんは知り合いばっかだし、隼がいた頃よりは圧倒的にお客さんは少ない。」僕は何も言わずに話を終わらせた。

僕と秋斗はバンドを組んでいた。リードギターの秋斗、ベースの柊弥とドラムのフレンの4人のメンバーだ。バンド名は『Evening Rain』日本語にすると、「宵の雨」、正岡子規の「水草よ 花の白さよ 宵の雨」からとったものだ。バンドの設立者は僕、作詞作曲は主に行っており、ギターボーカルを勤めていたが、今年の八月に解散した。僕がバンドにいた時は1000人の箱を埋める位の集客率を誇っていた。そんな僕がバンドを脱退した理由は当時付き合っていた恋人が他界した事だ、丁度夏の終わり、今頃の話だ。

 当時の僕は、音楽作成にやけくれていた、秋斗と柊弥とフレンと作る音楽が生きがいとなっていた。

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