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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第六章「降臨、天の使者」
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「降臨、天の使者」part8

「このサンドイッチうんまぁっ!リーフちゃん、手前のお嫁さんになってください!」

「ダメだよ!リーフちゃんにはルルちゃんがいるんだから!」

「わたし達はそういう関係ではない!」

「お前ら楽しそうだな」

「ですね」


 俺たちは見晴らしのいい広場にレジャーシートを広げてリーフの弁当に舌鼓を打っている。ゲストからの称賛を受けリーフも嬉しそうだ。


「お肉気に入ってくれてよかった。リーフちゃんのお料理はぜんぶサイコーだよ!こっちも美味しいよ。えっと、天使……ちゃん?」

「ああ、呼び名なんて自由でいいですよ」

「名前はないのか?」

「手前は天使である。名前は特にない。お気軽に『天使』でも『天ちゃん』でも『テンテン』でもお好きなようにお呼びください」

「んじゃ天ちゃん!」

「はーい。いやぁ、みなさん楽しそうだしご飯も美味しいし、トールくんは幸せ者っすね」

「ああ。毎日感謝してるよ」

「このからあげもうまいな。天ちゃんもどうだ。いかん、酒が飲みたくなる」

「こんなちっこいのにお酒だなんて、背伸びしちゃって。かわいいっすねぇ」

「背伸びなんぞしてない!撫でるな!わたしは地元では眼を見張るほどの長身だったんだぞ!背伸びなど必要ない!」

「眼を見張るほど可愛らしいですしね」

「ん、むう……、どうも」


 照れたルルかわいいな。


「興味深いですが、やはり鶏肉は遠慮しておきます。うん、この肉巻きおにぎりもおいしいっす!」

「喜んでもらえてよかったよ」


 申し訳ないことにリーフの弁当にはほとんど野菜が入っていなかったため、彼女には随分驚かれてしまった。


  ・・・・・・・・・・・・


「驚きっす……。よもや、お弁当の中身がこんなにもお肉ばかりとは……」

「ごめん、俺たちも慣れ始めていたのでそう言ってもらえて助かった」

「リーフ、料理の手間が増えてすまないが、もう少し野菜を食べさせてくれないか」

「カミングアウトする前は、もうちょいお野菜食べさせてくれたし、もちろんリーフちゃんはお肉オンリーでいいからさ」

「そうですか。残念です。お野菜はジャガイモとトウモロコシを炒めたものにトマトケチャップを付けているので十分かと思ったのですが……、申し訳ございません」


 トマトケチャップがかかっているからピザは野菜と言い張るアメリカ人かよ。俺も肉か野菜なら肉のほうが好きだが、ここまで肉ばかりだと流石に飽きる。野菜が恋しくなるという感覚に驚いた。

 リーフは本当に丁寧な性格なので、かなり深々と頭を下げてくるのも意見を言いづらい要因の一つだったりする。


「ま、まあこれから気をつけてくれればそれでいいさ」

「ジャガイモもトウモロコシも好きだけど、もうちょっと炭水化物以外でお願いしたいかな、なーんて……。よろしくね」

「リーフの料理は全部美味いし今まで一度もハズレがなかったから、これからも期待しているぞ」

「ルルさん、このようなわたくしには、本当にもったいないお言葉です。痛み入ります。エルフの誇りにかけて精進いたします」


 リーフは間違いなく良いやつなのだが、どうにも重いのが玉にきずだ。


「お肉が多いけど大丈夫?」

「芋もあるけど、どうだ?」


 オリサとルルがゲストを気遣っている。


「うーん、手前はやはり神の使いですので、動物性のものは控えているのですが。そもそも、みなさん異様に栄養の偏った生活してるんすね」

「やっぱそう思う?」

「申し訳ございません、以後気をつけます」

「できるところからでいいからな。いつもありがとう」

「でもまぁ、神様もビール飲んだりビーフジャーキー食ったりしてたし、少しぐらいなら良いんじゃないかな」

「え、ビーフジャーキー!?それって牛肉っすよね?」

「あ、ああ、そうだけど」


 余計なことを言ってしまっただろうか。


「神様は常々『人間は神聖なものとして酒を奉納するが、心を惑わす酒は飲んではならん。また、獣の肉を食べるのも好ましくはない。ゆめゆめ忘れぬようにな』とか言ってたんすけど。あのハゲ……」


 たしか俺は初対面でいきなり酒を勧められたのだがな、当の神様に。日本のルールじゃダメだと言ったら大人の身体は出来上がってるから大丈夫とか言ってた。未成年飲酒を推奨すんなよ。


「あ、でも『他に飲食物が無い場合以外は控えろ』って言われたので、今は少しくらいならいただきます。せっかくお誘いいただいたのに無下にしてしまうほうが悪だと思いますので」


 この天使は応用力がある。


「それがいいよ。みんなで楽しく食べるのが一番!」

「オリサの言う通りだ。神様に報告したりしないし、気にせず食べてくれ。リーフの料理は美味いぞ」

「そ、それではありがたく」


 オリサとルルの言葉が後押しになり、天使は俺もお気に入りのビーフパストラミサンドを手に取った。


「それでは、お招きいただいたみなさん、作ってくれたリーフちゃん、この生命に感謝していただきます」


 命に感謝か、さすがは天使。

 こうして彼女はリーフを嫁にしたいほど感動したというわけだ。

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