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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第六章「降臨、天の使者」
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「降臨、天の使者」part5

「立派な建物ですね。心が洗われるようです」


 子供の頃から何度も足を運んでいる境内を歩いているが、改めてそう言われると歴史を感じる良いお寺のような気がしてきた。良い寺悪い寺という基準は何もないのだが。


「わたしは特別に宗教を信じているわけではないが、確かに厳かな雰囲気があるな」

「うん、いい雰囲気だね。走り回ったら怒られそうだし」

「怒る人はいないけど、やめろ」


 なんと罰当たりな。


「この桜って花、本当にきれいだねぇ」


 まだ二分咲き程度といった具合だが、それでもオリサは気に入ってくれたようだ。


「桜の花が咲いてる期間はだいたい二週間ぐらいで、どんどん散っちゃうんだよ。これから満開になったらすぐに花は落ちていく。咲いてる様子ももちろん人気だけど、『桜吹雪』って言葉があるぐらい散る様子と儚さも人気なんだ」

「へー、でもずっと咲いててくれたほうがあたしは嬉しいなぁ」

「オリサの言うこともわかるが、わたしはその散る様子もぜひ見てみたい。動画で見たが実物はまた美しいのだろう」

「ルルさんは日本人的な感性なのかもしれませんね」


 まだまだ木の幹の茶色と空の青が視界の大半を占めるものの、こうして見るとたしかにきれいだな。今まで桜に対し特別な想いを抱いていなかったのがもったいないくらいだ。昔から日本人にも日本を訪れた外国人にも人気があったというのがよくわかる。


「それにしてもさ、だれもいないはずなのに案外きれいだね」


 そういえば確かに不自然なほどきれいだ。春先とはいえ、誰も歩かず掃除もしない道にはあっという間に葉っぱが散乱し始めるというのにこの生活になってから気づいたのだ。

 それに、人がいなくなった道は木々に鳥がよく来るようになり、必然的に鳥の『落とし物』も残されやすくなる。しかし、今見える範囲にはそれがまったくない。


「確かにな。誰も手を加えていないはずなのに、日々掃除されてるかのようにきれいな気がする」

「風で木の葉が飛んでいくにしても、ここまできれいにはいかないでしょうし」

「トール、少し散策してみるか」

「だな」


 丁度いい機会なので、普段参拝するときには行かないところまで隅々見て回ることにした。

 同意した直後に後悔したが、腹が減っていることだしメシを先に提案すればよかった。既にオリサを筆頭に三人とも冒険モードの目になってしまったので武士は食わねど高笑い、いや、高楊枝だ。


「あれ?みんな、ちょっと来て!」


 一人で少し先を歩いていたオリサがこちらに手を振って呼びかけてきた。


「どうした?」

「あれ見て」


 オリサの指差す先には鳥がいた。鶏より二周りは大きく、青い体とその体以上に長い羽が特徴的な。


「あれって……」

「クジャク……だな」

「羽を閉じているが、雄のクジャクだ」

「でも、変ですね。飼育されていたものでしたら、先ほどの小屋で止まっているはずですね」

「ええ、ええ。そりゃあ手前(てまえ)がお世話しておりますからね」


 突然聞き覚えのない女性の声が聞こえた。

 ルルは背中に背負っていた斧を手に取り腰を落とし身構え、オリサも杖を持ち直し俺の傍に近づいてきた。本来聞こえるはずのない声を聞き、二人共ひどく警戒している。

 よく見ればリーフもまた腰を落とし、本堂の方角を向き目を細めている。


「そんなに警戒せんでくださいよ。手前は敵じゃありません」

「あそこです!」


 リーフが指差す先には本堂から大きく手を振る人物がいた。ジーンズに白いシャツと実にラフな格好の女性だ。

 既に臨戦態勢に入っていた二人に続き、リーフもいつ取り出したのか金属製の細い棒と短剣を左右の手に持っている。あれ。あの金属棒というか鉄串、見覚えがある。

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