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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第六章「降臨、天の使者」
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「降臨、天の使者」part2

「それなら、午後はあのお寺に行ってみようか」

「さんせー」

「山の中にあるように見えるが、遠すぎたりしないか?」

「大丈夫だよ。ここから車でだいたい十分ちょいぐらいかな。あー、そうだ、ちょっと待った……」

「どうしたの?」


 そういえばあそこへ行くための山道は舗装されているが、まだ車道を走り始めて二か月の初心者には不安な道だ。


「いや、よく考えたらあそこに行く道は曲がりくねってるから俺の運転じゃ少し心配でな。歩いても行けるけど」

「歩くとどのぐらいだ?」

「ここからだと大体一時間ぐらいかな。当然上り坂だから、ちと疲れるなぁ」


 以前、歩いて参拝したときのことを思い起こしながら答えた。道中、歩道がほぼないためカーブの先から車が来やしないか注意しながら歩いた記憶がある。

 もっとも、今の世界では対向車が来ることはないのだが。


「それでしたら、馬を使いませんか?トールさんは乗れないと仰っていましたが、わたくしが乗り方をお教えしますよ」


 馬か。たしか、年中行事のときは寺まで馬と乗馬クラブのスタッフが歩いて移動していたはずだ。なので、馬であそこまで行くこと自体は問題ないだろう。あとは乗り手、つまり俺がしっかりできるかどうかが問題だろうが、リーフが教えてくれるならこれも大丈夫だろう。


「それじゃリーフに馬の乗り方を教えてもらおうかな」

「はい、お任せください。オリサさんは乗れますね」

「うん、心配ごむよー!」

「オリサ、すまないがわたしはオリサの馬に乗ってもいいか?」

「いいよ。ルルちゃん馬はダメ?」

「身体の大きさ故に普通の馬は難しい。ドワーフはたいてい小馬に乗るものだが、我が家にはいないしな。わたしだけバイクというのも味気ないだろう」

「ルルさんの身長でしたら、練習して通常の馬に乗ることもできると思いますよ。今までに出会ったドワーフのなかでもとりわけ背が高いですし」


 ルルがドワーフにしては長身というのは聞いているが、『これで?』と言いたくなった。もちろん止めておくけど。


「前にもそんなことを話していたな。そのうち気が向いたら練習してみるさ」

「なら、今日はあたしが安全運転で頑張るよ」

「助かる」


 子供の頃から親しんだあの寺に想いを馳せていて思い出した。


「寺か……」


 幼いの頃の思い出が脳裏をよぎった。


「何か思うことが?」

「子供の頃、小学校の写生会であそこまで歩いて登って絵を描いたなって思い出したんだ。桜が散り始めた頃だったから、入学してすぐの四月はじめくらいかなぁ」

「あー、前に言ってたやつだね」

「そう。リーフとルルは桜ってわかるかな」

「『サクラ』と聞いては黙ってなどいられません!この世の幸福の全てが詰まった美しき秘宝!ズバリ、馬のお肉です!」


 違う、そうじゃない。


「はぁ……、リーフ、落ち着け。桜というのは花だ。桜肉という表現は桜色だからだとか『ウマ』という直接的な表現を避けるためだとか色々あるらしいが、とにかく花が先で肉は後だ」


 ルルは知っていたらしい。


「なんということでしょう……」

「そんなこの世の終わりみたいな顔しないでくれよ」

「まあ実際に終わる寸前の世界ではあるが」


 俺が死ねばこの世界もおしまい。笑えねぇ。


「その寺は桜が有名なのだな」

「ああ。山にあるから景色もいいし」


 正直、日本中色んな所に桜は植えられているから有名なところは山程あるんだけど。


「それなら桜の季節になったときにも見に行きたいなぁ」

「満開とは言わないまでも、今も少しは咲いてると思うぞ。今日行ったときに見てみようか」

「提案しておいて恐縮なのですが、よくよく考えてみれば今日乗馬訓練をしてすぐに行くのは些か難しいかと思います」


 泣きそうな顔をしていたリーフが生き返った。


「たしかに、今日一日で馬の勉強をしてすぐ遠足なんて無謀もいいところか。寺は逃げるわけじゃないし、しばらくは俺の練習とさせてもらおうかな」


 結局、今日の午前はいつもどおり家畜の世話をして午後はリーフ主催の乗馬レッスン、出かけるのは明日以降ということになった。

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