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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第五章「一人の世界 一つの家族」
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「一人の世界、一つの家族」part8

「実はみんなと初めて会ったとき、リーフは異世界の女神様なのかと思ったよ。それぐらい神々しかったし、きれいだから」

「滅相もないお言葉です」

「気持ちはわかる。わたしもエルフにはほとんど会ったことがなかったから、身長含めてたじろいだ。ちなみに、わたしにはどんな感想を抱いた?」

(まさかり)担いだ小学生」

「なんだと!」

「小動物?」

「オリサ!」

「今まで出会ったドワーフ族でも群を抜いて長身ながらも誰より愛らしく、心を奪われてしました」

「そ、そうなのか。ありがとう」


 照れてるルルかわいいな。


「それでは、オリサさんのことはどう思われたのですか?」

「わたしは知っているぞ」

「やめて」

「あたしも知ってるー」

「あー、リーフ、そのチーズ美味いぞ。あと、その缶詰の焼き鳥も」

「お話を伺ったらいただきましょうか、ふふ」


 柄にもなく、リーフまで楽しそうな顔をしやがって。


「オリサも俺と同じ日本人、それかアジア人かと思ったよ。ほら、肌も髪も俺と同じだろ?な?」

「なんでも、オリサと初めて会ったときからずっとかわいいと思っていたとか」


 うおぉぉぉぉい!


「あらあら」

「へへー、トールはよくわかってんじゃん」


 オリサが嬉しそうにさっき俺が指差したチーズを顔の前に差し出す。そのままそれに(かじ)りついた。


「どーも。うん、やっぱこのチーズうめぇや」

「それはオリサさんが食べさせてくれたからですよ。ふふふ」

「トールはかわいいなぁ、へへへ」


 頭撫でるなよ!


「もういいだろう」


 あー、顔が熱い。誓いに反するけど今日飲んじゃおうかな。



「この湖には白鳥がたくさんいてな。近くで撮るのを忘れてしまったが、思いの外大きくて驚いた」


 リーフが膝の上のルルが持つタブレットを食い入るように見つめている。


「平和で美しい景色ですね。いつの日かわたくしもこの湖へ行ってみたいものです」

「じゃ、次の旅行はリーフも連れてだな」

「いいねぇ」

「他にも見せていただけますか。みなさん楽しそうです。ああ、素敵ですね。楽しそうな瞬間瞬間を残せるとは、写真というものはなんと素晴らしいのでしょうか」


 今度、カメラをあげようかな。



「いつのことでしょうか。友人と共に立った戦場(いくさば)で、どちらが多くのオークを射貫けるか競争しました。あれは楽しかったです。ふふ、どんな場所であろうとも、娯楽は存在するということを学びましたね。頭や心臓を射抜き一射で動かなくさせたら高得点なのです。自慢ではございませんが、わたくし狙いは外せないものでして負けなしでした。さすがに心をお読みになる神様は別ですけれども。ああ、『多くのオーク』は洒落で言ったわけではありませんよ。ふふふふふ」


 よかった、オリサもルルも笑っていない。オヤジギャグは言うまでもなく、『戦場で首級(しゅきゅう)を挙げる競争をして楽しかった』という話に笑えないのは俺だけじゃなかった。安心した。



「そういえば、かつて若いドワーフの方に大層気に入られまして。わたくしの髪が欲しいとおっしゃったのです。そこで少し差し上げたのですが、ルルさんがわたくしの髪を気に入ってくださった様子を見て思い出しました。懐かしいものです。彼は元気でしょうか。ルルさんと同じ栗色の髪をしていました。身長はルルさんのほうがずいぶん高いですけれども」

「ちょちょ、ちょっと待て!もしやそれはわたしの村の宝ではないか!?はるか昔、ドワーフにしては珍しくエルフと友人になった男が別れの際にもらったものだ。しかもその男というのがわたしの曽祖父でだな、えっと、その髪は水晶に入れられ大事に飾られている!リーフに出会ったときから、リーフの髪は村の宝の髪と同じ色だと思っていたのだが」


 本当に同じ世界からの来訪者だったうえに、案外接点があったらしい。ドワーフの感覚で『はるか昔』って何年前だろう。


「さっき神様と話したときに言ってたけど、ルルとリーフって同じ世界から来たらしいぞ」

「ま、待てよ……、それなら!リーフ、あの短剣を見せてくれ!」

「はい、どうぞ。ああそういえば、これはそのドワーフの友人が作ってくれたのです。刃こぼれし難い短剣が欲しいと話したら彼が作ってくれまして。ドワーフの作る武具は信頼できるものばかりで大変お世話になりました。若かりし日の思い出です。お礼に何が欲しいか聞いたらわたくしの髪を三本だけと。ああ懐かしい」

「ル、ルルちゃん?震えてるけどどうしたの?」

「飲みすぎたか?」

「間違いない。こ、これはわたしの曽祖父が作ったものだ!」

「あらあら、あの子、独身だと言っていたのに。こんな可愛らしい曾孫が生まれて。月日が流れるのは早いものです」


 六十代のルルのひいじいちゃんを指して『あの子』だって?頭が痛くなってきた。



「そういえばリーフちゃんって本当に雨の中でも話し声が聞こえるんだね。昼間、急に叱られてびっくりしたよ」

「ええ、あのときは二階のベランダにいました。戦闘で気分が高揚していたとはいえ、大きな声を出してすみません」

「いいのいいの」


 作戦を立案したり指揮したり、手慣れた様子で弓矢と短刀を扱ったり、リーフって本当に何者なんだろう。気になるけど聞きづらい。



 相変わらずリーフの冗談は笑いどころのわからないものばかりだったが、四人でおしゃべりに興じる夜は更けていった。

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