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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第四章 「手をとりあって」
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「手をとりあって」part16

「お兄ちゃん、ぼんやりしてどうしたの?」


 ユリ!お前なんでここに?


「え!?なんで泣いてんの!?」


 みんなは夢?そんなはずない。あの三人組は?


「トール。妹さんとか、みんな帰ってきて良かったね。でも、これでお別れなんだね……。今まで本当にありがとう。元気でね!あたし、この世界でのこと忘れないよ!」


 オリサ?お前どこ行くんだ。


「さらばだ。もう会うことはできないが……お前に受けた恩、皆で過ごした日々は忘れない。これで……いいんだ!」


 おい、ルル!いいと思うならこっち向けよ。泣いてるだろうが!


「短い間ではございましたが、大変お世話になりました。どうか……、どうかお幸せに。離れていようともわたくしの命ある限り永久にみなさんを想い続けています。さようなら……」


 リーフ、そんな顔してどこに行くんだよ!みんな、ダメだ行くな!


「すまないな、お主ら。この世界の本来の住人が帰ってきた以上、こうしなければならんのだ」


 やめてくれ!みんなを連れて行かないでくれ。なんでだよ!神様!俺が何したんだ!


「この世界の人達が帰ってきたんだから、それで良かったんだよ……。いいんだ、これで。あたし達は戻らなきゃ。…………・ごめん、やっぱり嫌だよ。戻りたくないよ……。神様お願い、お願いだからやめて!あたしはみんなと一緒にいたい!嫌だ、嫌だよ!トール!ルルちゃん!リーフちゃん!やだ!いやだっ!」


 なんでだ神様!おい!みんな行くな!ルル!リーフ!




「オリサッ!」

「ひゃっ!え、何?なに?」

「な、なんだ!?トール!?どうした!大丈夫か?」


 薄暗い空間で必死に声のする方へ手を伸ばす。


「オリサ!よかった。ルル!いるな」


 体を起こし、左右にオリサとルルがいるのを確認して一安心した。いや、一人足りない。


「リーフ?リーフは!?」


 返事がない。どこだ、リーフはどこに。


「オリサ!リーフだ、リーフがいない!どこだ!リーフ!リーフ!!」

「トール、落ち着いて!リーフちゃんは家だよ!」

「トール!おい、トール!落ち着け!」

「ああっだ!いでででで!」


 ルルの声が聞こえた直後、右肩に猛烈な痛みが走った。見ればルルが俺の肩を握っていた。


「ルル、痛え……」


 昼間、一瞬で鉄くずになってしまったコーヒー缶を思い出し戦慄する。

 昼間?コーヒー缶?


「え?ああ、そうか。俺たち出かけてるんだ……」

「すまなかったな。錯乱していたから痛みで無理やり落ち着かせた」


 容赦ないけど驚くほどあっという間に頭が切り替わった。いつの間にか明かりが灯り豪奢な部屋を照らしていた。


「ありがとう。なんとか落ち着いた……かな。二人ともごめんな……」

「トール、すごい汗だぞ」

「ホントだ。ベッドも服もびしょびしょだよ。え、泣いてるじゃん!大丈夫?」


 顔に触れたら確かに泣いていたようだ。寝ていたはずなのに体が重い。気分が悪い。


「す、すまん。そこまで痛かったか?」

「いや、そうじゃなくて……。ごめん、また変な夢見てたっぽい。起こしちゃったな。本当にごめん」


 嫌な夢だ。酷い疲労感と共にベッドに倒れ込んだ。うわ、汗で濡れてる。気持ち悪い。ベッドが冷てぇ。


「ああ……、ほんっとうにごめん。マジですまん……」


 顔を隠すように仰向けの頭に手を置いた。嫌な夢見たからって夜中にでかい声出して二人を起こして、何やってんだよ。情けねえ。


「わたし達のことは気にするな。お前、いつもこうやって夜中に飛び起きていたのか?」

「いや、こんなに汗だくで起きたのは初めて。あぁ、ひでぇ姿だな俺。ごめんな」

「トール、冷えちゃうよ。お風呂で温まってきたら?ここ拭いておくから」

「ああ、そうだな。ごめん、手間かけさせる」

「気にするな」

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