「手をとりあって」part14
初めてバスローブなるものを着たがなんだか不思議なものだ。丈の長い道着を着ているような感じか。空手着はもっと硬いけど。このまま寝間着として使うのはマナーとしてどうなのかわからないが、面倒だからそのまま使わせてもらおう。
「次、どうぞー」
「トールおかえり~」
「トール、ちょっと教えてくれ。これはなんだ?」
手渡されたのはクリアピンクでべろんべろんで筒状の謎の物体。なんだこれ。表面は極薄く油かなにか液体が塗られているような気がする。ヌメッとしてなんか気持ち悪いな。
「なんだろこれ。どこにあったんだ?」
「この枕元の小物入れ。お部屋をいろいろ見てたら見つけたんだ。なんかお菓子みたいな袋に入ってたんだけど、食べ物じゃなさそうだし。最初は真ん中に膜の張った輪っかみたいな形だったんだけど、クルクル~って回したらびろーんって長くなったの」
「これはゴムでできているよな?わたしの手袋より遥かに薄く作られている。厚さは何ミリだろうか。とんでもなく薄い。何に使うものかわからないが、凄まじい技術だ!」
とんでもなく薄いゴム、枕元にあった、この輪っかの大きさ、そしてここはラブホテル……。
「ああ……」
「わかったのか?」
「あの、そうだな……、オリサ、先に風呂に入ったらどうだ?説明長くなるから、風呂でルルから聞くといいだろう」
「別に一緒に聞いてもいいじゃん。んー、まぁ、お風呂好きだし、それでいっかな。それじゃ、ルルちゃん、あとで教えてね~」
「ああ、わかった」
「これだけどな、えー、あー……」
「どうした?」
ああ、もう、覚悟を決めろ!
「これこれ、こんな場面でな」
「は?」
「こういうわけで、大事な人と安全に」
「ほ、ほう……」
「というか、実はこのホテルは『ラブホテル』って言ってこんな目的の場所で……」
「なんとぉ!」
「わかった?」
「わ、わかった。いろいろと驚かされた」
「そんじゃ、オリサに説明よろすく」
「ど、どう話せばいいんだ!」
「知らんがな!ほら、風呂に行け!」
「これが『身から出た錆』というやつなのか……」
そう言い残して顔を真っ赤にしたルルは風呂場へと消えていった。
・・・・・・・・・・・・
「ああぁぁぁぁぁ、マッサァァジチェアァ気持ちえぇぇぇぇ」
「トールかなり疲れてたんだね。あたしそれ使っても痛いだけだったよ」
農作業と家畜の世話で思っていたより疲労していたらしい。
「『ラブホテル』で調べてみたが、これは面白いな。場所によってはお望みのプール付きの施設もあるそうだ。大きなスクリーンや温泉のある施設もあるらしい。せっかくだから明日もラブホテルに泊まらないか?ここから行ける距離のようだぞ。初めて来たと言っていたし、お前も興味のある年頃だろう」
最後の部分が余計なお世話だ。
ブルーライトカット眼鏡をかけたちびっ子(六十一歳)にラブホテルに誘われてしまった。
「んじゃ、プール付きのホテル調べてくれぇぇぇぇ」
「わかった」
「リーフちゃん、いま何してるかなぁ」
「淡々と肉の加工してるかもなぁぁ。あぁこの椅子持って帰りてぇぇえぇぇ」
「車に乗らないから諦めろ。重そうだし、後日トラックで取りに来るときは手伝ってやるから」
「ありがとおぉぉ」
今回更新の内容を書くにあたり、らぱ☆先生の「趣味のラブホテル」という漫画を参考にしました。全3巻で完結済みのため、興味を抱かれた方がいればぜひ注文してみてください。
なお、このお話の内容は特定のホテルをモチーフにしたわけではありませんが、部屋が豪華で驚いているオリサ達の様子が伝われば幸いです。
らぱ☆先生、ありがとうございます。この後のお話でもちょいちょい参考にさせていただいております。