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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第四章 「手をとりあって」
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「手をとりあって」part12

 さて、今夜の宿を探すことになったわけだがどこにしよう。といっても、特にこだわりもないのである程度清潔ならそれでいい。せっかくならいいところに泊まりたい気持ちも無いことはないが、どこらへんに高級ホテルがあるのかなんてわかりゃしない。ルルのタブレットで調べてもいいけど、正直めんどい。なんとやる気のないことか。

 というわけで、駅前にはいくつもホテルがあったはずだからそこでいいだろうということを考えつつアクセルを踏み込んだ。


「ルル、初めて見た白鳥はどうだった?」

「遠くから見てそれに満足できるならそれが一番だと学んだ。愛らしいからと触りたいなんて迂闊(うかつ)に思うべきではない。ましてや実行なんてな」

「あたしは結構楽しかったよ。さすがにちょっと怖かったけど」

「後になって思えばいい笑い話だ。リーフに話すか否かは悩ましいが」

「とりあえず、今夜の宿を決めようか。まあこの辺りはホテルがたくさんあるはずなんで二人が気になったところでいいよ。良し悪しなんてわからないし、フィーリングで。気になる看板あったら言ってくれ」

「あった!」

「はやっ!」


 即座に助手席から声が上がる。俺の発言を待っていたのだろうか。


「あのホテルの看板きれいで気になる!」


 速度を落とし、オリサの指差す先を見ると確かに独特な色使いの看板が見えた。


「確かにあまり見ない雰囲気だな。面白い」


 ルルもオリサに同意らしい。


「なるほど……」


 確かに『ホテル』って書いてあるけど、あれってもしかして……。とりあえず看板へ向け車を走らせた。

 車を走らせ目的地に近づくにつれ、俺の疑念は確信に変わった。


「ん?窓が少ないような気がするが……。採光を気にしないとは、この世界の建物にしては珍しいな」

「えっと、『休憩4990~、宿泊7990~』きゅうけい?」


 ラブホやないかい!

 それはマズイんじゃないかなぁ。どんな施設なのかすごく気になるお年頃だけど、何も知らない女の子二人を連れ込むのはダメなんじゃないかなぁ。いや、やましいことは何もしないけど。しないけど。たぶんしないけど。興味津々ではあるけど。どんなところか気になっちゃうけど。でもダメでしょう、俺。

 あ、よく考えたら俺はもう十八歳だし高校の卒業式の日は過ぎてるから高校生じゃないはずだし、それなら気にせず入っていいんじゃない?いいのかな?いいよね?何もしないし。

 しかも法なんてないって神様からお墨付き貰っちゃってるわけだし。二人と別の部屋で寝れば一人で何してもいいわけだしさ。あれ?わざわざこんな施設に来てるのに結局一人って寂しくない?

 などと頭の中で臨時会議が行われる。最終的には透ちゃん評議会の全会一致で青信号が灯り新たな世界へ歩き出そうという結論になった。

 評議会のみなさんお疲れさまでした。フォースと共にあらんことを。評議会の偉い人、サミュエル・L・ジャクソンに似てた気がするな。


「トール、先程は何か渋い顔をしていて今は何か嬉しそうな顔をしているぞ。どうした?」


 ルルの問いかけで我に返った。

 いや、ダメだろ!何も知らん二人を連れてこんな施設に入ったら!脳内評議会の連中、テキトーに許可出したな。雰囲気だけ偉そうにしやがって。危ない危ない。


「あー、えっと、あそこは、そうだな。あそこはな、お互いに愛し合う人たちが行く場所かな。だからちょっと違うっていうか……」

「は?ちょっと待ってよ!」

「トール、聞き捨てならんぞ!」

「あたしたち、トールのことすっごく大事に思ってるよ?」

「そうだ、お前の家族程ではないかもしれんが、わたし達はお前を愛している。胸を張って言える。心からだ。お前はどうなんだ?」


 ユリ、元気にしてるか?兄ちゃんは今、女の子にすっごく怒られてるよ。ラブホに入るか否かで。俺は入らない方向に話を持っていこうとしたんだ。本当だよ?何もしないつもりだけど、それにしたって、どんな施設なのかよくわかってない女の子を連れて入るなんて兄ちゃんどうかと思うじゃん?しかも二人。俺は紳士でありたいんだよ。

 だったらどんな施設か説明しろって?やだよ、恥ずかしいし。

 なんだ、この状況。

 嬉しいけど俺の言いたいことが上手く伝わってない。そもそも彼女たちの世界にこんな施設がなかったから伝わらないのかもしれないけど。


「え、えー、あの、もちろん二人とも大事だ。リーフもな」

「あたしたちのこと大切に思ってくれてる?」

「ああ……」

「我々を愛しているのか?どうだ?」

「も、もちろん」

「んじゃ、あそこで正解じゃん!」

「『渡りに船』と言うのか?何を迷うことがある」

「……じゃあ今夜はあそこに泊まろうか」


 年頃なのでそういう施設に興味があるのも事実。仲間のOKをもらったという責任転嫁をしつつ、緊張感とワクワク感を併せて抱きながらアクセルを踏みしめた。

 何もするつもりないってのは本当だし。

元ネタ集


・「透ちゃん評議会」「フォースと共にあらんことを」「サミュエル・L・ジャクソン」

スターウォーズEP1~3のジェダイ評議会とサミュエル演じるメイス・ウィンドゥより。

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