表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/213

第九章「ユリの帰還」part18

「あー、泣いだな」

「うー、だいぶ泣いじゃっだ。ディッジュどこだろ」


 兄妹そろってすごい鼻声だ。


「わがらん。立つのめんどい」

「ざがじでよ」

「嫌だよ、もう寝だい」


 ズズ、グス、グシュ……


 落ち着いて冗談を言い合っていたと思ったら、何やら妙な音が聞こえてきた。なんなのかわからず困ってしまう。それはユリも同じだったらしい。二人で困惑の表情を浮かべて音のした方に視線を送るとユリの向こう、もう一つのベッドの掛け布団が小刻みに揺れていた。

 まだ起きてたのか。


「あー、オリサ、泣いてくれてありがとうな」

「うん……ふだりども、あえでよがっだ」


 号泣じゃねぇか。


 ユリも笑顔を浮かべている。


「ねえ、三人で寝たら狭いかな?」


 さすが兄妹だな。


「ちょうど同じこと提案しようと思ってた」

「ふふ、オリちゃん、おいで。一緒に寝よ?」

「い、いいの?」

「ああ、ちょっと狭いかもしれないけど」


 俺たちの返事を聞くが早いか、オリサはボックスティッシュを手にこちらのベッドへと近づいてきた。


「真ん中に寝るといいよ」

「でも、トールの隣はリリちゃんが」

「いいの。うち、オリちゃんのこと大好きだから」

「ありがどう」


 真ん中に寝転んでユリを抱きしめたオリサを、俺は背中から包んだ。


「これだとオリサは暑いかな」

「そのときは掛け布団をちょっとめくればいいっしょ。ね、オリちゃん?」

「ふだり、ども……んぐ、よがっだ、ね」


 話、聞いてねぇ。


「俺達のために泣いてくれてありがとうな」

「これからも、家族としてよろしくね、オリちゃん」

「うん、ふだり、ども、だいずぎ、だよ」

「オリちゃん、お兄ちゃんの面倒を見てくれてありがとうね」

「うん。んぐ、よがっだね」

 

 なかなか泣き止まないオリサに俺たちはつい笑ってしまった。

 こうして幸せな夜は更けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ