第九章「ユリの帰還」part18
「あー、泣いだな」
「うー、だいぶ泣いじゃっだ。ディッジュどこだろ」
兄妹そろってすごい鼻声だ。
「わがらん。立つのめんどい」
「ざがじでよ」
「嫌だよ、もう寝だい」
ズズ、グス、グシュ……
落ち着いて冗談を言い合っていたと思ったら、何やら妙な音が聞こえてきた。なんなのかわからず困ってしまう。それはユリも同じだったらしい。二人で困惑の表情を浮かべて音のした方に視線を送るとユリの向こう、もう一つのベッドの掛け布団が小刻みに揺れていた。
まだ起きてたのか。
「あー、オリサ、泣いてくれてありがとうな」
「うん……ふだりども、あえでよがっだ」
号泣じゃねぇか。
ユリも笑顔を浮かべている。
「ねえ、三人で寝たら狭いかな?」
さすが兄妹だな。
「ちょうど同じこと提案しようと思ってた」
「ふふ、オリちゃん、おいで。一緒に寝よ?」
「い、いいの?」
「ああ、ちょっと狭いかもしれないけど」
俺たちの返事を聞くが早いか、オリサはボックスティッシュを手にこちらのベッドへと近づいてきた。
「真ん中に寝るといいよ」
「でも、トールの隣はリリちゃんが」
「いいの。うち、オリちゃんのこと大好きだから」
「ありがどう」
真ん中に寝転んでユリを抱きしめたオリサを、俺は背中から包んだ。
「これだとオリサは暑いかな」
「そのときは掛け布団をちょっとめくればいいっしょ。ね、オリちゃん?」
「ふだり、ども……んぐ、よがっだ、ね」
話、聞いてねぇ。
「俺達のために泣いてくれてありがとうな」
「これからも、家族としてよろしくね、オリちゃん」
「うん、ふだり、ども、だいずぎ、だよ」
「オリちゃん、お兄ちゃんの面倒を見てくれてありがとうね」
「うん。んぐ、よがっだね」
なかなか泣き止まないオリサに俺たちはつい笑ってしまった。
こうして幸せな夜は更けていった。