第九章「ユリの帰還」part15
「あぁ、疲れた」
「トールだらしないぞ!」
焚き火まで戻り、先程敷いたタオルに腰を下ろす。この体力バカめ。
「お前は疲れ知らずすぎだろ。どんな体力してんだよ」
「あたしは強いからね!でもきゅーけー」
「はい、お茶」
「ありがと!はぁぁ!生き返る!」
「あ、やっぱ疲れてたんだ」
「気のせい、気のせい」
そう言って勢いよく寝転がった。俺もそれに倣う。
「あ~、楽しかったぁ」
「喜んでもらえてよかった」
「トールは?楽しかった?」
「ああ、もちろん」
「それならよかった」
先程脱いだパーカーが転がっているのに気づいたのでそれをオリサにかけてやる。
「ありがと」
「焚き火はあるけど、体濡れてるし風吹いたら寒いだろうからな」
「うん。ちなみにだけどさぁ……」
「ん?」
「あたしが走ったり手をあげたりして大きく動くたびに目線がおっぱいに来てたんだけど、自分で気づいた?」
「うそっ!?え、いや、さすがに嘘だろ?」
「さて、ど〜でしょ〜」
「あの、無意識に見てたかも……しれません。ごめんなさい」
ああ、もうオリサのこと見られない。
夜空へと顔を向ける。綺麗な星空だ。遠くの景色を見つめて落ち着け、俺。
「天ちゃんほどじゃないけど、ユサユサしてるからねぇ。へへへ、Gカップは伊達じゃないでしょ?」
Gはオリサだったのか!
瞬間、俺の顔は自分でも信じられない速さでオリサの方を向いていた。
「ひゃっ!」
「あ」
「び、ビックリした!え、Gカップって言ったらすごい速さでこっち見たよね!?」
恥ずかしいなんてもんじゃない。
「ごめんなさい……」
あまりの羞恥に顔がマッハで赤くなっているのがわかる。両手で顔を覆い必死に隠した。
「トールって、本当におっぱい好きなんだ」
「そうです……本当にすみません……」
「耳、真っ赤だよ?」
オリサの指が俺の耳を突く。本当に恥ずかしい。
「別に怒ってないけどね〜。ね、パーカー着ない方がいい?」
「あの、冷えたらいけないから……着ようか」
「へへ、元気そうで良かったよ。あ〜、星が綺麗だねぇ」
オリサが普段の調子に戻そうとしてくれている。ありがたい。
「ああ、そうだな。広々としててよく見える」
「嬉しいことあったし、今日はぐっすり眠れるね」
「なあ、一つ確認したい」
「ん?」
「お前は……今も国に帰りたいか?」
俺の質問に少し困った目をしたが、即座に真剣な眼差しで俺を見据えた。
「ううん、絶対ヤダ!あたしはここが一番楽しいから」
「今のは本当らしいな」
「そんなに分かるものなの?さすがリリちゃんのお兄ちゃんだね」
「あいつほど観察眼に優れてるわけじゃないよ。ただ、オリサは嘘を吐くときの癖があるからな」
「ウソでしょ!?」
「お前な、嘘を吐くとき下唇を軽く噛むの。気づいてたか?」
「え、え、うーん、初めて知った」
「少し前に気づいた。あ、直さなくていいからな」
「えー、聞いちゃったら直したいよ」
「ふふ」
それにしてもきれいな夜空だ。月もきれいに輝いてる。




