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第九章「ユリの帰還」part7

「あー、腹いっぱい」

 

 バーベキューを堪能して一休み。ユリはルルを膝に乗せてタブレットに記録された写真を一緒に見ている。


「みんな楽しそうにしてるねぇ」

「記録が色々残っててよかったよ。ルルがタブレットを使い始めて、リーフも写真にハマったおかげだ。これは天ちゃんに初めて会った日かな」

「そうっすね。みなさんお花見に来てたんすよ。偶然の出会いでしたねぇ。ホントは手前からトールくんのお宅に行かなきゃダメだったんすけど」

「覚えてるか?山の観音様。天ちゃんはここに住んでるんだ」

「もちろん。懐かしいなぁ。天ちゃんはなんで一緒に住まないの?仲良さそうだし、一緒に暮らしたらいいじゃん」

「うーん、嬉しいお誘いっすけど、手前は気ままにフラフラしてるほうが性に合うんすよ。ちょっくら外国まで羽を伸ばしたりとかですね」


 こいつの場合、マジで羽を伸ばして出かけるもんな。


「天ちゃんはときどき外国の食べ物を土産に持ってきてくれるんだ。果物はかなりありがたい」

「喜んでもらえてよかったっす」

「このおじいさんは誰?」

「手前の上司っすね」

「天使の上司?」

「神様だよ。お前がいなくなった日に急に俺の前に現れて、オリサたちを召喚したんだ。この日は……ああ、思い出した。旅行から帰ったら神様がいたんだっけな」

「あれは忘れていいだろう。なかったことにしておけ」

「わたくしは矢が外れたことに多少のショックを受けておりました」

「外れてよかったっすよ。当たってたら世界が崩壊、全員お陀仏っすから」

「あたしはがんばりすぎちゃった……」

「気にすんなよ。結果的に家はもっと広くなったわけだし」

「え、何があったの?そういやうちの部屋ってそのままだったりすんの?」

「一か月くらいリーフが使ってたけど、その後はずっと使ってないな。出入りもしてないから埃っぽくなってるかも」

「帰ったらお掃除しなきゃね」

「ゆり子ちゃん、ベッドの大きさどうします?トールくんのお部屋はちょっと広くしてベッドも大きくしたんすよ。ゆり子ちゃんのお部屋もそうしましょうか?」

「んじゃお願いしようかな。あー、実家かぁ、楽しみだけどやっぱまだ帰ってきた実感わかないなぁ」

「お前は今すぐにでも帰りたいかもしれないけど、俺たちも今日海に来たばっかりだからもうちょっと我慢してくれ」

「うん、もちろん。さっきオリちゃんに聞いたけど、楽しみにしてたのにぜんぜん遊べてないんでしょ?せっかくだし、たくさん遊びなよ」

「ありがとう、リリちゃん!」

「リリちゃん?ゆり子さんのことですよね」

「うん、さっきオリちゃんと話してたときにもらったあだ名。百合ってお花があって、英語にするとリリィだからね」

「なら、わたしはリリィと呼ばせてもらおう」

「わたくしはリリィさんと」

「手前は変わらずゆり子ちゃんと」

「俺はユリと」

「ふふ、だろうね。十五年そうだし」


 案外ウケた。

 ビーチチェアに腰掛けて波の音を聞きながら歓談タイム。もともと時間に追われる生活をしていたわけじゃないけど、普段に輪をかけて気楽でいいや。


「みんな楽しそうでいいね。ん?お兄ちゃん、一応妹としてスルーできないんだけど、コレなに?」


 若干眉間にシワを寄せたユリがタブレットに映る写真を指差す。覗き込むと俺とルルが写った写真だった。これは確かラブホテルのプールで遊んだときのものだな。ユリが指差しているのはルル。ああ、わかった。説明が面倒だなぁ。


「俺も言いたいことはあるけど、俺の趣味で着せたってわけじゃないぞ」

「本当にぃ?」

「マジだよ」

「リリちゃんどうしたの?」

「わたしがどうかしたのか?」

「なにやらお怒りのご様子ですね」

「兄がツルペタ幼女に手を出したのかと頭が痛くなってたのよ」


 ツルペタ幼女とか言うなよ……。そいつむしろ婆ちゃんだから。あれ?更にマニアックになった?


「幼女とは言ってくれるな、まったく。さすがお前の妹だ」


 悪かったな。


「リリちゃん、それは違うよ!」

「ええ、ルルさんの名誉のためにも訂正いたします!」


 オリサとリーフが立ち上がり力強く宣言した。寺の入口に立つ仁王像のようになっている。なんだいったい。


「二人とも、なんか熱いっすねぇ」

「どうしたの?」

「わたしも何がなんだか」


 ルルが困った様子で新しいビール瓶に口を付けている。


「ルルちゃんの体は確かにツルッツルだよ!」

「ええ、首から下には一切の体毛が生えておりません!」

「ぶふぁ!!げほっげほっ!」

「あらま、ルルちゃん、大丈夫っすか?」

「は、鼻に入った。痛い!」

「あれ?ルルちゃんどうしたの?」

「それで、うちに訂正したいことって?」

「たしかにルルさんは首から下がツルツルの大変なめらかなお体をお持ちです。しかし!」

「ぺったんこじゃないよ!ちょっとだけ!ホントにちょっとだけど、おっぱい膨らんでるんだから!」

「そうなのです!『ツル』は間違いありませんが断じて『ペタ』ではございません!」

「友達としても家族としても、見逃せないよ!!」

「それに、赤ちゃんのようにお腹が出てるわけでもございません。つまり幼女でもないということです!おわかりいただけましたか!?」

「お前らなんなんだ!バカか!わざわざトールの前で大声で言うことじゃないだろうが!!」


 俺はさっきから頭を抱えたままルルを見られずにいる。なんつー話をしてるんだ。


「トール、忘れろ!」

「あたりめぇだろ……」

「わ、わたしは大人だぞ!」

「知ってるから」

「胸はあいつらが大きすぎるから相対的に小さく見えるのであってな!」

「知らねぇよ!」

「FだGだと大きすぎるのだ!天ちゃんに至ってはHときたものだ!」


 え、そんなにあるの?Gはリーフ?ってことは、オリサもFあるのか!あの細い身体で!

 顔を上げてリーフに視線を送ってしまった。呆れた顔でユリが俺を見ているのに気づいた。


「お兄ちゃん、見るなっての……」

「ふふふ」


 目が合ったリーフ様は余裕の表情だ。


「わ、わたしだって、ないわけではないのだ!たしかに身長に対して小さすぎるとは思うが……いや、故郷でも茶化されたことがあるがな、でも……ほら、見せてやる!いや、握れ!握ってみろ!」

「バカかお前は!ちょ、腕を離せ!オリサ!リーフ!止めさせろ!」

「握るほどの大きさはなかったような気がするのですが」

「ムキーっ!!」

「バカリーフ!酔ってんのか!?」


 足を踏ん張り必死に身体を仰け反らせてルルから距離を取ろうとしているのに、リーフの余計な一言でルルの手に更に力がこもった。


「いだだだだ!ルル!折れる、腕の骨折れる!いだああぁぁっ!」

「はい、ルっちゃん、どうどう。落ち着いて。気安く見せたり触らせるもんじゃないから」

「はぁはぁ、そ、そうか」

「見せるんならお金ぐらい取らなきゃダメだよ」

「おい、妹。お前のアドバイスもどうかしてんぞ」

「面白い家族っすよねぇ、うへへへ」


 天ちゃんは酔いが回ってきたのか顔を赤くしてケラケラ笑っている。

 まともなのは俺だけか!

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