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第九章「ユリの帰還」part4

「わたくしと天ちゃん様でお肉や草、失礼、お野菜を切って運びますのでオリサさんとゆり子さんはグリルを用意しておいていただけますか」

「わかったー!」

「ねえオリちゃん、リっちゃんさっき『草』って言ってなかった?」


 気を遣って声のトーンを落としているが同じ空間にいる以上それは無駄なことだ。


「ああ、これは失礼いたしました」

「え、この距離で聞こえんの!?」

「リーフちゃんは耳が良いっすから。ナイショ話はできないっすよ」


 厨房で食材を前に楽しそうにしている。俺とルルは力仕事。酒やらジュースやら炭の入った袋やらを外に持っていく役目だ。グリルを持ったオリサ達と歩き出す。


「ルっちゃん、重くない?ちょっと持ってあげようか?」

「ルルは心配するだけ無駄だぞ」

「ああ、結構。この程度、荷物のうちにも入らない」


 プラスチックのケースいっぱいにビールとワイン、ウイスキーの瓶を入れて歩いているが全くつらそうな様子はない。あれで何キロあるんだろう。見当もつかないな。ケースの方が心配になるような量だ。

 俺は炭の入った袋を肩に担いで、反対の手ではお茶のペットボトルが複数入った袋を持っている。ルルと一緒に物を運ぶとなると決まってちょっと頑張りすぎるきらいがあることに最近気づいた。


「ルルちゃんってすんごい力持ちなんだよ」

「そうなんだ!こんなちっこいのにギャップ萌えハンパないね!」

「ち、小さくない!お前たちが過剰に大きいのだ!」

「こいつ、村だと一番大きかったらしいぞ。大女なんて言われてたんだろ?」

「ああ、村の連中にリーフを見せてやりたいもんだ」

「みんな自分より大きいからビックリでしょ」

「まあな。もう慣れたが。ところでゆり子、人間の身でこれだけ頑張っている兄をもっと褒めてやったらどうだ?」

「おにーちゃんすごーい、がんばれー」

「感情ゼロの声援あんがとよ」


 俺の妹、こんなに飄々としたやつだったっけかなぁ?異世界の環境で随分と雰囲気の違う人間になったもんだな。

 疑問を抱きつつ隣を歩くユリを見ていたら頭の位置に違和感を抱いた。


「お前、前よりデカくなった?」

「たぶんね。身体測定とかやらないからわかんない」

「十五歳の頃は何センチだった?」

「高一でしょ。えーっと……六年前だしなぁ。150ちょい……んー、たしか155だったかな」

「あたしと同じだ」


 オリサと並んでも目の位置が全然違うな。


「ちょっと二人、背中合わせで立ってみろ」

「こう?」

「あー、子供の頃こんな感じの背比べやったね」

「オリサの頭の上、だいぶ空間があるな」

「オリサの頭にスマホを立ててみろ。……おおよそ10センチだろうか」

「ってことは、うち今は165センチくらいだね」

「なんとも巨漢だな」

「お前にとってはな。俺が170だからそんな変わらないな。六年でずいぶん伸びたもんだ」

「あっちで鍛えられたからかな。昼間は船に乗って魚とって、帰港して片付けと次の日の準備したらすぐお店開いてさ。毎日忙しかったからねぇ。ほら、成長期にスポーツやってると身長延びるとか言うじゃん。うち、それがピッタリ当てはまったんだと思う」

「なるほど。大変だったな」

「ま、動いてないと不安で死にそうだったし」


 俺は神様に状況を説明してもらって、オリサ達に出会ってかなり楽をさせてもらったけど、ユリは辛かったんだな。


「これからは気楽に生きようぜ。気のいい家族がいるし」

「よろしくね!」

「よく帰ってきてくれた。トールの嬉しそうな顔が見られてわたしも嬉しい」

「ふふ、ありがとうね、二人共。あとでリっちゃんと天ちゃんにもお礼言わなきゃ」

「それじゃ、さっさとバーベキューの準備するか」

「だね」


 いろいろ聞きたいことはあるけど、まずは楽しもう。それからゆっくり聞けばいい。俺たちには時間がたくさんあるんだから。

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