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第九章「ユリの帰還」part3

「ねぇ、あたしの紹介がまだなんだけど!」

「あ、悪い」

「オ、オリサちゃんすみませんね。どうぞ。手前はリーフちゃんのフトモモを枕にこのステキな経験を脳に刻んでますから」

「バカじゃねぇの?えっと、最後にこいつは魔法使いのオリサ」

「よろしくね!」


 立ち上がって手を上げ元気いっぱいに挨拶する。なんか楽しそうだな。


「うん、よろしくね、オっちゃん」

「おっちゃん!?おっちゃん……。このかわいいオリサちゃんが、おっちゃん……」


 膝から崩れ落ちて畳に顔面を擦りつけている。


「え!あー、えーっと……オリちゃん!」

「はい!」


 立ち上がって左手を高々と上げた。

 促音入りにすると『オっちゃん』になるのか。だったらもう『オリサちゃん』でいい気が。


「それで、お兄ちゃんはオリちゃんのどんなところが好きなの?」

「え、んー、そうだな。いつも俺のことを気にかけてくれる所かな」

「ほう」

「この世界になっちゃって最初は大丈夫だったけど、一か月経ったらストレスでヤバくなって。その時、オリサが一緒に泣いてくれたり手を握ってくれたりして。あ、もちろんルルもリーフも助けてくれたけどな」

「そうなんだ」

「ああ、俺が不安で大泣きしたときは抱きしめてくれて」

「優しいね」

「だろ」

「他には?」

「いつもおどけてるけど、本当は周りのことをよく見てくれてることとか。オリサっていつも冗談言ってるけど、本当は皆のこと大切に思ってくれてるんだよ。四人でこの旅行の話してたとき、天ちゃんも誘おうって最初に言ったのもオリサだったし。一緒にゲームしてると楽しいし」

「そうなんだ。ねえ、オリちゃんはお兄ちゃんのどんなところ好き?」

「優しいところ!あたしが失敗しても、優しく手を握って慰めてくれるいいヤツなんだよ!」

「そっかぁ。妹として鼻が高いよ」

「うん!周りを気にしすぎるところはあるけど、いつも助けてくれる……え、あれ?ちょっと待って!テーマ変わってるよね!?これってあたしの良いところ話すはずでしょ!?」

「んーん、ルっちゃん達には『良いところ』って聞いたけど、オリちゃんのは『好きなところ』を聞いたからこの話でOKなんだよ。お兄ちゃんアホだからぜんぜん気づかないんだもん」


 あ。


 どんどん顔が熱くなっているのがわかる。ふと見ればルルもリーフも天ちゃんもニヤニヤしている。顔から火が出るほど恥ずかしいってのはこういうことなのか。

 見ればオリサも同じように顔が真っ赤だ。


「もちろんわたしは気づいていたぞ」

「わたくし達のときは『良いところ』、オリサさんのときには『好きなところ』と質問を分けていましたね」

「ああもう、胸がキュンキュンしちゃうっすよぉ!」

「忘れてください、妹さん」

「無理やで、兄ちゃん」

「お願い」

「うちが『他には?』って聞いたらスラスラ次が出てきたよね」

「やめて」

「その後は自分からオリちゃんの好きなところ言ってたし」

「饒舌だったな」

「オリちゃんにも話を振ったらこれまたペラペラとお兄ちゃんのこと教えてくれるし」

「大変嬉しそうでしたね」

「はずかしいよぉ……」

「いやー、ごちそうさまだね」

「お腹パンパンっすよ」


 恥ずかしすぎる。最初からこの話を引き出すつもりだったのかな。妹が恐ろしいやつになって帰ってきてしまった。


「ゆ、夕飯食わないか?」

「う、うん!いいと思う!」

「しゃーない、そろそろ逃してあげよう。だいぶ元気になったから、うち作れるよ」

「いえ、ゆり子さんはどうぞ(くつろ)いでいてください」

「天気は落ち着いているな」

「それじゃ予定通りバーベキューっすね」

「いいねぇ。お酒ある?」

「ふふ、ゆり子さんもお飲みになるのですね。もちろんありますとも」

「楽しい宴になりそうだな。そこの二人がまったく喋らんが、なにかあったのか?」


 ルルがわざとらしく俺たちを顎で指す。くそ、覚えてろよ!


「妹がみんなと打ち解けてるのがお兄ちゃん嬉しくて」

「どーもー。ご飯食べながらいろいろ聞かせてもらおうかね」

「お前の話もいろいろ聞きたいけどな」

「そりゃそうか」

「楽しみだね」

「わたしもだ」

「ふふ、それでは厨房で食材を回収して外へ出ましょうか」

「いっきましょー!」


 なんだかこの後もいじられそうな嫌な予感しかしないけど、夕飯だ。腹減ってるし、たくさん食べよう。

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