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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第八章「ガールズ・オブ・サマー」
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「ガールズ・オブ・サマー」part18

「あー、きもちえぇぇ~」


 俺はいま部屋備え付けの温泉で身体を大きく伸ばしている。バルコニーに沿って設置されたこの小さめの温泉のお陰で嵐の海に飛び込んだ肉体的疲労、命がけの行動に出た精神的な疲労もだいぶ癒えている気がする。先程よりはだいぶ穏やかになっているが、それでもここから見える海はやや荒れている。人命救助のためとはいえよくもまぁあそこに飛び込んだもんだ。結局、海では遊べなかったけどいいか。明日もあさっても、時間はたくさんある。

 それよりも先程の女性は大丈夫だろうか。早く意識が戻るといいが、よしんば目が覚めても言葉がわからなくて苦労しそうだな。天ちゃんの力でどうにかできないかな。

 ……もう少しゆっくり浸かりたいけどダメだ。やっぱり気になって落ち着いていられない。入れそうなら隣の部屋に様子を見に行こう。


 ・・・・・・・・・・・・


「大丈夫だよ。入って」


 パーカーとホットパンツ姿のオリサに促され女子部屋へと足を踏み入れる。俺が風呂に入ってる間に着替えたようだ。


「トールさん、お怪我はありませんでしたか?すみません。こちらの方に付きっきりになってしまい、トールさんの様子を確認するのが遅くなりました」

「ありがとう、全然問題ないよ。状況は?」

「全身(あらた)めさせていただきましたが、多少の切り傷と打撲はあってもその他、骨折などの怪我はなさそうです」

「今は衰弱して寝てるだけっすね」

「そうか、とりあえず良かった」


 ホテルの浴衣に身を包み和室の布団に寝かされた異世界の女性に近づいてみると、彼女は静かに寝息を立てていた。茶色いウェーブのかかったセミロングヘアーと浅黒い肌。顔立ちはこの世界のアジア人が近いだろうか。肌の色はともかく日本人と言っても違和感は全くない、どことなく親近感のある顔立ちだ。歳は俺より少し上くらいかな。リーフとかルルの例があるから実は百歳なんて可能性もあるけど。

 近くであれこれ話して眠りを妨げてはいけない。俺たちは障子を閉め和室から退散した。


 ・・・・・・・・・・・・


 とりあえず隣の部屋に移動し、テーブルに人数分のお茶を用意して一息つく。先程の部屋は眠る女性ひとりになってしまったが、リーフの耳なら彼女が起き次第気付ける。


「彼女は何者なんだろうな。人間かな?」

「異世界からの来訪者、それもわたくし達と異なり偶然の、恐らくは事故でこちらへ来てしまった方、ですね。よもや再び経験しようとは……」


 そうか、リーフは昔自分の世界で地球人の転移に遭遇したことがあるんだった。


「種族はまだよくわからん。身長や顔立ちから人間族、とりわけトールやオリサに近い人種のように見えるが、わたしやリーフも身体の構造自体は人間族と大差ないからな」

「そうっすね。とりあえず目を覚ましたらなんとかコミュニケーションが取れないか模索しましょう」

「リーフちゃんも天ちゃんもお疲れ様」

「先程天ちゃん様が湯浴みされていたお陰ですぐさま身体を温めることができました」

「見ましたか!手前の超ファインプレー!」

「偶然だよな?」

「ああ、それから衣服を脱がせてわかりましたがあの肌は日焼けによるもののようです」

「へー、そうなんだ」

「素肌はトールさんやオリサさんに近い色合いでした」


 そうなのか。ますます日本人っぽいな。俺としては親近感が湧いていいけど。

 

「二人は最近よく気絶した者を介抱しているな」

「確かに」


 一人目は俺。二人目は彼女。


「とりあえず、なんとか助けられてよかったよ。リーフ、天ちゃん、ありがとう」

「何言ってんすか」

「まず誰よりも早く行動したトールさんが彼女を救ったのです」

「トールも無事で良かったよ」

「あの海に飛び込んだときは流石に肝を冷やしたが、無事でよかった」


 なんだか過剰に褒められていて居心地が悪い。身体が勝手に動いたから褒められるのもなんか違うんだよなぁ。


「本当に無茶したね」

「自分でもそう思う。でも、無茶だったかもしれないけど、無理じゃないとも思ったから」

「お前らしいな。だが、もうやらないでくれよ」


 ルルが呆れを含んだ笑顔を見せる。


「俺が飛び込んだ後はリーフがどうにかしてくれると思ってたし」

「他力本願か、まったく」

「ふふふ、期待にお応えできて良かったです」

「もうちょっとして天気が落ち着いたらバーベキューやろうか。天気がまだ荒れてたらホテルの厨房で何か作る感じでどう?」

「それがいいっすね」


 魚は食べられそうにないけど、とりあえず今日はゆっくり休むとしよう。

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