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逆異世界転移物語 〜エルフ・ドワーフ・魔法使いと地球でゆるくぬるく暮らす物語〜  作者: シンドー・ケンイチ
第一章 「『常盤色のオリサ』と黒龍」
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「『常盤色のオリサ』と黒龍」part10

 地球人が俺だけという孤独な世界に迷い込み四日目の朝。俺とオリサは畑を散歩している。俺たちの散歩は山から降りてきた動物の足跡がないかなどの見回りが目的だ。まだ冬だし、農業関連でやることは無いに等しい。これが暖かくなってきたらもっと仕事が多いのだろう。


 昨日の朝の散歩でジャガイモの(うね)に芽が出ているのを確認した。あのときのオリサの喜びようはすごかった。『農業大臣』ということでずいぶんと張り切っていたのだろう。

 俺たちが畑の見回りをしている間にルルとリーフは洗濯や朝食作りをしてくれている。女性物の衣類ばかりなので俺が干していいものかと困っていたらルルが洗濯を、料理は修行中でたいしたものが作れないと、これまた頭を抱えていたらリーフが食事の準備をそれぞれ引き受けてくれた。ありがたいことだ。


 昨日と一昨日の二日に分けてホームセンターや農業高校を何往復もしたわけだが、さすがに毎回四人で移動は効率が悪いため、途中から近所の軽トラックを拝借し俺とオリサコンビでの行動になった。オリサからは軽トラの乗り心地に文句を言われたが、乗用車に比べたら酷というものだ。拝借した軽トラはマニュアル車だったので、俺はますます緊張して運転する羽目になった。

 

 このとき俺は密かに愕然としていた。ホームセンターや農業高校、移動の途中で本当に一切の人に遭遇しなかったことに。

 上手く表現できないが、人の声や車の走る音など『町の脈打つ音』とでも言えばいいだろうか。それが何も聞こえず、まさに町が死んでいるかのようだった。わかったつもりでいたが、改めて誰もいないということを実感させられた。


 朝食を取って一休みしたら、みんなで勉強タイム。

 受験が終わったというのに、こんなに本を読まねばならないとは。ルルの提案で本の内容を理解したら自分の読んだ本の内容を説明して情報共有の時間もある徹底ぶり。

 出会った当初から問題なく会話ができたのだからわかりそうなものだったが、驚いたことに全員日本語の読み書きは問題なかった。もともと彼女たちの世界でも日本語が使われていたのかというと当然ながらそんなことはなく、コミュニケーションに困らないようにと神様が気を利かせて『それはそれはすんげーゴッドパワー』で日本語を身に付けさせてくれたのだという。何もしていないのに第二言語習得とは羨ましい話だ。

 ちなみに『それはそれはすんげーゴッドパワー』なる極めて胡散臭い単語はオリサから聞いたのだが、どうにも半信半疑だったので他の二人にも確認したら彼女たちも同じことを言われたと言っていた。

 オリサには疑ってごめんと謝った。心のなかで。

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