「ガールズ・オブ・サマー」part12
〈水着の買い物のときに、リーフちゃんに運転を教えたんすよ〉
「実は自動給餌器はもっと前に完成していたのだが、リーフ達が運転を練習する時間を稼ぐため、お前には時間がかかると言っていたんだ」
〈ルルさんのお陰で練習時間を多く取ることができて大変助かりました〉
「わたしとしても起動実験が長くできたからいい機会だった」
〈リーフちゃんってスポンジみたいに吸収が速いから、すぐに運転できるようになったんすよ。トールくんが運転してるのを見てた賜物っすね。あ、トールくん、高速も練習で走りましたから安心してくださいね。料金所のバーも外しちゃいましたからスイスイっすよ~〉
「リーフちゃん、あの赤い車でビュンビュン飛ばすからびっくりしちゃった」
〈わたくしの愛馬は凶暴ですから〉
「すっかり気に入ったようだな。フェラーリという車らしい。トール、知っているか?」
「超絶たっかい車」
〈フェラーリはみんなそうっすよ。最初はオープンカーにしようと思ったんすけど、暑いっすからね。リーフちゃんに似合いそうだなっと思ったんすけど諦めました〉
「車のことはよくわからんわ」
〈自在に運転ができるようになりましたので、気ままにこの世界を見て回りたいと思うようになりました〉
「いいね、リーフちゃんいつもあたし達のお世話してくれてるし天ちゃんと旅行してきなよ」
〈ありがとうございます!〉
〈楽しみっすね。まずはこの旅行を楽しみましょう〉
なんだかすごいことになってるぞ。
すぐ隣を並走する真っ赤なスポーツカーと電話をつないでいるが、俺はもう頭がだいぶ混乱している。今は他に車のない高速道路を並んで猛スピードで疾走中。本来なら下の道で一時間半は掛かりそうな海までの道だが、道を阻む者の一切居ない旅程はあっという間に進んでいく。
「そういやさ、オリサもリーフと一緒に出かけてたけど練習したの?」
「ちょっとだけね。でも、天ちゃんに止められちゃた」
「止められた?」
何があった。
「ちょっと残念だなぁ」
「まあ、仕方ないだろう。こういうのは安全第一と言うのだろう?」
〈そっすねぇ。すんませんが、手前はオリサちゃんの運転を推奨できないっす〉
「と言うと?」
「お前はよくオリサとゲームをしているだろう?レースゲームというやつだ」
あー、わかった。
「オリサ、ゲームならいくら壁に激突しても問題ないけど、現実じゃそうはいかないから諦めろ」
「なんであたしが壁に突っ込んだのわかったのさ!」
〈わたくしとしても、オリサさんの身の安全を想えば運転は諦めていただきたいのですが……」
「人には向き不向きがあるんだから仕方ない。わたしだって、座高の問題で運転は難しいしな」
和気あいあいとした雰囲気のまま二台の車は高速を走り抜けた。




