「ガールズ・オブ・サマー」part11
「あれ?天ちゃんとリーフはどこよ?」
「車を取りに行ってるよ」
「買い物に行くとき使ったのとは別の車で出かけるそうだ」
気分によって車を変えるのか。天ちゃんは車好きなのかねぇ。俺は乗れればなんでもいいからよくわからん。
荷物は全て積み終わり準備完了なのだが、いつの間にやら天ちゃんとリーフが消えていたので戸惑ってしまった。
「すぐに来るからちょっと待っててって、さっきメッセージ来てたよ」
「あ、本当だ。お前らマメに連絡してるな」
スマホのメッセージアプリを見ればひっきりなしに連絡を取り合っている。天ちゃんも含めたグループでは特にオリサと天ちゃんが盛り上げ役だ。俺はたまに軽く反応するだけで会話に参加することは稀だが。俺からも連絡しておくか。
『暑いから家に入ってていい?』
日陰にいるけどあまり長時間は待ちたくないなぁ。この場か車の中か家の中か、どうするか悩んでいたらすぐさま天ちゃんから返事が来た。
『いま向かってますからもうちょいお待ちを!』
メッセージと共にキャラクターが走っているスタンプが表示される。まさか運転中にメッセージ書いてねぇよな。同行しているリーフは何も反応ないし。何をしてるんだろうかねぇ。
「ってか、車を取りに行くのリーフも一緒に行く必要ないよな」
「あるんだよねぇ」
「リーフが肝だ」
「は?何か聞いてるの?」
「サプラ~イズ」
「む、来たな」
おどけるオリサをよそに、ルルが反応する。なんだか甲高いエンジン音が聞こえる。どんどん近づいてくる。すごい速さだ。天ちゃんのサプライズ、なんとなく読めてきた。
いやいやいや、天ちゃんの車、普通の乗用車じゃないんかい!
「キター!」
「相変わらずすごい音だな」
「お前ら知ってたのか、は、えっ!?」
なめらかな曲線を描く赤いボディの中には見知った二人が座っているのだが……。
「トール、サプラ~イズ!」
「お待たせいたしました。驚いていただけましたか?」
「リーフ、驚け。成功のようだ」
「お待たせっす!サプラ~イズ!」
「リーフっ!?」
左ハンドルの運転席から降りてきたのはサングラスを掛けたリーフだった。
「リーフちゃん、例のやつ」
天ちゃんの指示を受け、リーフが腰に手を当てサングラスを外してテンプルを咥えた。誘惑するような表情で俺を見つめる。すっげぇ!モデルみたい。
「私の『跳ね馬』は凶暴よ。付いてこられる?」
キャラが違う!素材がいいから絵になるな。
「リーフ、目線を頼む」
ルルはいつの間にかリーフの一眼レフを構えている。頼まれたのか?オリサもスマホで撮影を始めてるし、リーフも満更でもなさそうにポーズを取ってるし、もう何が起きているやら。
「トールさん、いかがですか?天ちゃん様にポージングを習いました」
「あの、すごい、きれいって言うか、かっこいいって言うか……本当に似合ってるよ」
「ふふ、ありがとうございます」
「リーフちゃん、次あたしの方見て」
「はい」
「いやー、驚いてくれてよかったっすよ」
「スポーツカーも驚いたけどリーフが運転してたの仰天だった」
だから天ちゃんからしか返事がなかったのか。
「二弾重ねのサプライズ、大成功だ!」
「やりました!」
「イエ~イ!」
「やったっすね!」
四人でハイタッチをして喜んでいる。いやー、驚いた。
「大変お待たせいたしました。それでは参りましょう」
「リーフが運転するのか。安全運転で頑張ってな」
「はい!」
「じゃ、行こっか!」