「ガールズ・オブ・サマー」part10
そして二週間。
「ルルちゃんありがとう!」
「ルルさんのお陰ですね」
「よく頑張ってくれたよ」
「いや、皆がわたしを支えてくれたからだ」
「よかったっすねぇ」
小型で長く使える新型自動給餌器が無事に完成し、ここ数日は試運転の日々。故障もなく挙動にも問題がないということをルルとリーフが念入りに確認し、いよいよ短期間なら家を空けても問題ないという結論に至った。もしもの場合に備えて、放牧場への扉も開けたまま固定することになっている。草の茂った放牧場には浅い小川も流れているので給餌器が故障してもすぐに動物たちが飢えることはない。
更に、排泄は放牧場の決められた場所でするようにとリーフが動物たちに教え込んだらしい。教えたと言うか『従うか、さもなくば飢えるか』といった感じで圧をかけたようなのだが。昨夜、酔った勢いで本人がこぼしていた。やんわり怖いんだよなぁ、リーフ。
野菜の水撒きもタイマー機能付きスプリンクラーのお陰で心配いらない。コストなんて考えずに設備を整えられるのはいいものだ。
「それじゃ、明日からいよいよ旅行だな」
「やったー!」
「荷物の準備は済んでいる」
「あ、あたしまだだ!」
「仕方がない、手伝ってやろう」
そう言いながらなんとも嬉しそうだ。
「わたくしは明日の夕食の用意をしておきます。明日はバーベキューですよ!……あら?みなさん表情が変わりませんね」
「バーベキューうまいけど、しょっちゅうやってるからな」
「リーフちゃん、お手伝いするっすよ」
「ありがとうございます」
「トール、行く途中で酒屋にも寄ってくれ!夜通し飲んでやる!」
「ルルちゃん身体に悪いよ?」
「ま、たまにはいいんじゃないか?ルルのおかげで旅行できるようなもんだし、せっかくだからな。荷物もたくさん乗せられるし」
俺の車と天ちゃんの車の二台体勢なので荷物を置くスペースには余裕がある。
「どーしよっかなー。男の子モードと女の子モードのどっちで遊ぶかまだ悩んでるっす」
性転換が自由自在。恐るべし天使。
ルルが苦笑いを浮かべている。
「急に男になられても困るので、そのままか女で頼めないか?」
「かしこまり!んじゃ、トールくんを悩殺しちゃうっすよ!」
「やめろ。それじゃ明日の朝、動物の世話をしたらすぐ出かけようか。みんな今日は早めに寝ような。旅の中でトラブルとか起きず、無事に帰れることを祈りながらさ」
「でもさ、ちょっとぐらいビックリする出来事があっても面白いよねぇ」
「オリサ、余計なこと言うな。もし、地球に俺一人取り残される以上の驚きがあれば、何でも言うこと聞いてやる」
「別にお願いなんてないしなぁ」
「旅の安全を神様に祈りましょう」
「わたしが思うに、あの神様に祈りを捧げたら余計なことをするぞ」
「わっかるぅ~」
「お前の上司の話なんだよ……」
呆れを隠す気も起きない。