「ガールズ・オブ・サマー」part4
暑い……。
熱い……。
なんだこれ……。
身体が熱い。
なぜだか周りが騒がしい。
「オリ、サ……」
なぜだか口から仲間の名前が溢れる。
「トール!大丈夫!?しっかりして」
声が聞こえる。壁一枚隔てたような不鮮明な声が。
「オリサ……」
何も見えない。目は開けているはずなのだが。
とにかく身体が溶けそうに熱い。五感が全てそれに封じられてしまったようだ。船に揺られているかのような感覚で自分が仰向けかうつ伏せかもわからない。
「ここだよ!あたしいるよ!」
「ご、めん……」
「やだよ!やめてよ!」
「オリサちゃん、とにかく話し続けて!リーフちゃんとルルちゃんはシャワーで水をかけてください!」
「足下!滑らないよう気をつけてください!」
「トール!死ぬな!」
雨が降ってきた。強い雨が。身体が冷やされ心地いい。
「トール!あの、えっと、ご、ご飯なに食べたい!?あたしがんばるから!ね!」
「……」
「オリサちゃん!呼びかけて!」
「トール!お願いだから返事して!」
そうは言われたって口腔を動かすのすら一仕事なんだ。身体が言うことを聞かない。
「あ、うぁ、あ……」
やっと絞り出しても咽頭から意味のない音しか出ない。
「そうだ、昨日のお湯が水になっているはずだ!」
「トール!あたし、あの、片手で卵割れるようになったんだよ!見てよ、ね!」
「服は着たままで構いません、顔以外を水につけましょう!」
全身が心地よさに包まれる。
「オリサさん、冷蔵庫から冷えたスポーツドリンクを持ってきて飲ませてあげてください!塩もお願いします!」
「わかった!」
「手前は病院に行って点滴取ってきます!すぐ戻りますから!」
「お願いします!」
「みん、な……ごめん」
「そんな言葉、聞きたくありません!お気を確かに!」
なんだか眠くなってきた。
「トール、寝るな!おい、トール!」
・・・・・・・・・・・・
「大丈夫かな……」
「あとはトールの体力を信じるしかない」
「じきに目を覚まします」
「なんでそんなにハッキリわかるの?」
「そうでないと困るのです」
「経験からの自信かと思ったが……まぁ信じよう」
「大丈夫っすよ。もっとひどい状態から治ってる人を見たことあります。脈も呼吸も安定しましたし、トールくん若いからすぐ起きますって」
「トール、よく眠ってる」
俺の手に誰かの手が触れる。俺は自然と握り返していた。
「トール!目が覚めた?」
重い瞼を開けばそこにぼんやり誰かが見えた。俺の顔を覗き込む黒髪の少女。ああ、そうか。帰ってきたんだ。
「ユリ……おか、えり」
「え?」
「げんき、か?」
「あの、えっと、うん」
ダメだ、また眠気が。目も開けていられない。
「会い、たか、た……」
「トール……」
妹が俺の手をしっかりと握りしめてきた。