「ガールズ・オブ・サマー」part3
「はい、みんなおはよう」
「おはようございます」
「ぉーる、おぁよぉぉ……」
「お……よう」
リビングなう。
リーフは起きてるけど、オリサとルルは明らかにまだ寝てる。目が開いてないし。三人とも寝巻きのままだし。
「お前らメシ食えんの?」
「たぇうよぉ」
「なめ……ろう」
「そりゃつまみだ」
どんだけなめろうに執念燃やしてんだよ。
「結局、何時まで会議してたの?」
俺は一時ごろ先に寝てしまった。普段通りに起きたから若干寝不足気味だ。
その時点で三人ともまだまだ楽しそうにやりたいことを挙げ続けていた。それぞれスマホやタブレットで魚の種類を確認したり魚料理を調べたり、海の遊びはどんなものがあるか検索したり、楽しそうなのはいいんだがここまでとは思いもしなかった。
「お恥ずかしい話ですが、五時頃までです」
「さっきじゃん!いま六時だぞ!」
「大変盛り上がりました」
「そうみたいね」
「外から明かりが差し込んできたため、慌ててベッドに潜り込んだ次第です」
ってことは、三人とも仮眠程度にしか寝てないってことじゃん。そんな状態で炎天下の作業なんてさせられないっての。
「でもリーフはさすがだね」
「はい?」
「オリサとルルはまだ寝てるけど、君は元気に料理してるから」
「ふふ、ありがとうございます。あら?」
「ん?」
リーフが困った様子で固まってしまった。視線の先を見るとフライパンの中にはこんがり焼けた卵の殻。肝心の中身はといえば牛乳と一緒にグラスの中に……お前も寝ぼけてんじゃねぇか!
「三人とも寝ろ!」
「い、いえ、申し訳ございません!ちょっぴりボンヤリしていただけなのです」
「おやぅみぃ……」
「お……み」
慌てるリーフを尻目にオリサとルルがテーブルに突っ伏した。いや、ここで寝るなよ。
「はぁ、リーフはオリサを頼む。俺はルルを運ぶから。三人とも午前は寝てなさい」
「申し訳ございません。実はまだ少し眠くて。卵も無駄にしてしまいました」
「おやつにパンケーキでも作ろう。お、ルル軽いな。持ちやすい」
「鞄のような評価ですね。わたくしは軽い仮眠程度で問題なく動けますので三十分程度休ませていただきます。その後、動物達のお世話だけでもしましょう」
「あー、あいつらは飯用意してやらなきゃダメだもんな。待たせちゃ悪いし、俺が先に行ってくるよ」
「人間族がお一人での作業となると負担が大きいでしょうから、ご無理はなさらないでくださいね。水筒を忘れないでください。少しだけ休んで追いかけます」
「気にするなって」
オリサとルルは言わずもがな、リーフも横になってカーテンを閉めたらすぐに寝てしまった。キッチンの片付けは、うーん、面倒だからあとでいいや。俺は余っていたパンの耳と牛乳を少し摘み、水筒に水を入れた。外に出てみれば今日も変わらず日差しが強い。家を出て二十歩と歩かないうちに汗が垂れてきた。
こんな暑さの中で寝不足の三人を無理して働かせるわけにもいかないし、午前は俺が家畜の世話を頑張るとしよう。流石に一人で全部片付けるのはキツいから、動物の食糧と水だけ。後は三人が起きてから掃除やら健康チェックやらすればいいだろう。昨日話し合って日向での作業は夕方ということになったし。
昼間の作業について、俺とオリサはかなり辛いのだがリーフとルルは『まあ暑いけど辛いと言うほどではない』といった塩梅だった。なので、だれも作業時間の変更という策を思いついていなかったのだ。オリサには天才扱いされてしまったが、むしろ気づくのが遅すぎると思うなぁ。
この辺りが農作業と畜産経験がない故の浅はかさ。ゆっくり改善していきたいところだな。
って、厩舎の前まで来て気づいた。水筒忘れた。ま、大丈夫か。冷蔵庫に水あるし、さっさと終わらせて戻ればいいだろう。
「よーし、みんなおはよう。いま餌やるからなー」
俺が建物に入った直後からメーメーモーモーヒヒーンブルルと多種多様な鳴き声が聞こえてくる。まるで家畜のサラダボウルだ。……サラダボウル?食肉になる家畜なのに?
アホなこと言わずさっさと手を動かすか。