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短編6「飲んでも飲まれるな」part3

「くぅぅ、美味い!やはりわたしはこういった料理の方が合うようだ。リーフ、感謝する」

「ふふ、どういたしまして。喜んでいただけて光栄です」


 今日の夕飯はトムヤムクンにヤムウンセンなる春雨料理。それとひき肉を炒めたラープという料理。辛いものが苦手なオリサのためにカーオマンガイという蒸した鶏肉乗せごはんもある。俺はラープと、この蒸し鶏ごはんが気に入った。鶏のスープでご飯を炊くのだとか。前はパサパサしていると思った細長い米もいいもんだな。


「あたしよりトールの方がコレ気に入ったね」

「すげー美味い」

「もっと食べていいよ」

「良いのか?オリサ足りないだろ?」

「あたしはルルちゃんのお漬物たくさん食べたいから」

「こっちが浅漬け、そっちは古漬けっす。古漬けはちょっとしょっぱいかもしれません」

「どちらも酒のつまみに良かったぞ」

「んんん!ルルちゃん、天ちゃん、これ美味しいよ!」

「良かった。わたしは天ちゃんの言う通りに野菜を洗って入れただけだがな」


 和気藹々、久しぶりの全員揃った食卓だ。


「それでも新しいことに挑戦するのは素敵なことだと思います。ふむ、程よく漬けられていて美味しゅうございます」

「え、リーフがきゅうり食ってる!」

「ホントだ!」

「これは驚いた」

「リーフちゃん、普段とんでもねぇ食生活だったんすね……」

「せっかくルルさんが作ってくださったのならば食べねばエルフが廃るというものです。ふふふ」


 どちらかというと肉を食ってる方が『エルフが廃る』じゃないかなぁ。まぁ珍しく美味そうに野菜を食ってるし止めないけどさ。


 ・・・・・・・・・・・・


「あー、美味かった」


 皿の料理はほぼ腹に収まり食後の歓談タイム。


「みんなでごはん食べるのすっごく久しぶりな気分だった。やっぱりみんな一緒がいいね」

「ですね」

「ああ」

「さてと、そろそろ良いっすかね。電話じゃ言ってませんでしたけど、実は皆さんにプレゼントがあるんすよ」

「オリサが特に喜ぶぞ」

「え、なになに?」

「オリサさん向けなら甘いものでしょうか」

「お料理の味付けにも優秀な子っすから、リーフちゃんにも喜んで貰えると思うっす。はい、こちら」


 天ちゃんがテーブルに大きな瓶詰めを置いた。中は琥珀色の液体で満たされている。


「はちみつ!?」


 オリサが常盤色の目を輝かせる。嬉しそうだな。


「ええ、畑の近くに養蜂箱を設置しました。たくさん置きましたから、この家ははちみつ食べ放題っすよ」

「天ちゃんありがとう!」

「ふふ、良かったですね。確かに、甘味だけでなく使い道は多いですね。天ちゃん様、ありがとうございます」

「天ちゃんありがとうな」

「いえいえ、日本中に何か所か養蜂箱を設置してますから、時々納品しますよ。花によってはちみつの味って結構変わるんすよ」

「あ、そうなんだ。知らんかった」

「蜂は巣や幼虫も美味しいですよ」

「え、マジで!?」

「あれ?あたしも食べるよ」

「わたしもだ」

「この世界の人は蜜しか食べないの?」

「俺は蜜だけだな」

「あまりメジャーじゃないっすけど、日本でも食べられてましたよ。貴重なタンパク質っすから」

「へー、知らんかった」


 昆虫食ってやつか……。最近ブームとかテレビで言ってたけど見向きもしなかったな。でもリーフだけじゃなくてオリサも食べるなら試してみようかな。


「巣だってデパートのはちみつ屋さんで売ってたりしたんすから」

「え、マジ?」

「まぁ男子高校生がデパ地下行かないっすよねぇ。そのうち百貨店とか行ってみると良いっすよ。それからですねぇ、みなさんが帰られる前にデザートも作っておきました。はい、こちら」


 瓶詰めに続いて天ちゃんがテーブルに並べたタッパーには黄色い物体が入っているようだ。


「オリサちゃん、開けてくださいな」

「ありがとう。あ、いい匂いだね」

「こちらは蒸しパンですか」

「ああ、わたしも手伝ったのだぞ」

「ルルも勉強してたわけだ」


 タッパーの蓋を外せばそこにははちみつを使っているらしい、黄色い蒸しパンが並んでいた。ほんのりとはちみつの香りが漂ってくる。


「さっそくいただき!」

「俺にもくれよ」

「ふふ、どうぞ」


 本当に、この生活は幸せなもんだなぁ。

 キッチンに広がる優しいはちみつの香りを感じ、家族を見つめてそう思った。


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